文化功労者は、文部科学省が決定する、文化の向上発達に功績を残した人に送られる称号。仁左衛門は歌舞伎での功績を認められ、このたびの選出となった。選出に際し、取材に応じた仁左衛門は「栄誉に浴しまして、身の引き締まる思いでございます」と挨拶。市川團十郎が助六を勤める公演のビデオを自宅で観ている最中に、受賞の知らせを電話で受けたと言い、自身と妻の2役を演じそのシーン再現してみせ、会見場を和ませる。
自身の原動力を「ただただ、歌舞伎が好きということですね」と語る仁左衛門は、「正直、廃業しようという時期もありましたが、やはり歌舞伎の魅力から離れられなかったと言うか、逃げられなかったと言うか……」と振り返り、「常に挑戦」「何でも命がけ」と歌舞伎に対する貪欲な姿勢を見せる。そして1993年の大病からの復帰を、「非常におこがましい言い方なんですけれども」と前置きしながら「神様が『歌舞伎のためにもっとがんばれ』とおっしゃってくださったんだと思いました」と回想し、「私から歌舞伎を取ったら何もなくなります」とコメント。さらに「うぬぼれ……甘えではないのですが、お見せしても恥ずかしくないと思える段階、『惜しいな』と思われるうちに辞めたい」と引き際についても言及した。
歌舞伎界の今後については「とにかく古典ものの掘り下げ。そして掘り下げることで生まれる芝居の新しい魅力を、歌舞伎をご存知ないお客様方に訴えたい」と目標を掲げ、「お客様を目新しいことで捕まえるのではなく、掘り下げる努力をすることが一番大事だと思います」とやわらかな表情の中にも真摯な持論を忍ばせる。続けて「言い古された言葉ですけど、『死ぬまで修行』。我々に終点はないわけですから、とにかく体力の許す限り“歌舞伎”というものを、多くの人に伝えていきたい」と語り、“歌舞伎”の箇所で声に力を込めた。
一方で、来年2019年で芸歴70年を迎える自身の展望については、「私は本当に頼りない男でね」と笑い、「不逆流生(ふぎゃくりゅうせい)という私が作った言葉があるのですが、“流れに逆らわず、流れを生かす”が私のモットー。だから来年は、どういう流れが来るか次第ですね」とフワリ、笑顔でかわす。そして仁左衛門は「今までのこういう会見の中で、私が一番阿呆でしょ?(笑)」と、終始笑いの絶えなかった会見場を笑顔であとにした。
※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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