新派「日本橋」は劇場に花道、喜多村緑郎&河合雪之丞「新作以上に燃えてます」

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初春花形新派公演「日本橋」が、来年2019年1月2日から25日まで東京・三越劇場で上演される。公演に先がけ、昨日11月19日に本作の取材会が東京都内で行われた。

初春花形新派公演「日本橋」取材会より。

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初春花形新派公演「日本橋」チラシ

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「日本橋」は泉鏡花が1914年(大正3年)に小説として発表し、翌15年に自ら戯曲化した作品。劇団新派での初演には、初代喜多村緑郎、伊井蓉峰、花柳章太郎らが出演し、その後、たびたび上演が重ねられてきた。三越劇場では、99年に日本橋架橋88周年記念、11年には架橋100周年記念として上演。また来年19年には泉鏡花没後80年という節目を迎える。

本作では医学士・葛木晋三を巡る日本橋の2人の名妓・稲葉家お孝と瀧の家清葉、それを取り巻く人々の人間模様が、鏡花の美しいセリフ回しでつづられる。齋藤雅文が演出を手がける今回の上演版には、11年版で葛木役を演じ、再び同役を勤める喜多村緑郎、お孝役を初役で勤める河合雪之丞が出演するほか、お孝に異常な思いを寄せる五十嵐伝吾役を田口守、“女方の出世役”と言われるお千世役を河合宥季、清葉役を高橋惠子、笠原巡査役を勝野洋が担当する。

演出の齋藤雅文。

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取材会には緑郎、雪之丞、宥季、田口、勝野、高橋、演出の齋藤が登壇。齋藤は「日本橋」について「泉鏡花の大作で、新派にとっても大切な作品。ロマンチックで、神話のような感じさえする物語です。いつの時代にも通用する深い作品だと思います」と分析し、「歌舞伎以外で100年近く前の作品を商業演劇として上演できるのは幸せ。これからも続けていかなければいけないと思っています」と決意を口にする。さらに「ここまで美しいセリフの日本の現代戯曲をほかに知りません。これをさらに磨き上げて美しい物語にしたい」と意気込み、「橋の話なので『橋を作るか!』とスタッフ同士で話していまして、三越劇場の真ん中に花道を作る予定です」と舞台美術のプランを語った。

左から河合雪之丞、喜多村緑郎。

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「8年ぶりに『日本橋』に出演します」と口火を切った緑郎は、「当時はまだ歌舞伎俳優で、市川段治郎でしたので、新派俳優になって初めての『日本橋』です」と感慨深げな様子。「来年、新派131年目のスタートに、『これぞ新派!』と言われる『日本橋』を上演できることは本当にうれしい。喜多村緑郎として初めて葛木晋三に挑ませていただけるので、原点に立ち返り、しっかり取り組んでいきたいです。僕も雪之丞も新作以上に燃えております」と言葉に力を込めた。

続けて雪之丞は「新派に入団して初めての古典演目で、お孝を演じさせていただけるのは本当にありがたい。『新派って素晴らしいな』と思ったきっかけが、87年の新橋演舞場で坂東玉三郎さんの『日本橋』を客席から拝見したときで、『こんなに素晴らしい作品を観られて幸せだな』と心から思いました。お孝のセリフをお風呂場で口ずさむくらい、『日本橋』というお芝居に思い入れがあります。(お孝は)いずれは挑戦してみたいお役で、今回念願が叶ったので、今までにない気合いで挑みたいです」と心情を吐露した。

田口守

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河合宥季

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「五十嵐伝吾は2度目です」と話す田口は本作について「長く上演され続けていて、大先輩方が築き上げてきた作品ですので、それを壊さないようにしたい。それにも増して齋藤先生が『美しい物語にしたい』と言われたので、気が引けているんですが(笑)。美しくなるようにがんばります!」と会場の笑いを誘う。一方、「大役のお千世を勤めさせていただきます」と緊張気味の宥季は「初春からこのような大役ができますこと、誠にうれしく、身の引き締まる思いでいっぱいでございます。また、師匠(雪之丞)と一緒に女形として勤めさせていただけることも大変うれしく思っております。未熟者ではございますが、一生懸命勤めさせていただきたいと思います」と決意を表明した。

高橋惠子

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勝野洋

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清葉役として3度目の出演となる高橋は「私自身大好きな作品で、最初に演出を受けた戌井市郎先生が、作品について稽古場でお話されたことを思い出します。この作品には日本語の美しさ、日本人ならではのものがふんだんに織り込まれています」と回想し、自身が演じる清葉については「難しい役です。今まで2度演じさせていただいても、“できた”というところまでいっておりません」とコメント。また過去にも「日本橋」で共演している緑郎について「葛木さんというとお顔が思い浮かぶ方だったので、またご一緒できることがうれしい」と緑郎に視線を送り、「今までにない『日本橋』ができあがるんじゃないかと思っております。全身全霊をかけて挑みたいです」と意気込んだ。

続いて勝野は自身が演じる笠原巡査について「笠原信八郎というぶっきらぼうな男で、私とは全然違うなあと(笑)」と紹介して会場を笑いで包み、「(取材会で)いろいろお話を聞いていて、『すごいところに来たな』と思っております。齋藤先生の『美しいお話』という言葉を受けて、自分に合うのかなと一瞬不安に思ったりしました。今回もなぜ呼ばれたのか、自分ではわからないんですが(笑)、引き寄せていただいてありがとうございます」と思いを語った。

記者から「現代の若者が本作を観たとき、どのように受け止めると思うか?」と問われた齋藤は「『日本橋』は、現実にはいないくらい、ものすごくピュアな魂の持ち主ばかりが登場します。五十嵐伝吾も笠原信八郎も無骨な人ではありますが、純粋な魂の持ち主。そういう人たちが橋の上で出会って別れて、転落したり成功したり……。最後は狂気に陥る人、殺人を犯してしまう人、それを背負って生き残る人と、さまざまな人生のバリエーションを見せてくれます。若い人が観てもおもしろい“大人の童話”のような受け取り方をしてもらえるのではないかなと」と作品の魅力を伝え、取材会は締めくくられた。

本作の前売りチケットは11月30日10:00に販売スタート。なお三越劇場では12月1日に販売開始される。

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初春花形新派公演「日本橋」

2019年1月2日(水)~25日(金)
東京都 三越劇場

原作:泉鏡花
演出:齋藤雅文

キャスト

葛木晋三:喜多村緑郎
稲葉家お孝:河合雪之丞

お千世:河合宥季
五十嵐伝吾:田口守

笠原巡査:勝野洋
瀧の家清葉:高橋惠子
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