東京・国立劇場の11月歌舞伎公演「通し狂言 名高大岡越前裁」に出演する
同日に実施された取材会で、大岡越前守忠相役を勤める梅玉は、「大岡が『天一坊は将軍のご落胤ではない』と何度訴えても却下されてしまうが、ようやく漕ぎつけた再吟味でも伊賀亮の弁舌に負けてしまう。挙句の果てに切腹直前まで追い詰められてしまいますが、家来の働きで証拠を掴み、やっとの思いで大岡らしい裁きをする。大岡越前の人間的なふくらみの描かれた、とても面白い作品です」と本作を紹介。そして「大岡越前の苦悩、それが芝居の眼目になっています。そこを勉強して、皆様のイメージを壊さないような、最後は颯爽とした大岡越前になれば」と目標を掲げた。
また本作の見せ場について「網代問答です」と述べ、「大岡がいくら攻めても、伊賀亮がそれに理路整然と応えて返します。伊賀亮の彌十郎さん、天一坊の右團次さん、現代の歌舞伎界の精鋭たちを相手にするわけですから、そういう意味でも、ものすごく楽しみです」と期待を口にする。そして大岡廟を参拝した感想について、「江戸のヒーローを演じるという覚悟ができました。皆さんのご期待に応えられるように、そして代々の先輩たちに負けないような大岡越前を作ることができればいいなと思っています」と意気込んだ。
山内伊賀亮役の彌十郎は「国立劇場で昭和47年(1972年)3月に上演されたあと、同じ年の6月に京都・京都四條 南座でも上演されましたが、そのとき、私が勤めさせていただく伊賀亮を、父の坂東好太郎が勤めさていただきました。父が歌舞伎に戻った頃で、『いい役をやらせていただけるんだ』と言っていのをよく覚えています」と思い出を振り返りながら、「奇しくもそのとき、父は61歳、私は今62歳です。もっと父は歳がいっていたような気もするのですが……父の歳を越して、この役を勤めさせていただくのは、とても光栄なことです。ちなみに、そのとき『ああ、しっかりした子役さんが出ているな』と思ったのが、一子忠右衛門を勤めていた、今の右團次さんですね(笑)」と発言し、会場を笑いで包んだ。
法沢後二天一坊役の右團次は彌十郎の話を受け、「私の初舞台が京都四條 南座で、昭和47年6月のこのお芝居でした。その折に十三代目片岡仁左衛門さんの大岡様と、片岡秀太郎さんのお母様の間にちょこんと座らせていただき、一子忠右衛門で初めて舞台を踏ませていただいた次第でございます」と回想。さらに「代々の名優が演じてこられた、この天一坊が自身に勤まるのか、本当に心配ではございますが、諸先輩のお力をお借りして、懸命に勤める所存です」と語気を強めた。
さらに息子の右近が本作に出演することに触れ、「せがれの右近が、私と同じ忠右衛門を勤めさせていただくこととなりました。非常に因縁を感じるとともに、大変うれしく思っております」と喜びをあらわにする。なおフォトセッション時には、右近も登場し、「お父さんには負けません!」と元気にコメントした。
「通し狂言 名高大岡越前裁」の公演は、11月3日から26日まで東京・国立劇場 大劇場にて。電話、インターネットでのチケット予約は10月6日、劇場窓口での販売は翌7日に開始される。
明治150年記念 平成30年11月歌舞伎公演「通し狂言 名高大岡越前裁」
2018年11月3日(土・祝)~26日(月)
東京都 国立劇場 大劇場
作:河竹黙阿弥
補綴:国立劇場文芸研究会
出演
大岡越前守忠相:
大岡妻小沢:
法沢後二天一坊:
田口千助:
吉田三五郎:
下男久助 / 池田大助:
大岡一子忠右衛門:市川右近
お三:
僧天忠 / 久保見杢四郎:嵐橘三郎
土屋六郎右衛門:
伊賀亮女房おさみ:市川齊入
平石治右衛門:
名主甚右衛門:
山内伊賀亮:
徳川綱條:坂東楽善
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