七之助が熱い思い「父と三津五郎のおじ様に顔向けできないものはできない」

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8月9日に開幕する「八月納涼歌舞伎」に先駆け、中村七之助の合同取材会が昨日7月12日に都内にて行われた。

中村七之助

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「八月納涼歌舞伎」チラシ表

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3部構成の本公演では、第一部に「花魁草(おいらんそう)」「龍虎(りゅうこ)」「心中月夜星野屋(しんじゅうつきよのほしのや)」の3演目、第二部に「再伊勢!? YJKT 東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」「雨乞其角(あまごいきかく)」の2演目、第三部に「通し狂言 盟三五大切(かみかけてさん ごたいせつ)」が上演される。今回、七之助は「心中月夜星野屋」「東海道中膝栗毛」「盟三五大切」の3作品に出演する。

中村七之助

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新作の「心中月夜星野屋」は落語の「星野屋」をモチーフにした作品。七之助は昨年2017年の「八月納涼歌舞伎」を振り返り、「第一部では、(坂東)玉三郎さんの演出で(市川)中車さんと『刺青奇偶(いれずみちょうはん)』をやらせていただき、『玉兎(たまうさぎ)』『団子売』でうちの甥っ子(中村勘太郎)も踊らせていただきまして、お客様がたくさん入ってくださり、とても充実した一部になりました。『八月納涼歌舞伎』は常々、一部からお客様がいっぱいという印象があったので、今年もその流れを消さないようにといろいろ考えたんですね。その中で、上方落語の脚本家・小佐田定雄さんに『歌舞伎にするのにいい落語はないでしょうか』とご相談したところ、その候補の1つとして『星野屋』が挙がってきました」と本作上演の経緯を語る。

「心中月夜星野屋」は、元芸者のおたかが青物問屋の照蔵から別れ話を切り出され、話のはずみで心中の約束をしてしまうが、母お熊の入れ知恵もあって、照蔵だけが吾妻橋から飛び降りる……という顛末を描いた世話狂言だ。「内容的にあまり深い話ではなく、軽く楽しい気持ちで観られる作品ですので、お客様も注目してくださるのではないかと。また(中村)扇雀さんが『花魁草』を、(松本)幸四郎さんが『龍虎』をやってくださることになり、プロデュース的には今年の第一部もヨシヨシと(笑)。お客様が観たいと思ってくださるような内容にできたのではないでしょうか」と笑顔を見せる。

中村七之助

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「八月納涼歌舞伎」では過去にも落語をもとにした演目をたびたび上演している。落語と歌舞伎の違いについて七之助は「1人が演じて作品の背景を見せる落語と、個々が役を演じる歌舞伎では全然表現が違いますし、落語のオチのつけ方と歌舞伎では違うこともある。今回もこれからさらに練り上げていきたいと思います」と意欲をのぞかせた。

また「盟三五大切」の芸者小万については「『三五大切』は僕もとても大好きな作品。コクーン歌舞伎で一番好きなのが『三五大切』で、1998年にうちの父(故・十八世中村勘三郎)と(中村)芝翫のおじが薩摩源五兵衛をWキャストでやったイメージがすごく強いんです。そのとき、憧れの(中村)福助のおじがやっていた小万の役を今回やれるのは、すごくうれしいですね」と意気込みを見せる。

役作りについては「あまり悪い人には見えたくない」と語り、「お金のことで芸者になったので純な芸者ではないと思うのですが、色気たっぷりに演じたいと思います。ただ男を惑わす女と言うよりも、一途さゆえにいき過ぎてしまう怖さがある人」と小万を分析。また演出の織田紘二には「この座組みならではの芝居を作りたいと言われている」と話し「幸四郎さんと私と(中村)獅童さんと、3人ならではの『三五大切』ができれば」と抱負を語った。

「八月納涼歌舞伎」チラシ裏

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さらに今回でシリーズ第3弾となる「東海道中膝栗毛」については、「まだ何も聞いてないです」と苦笑する。昨年、第2弾に出演した際には「あまり芝居に絡む役ではなかったので、こういう役は一番難しいんだなと。だから今回はもっと作品に絡ませて、と言いました」と笑顔で話す。

最後に「納涼歌舞伎」に対する思いを問われると、七之助は「『納涼歌舞伎』はうちの父と(十世坂東)三津五郎のおじ様、それと福助のおじ、芝翫のおじが一生懸命何かを作ろうという精神でやってきたもの。小さいころからそれを間近で観てきましたし、舞台裏での葛藤も、舞台の上での4人の素晴らしさも観てきて、総合的にすごくレベルが高かった1カ月だったと思います。また、それをお客様がとても楽しんで観てくださったことも実感していますので、僕としては特に、父と三津五郎のおじ様2人に顔向けできないものはできないと思っています」と改まった口調で述べる。「その意味でも、そろそろ私も自分のことだけでなく、お客様や演目のことも考えないといけない時代になってきたのかなと。父や三津五郎のおじさまから、そのように言われているようにもと感じます」と感慨を述べた。

「八月納涼歌舞伎」は8月9日から27日まで、東京・歌舞伎座で上演される。

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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「八月納涼歌舞伎」

2018年8月9日(木)~27日(月)
東京都 歌舞伎座

第一部

「花魁草(おいらんそう)」
作・演出:北條秀司
演出:大場正昭

お蝶:中村扇雀
幸太郎:中村獅童
座元の妾お八重:市川高麗蔵
客孝吉:中村松江
米之助女房お松:中村梅枝
お糸:坂東新悟
客平助:中村虎之介
小料理屋女房:中村梅花
客音松:中村吉之丞
小料理屋亭主:片岡松之助
達磨問屋主人五兵衛:片岡市蔵
菊岡女将お栄:市村萬次郎
座元勘左衛門:坂東彌十郎
百姓米之助:松本幸四郎
  
「龍虎(りゅうこ)」
作:大野恵造

龍:松本幸四郎
虎:市川染五郎

新作歌舞伎「心中月夜星野屋(しんじゅうつきよのほしのや)」
脚本:小佐田定雄
演出:今井豊茂

おたか:中村七之助
星野屋照蔵:市川中車
藤助:片岡亀蔵
母お熊:中村獅童

第二部

「再伊勢!? YJKT 東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」
原作:十返舎一九
構成:杉原邦生
脚本:戸部和久
演出:市川猿之助

喜多八:市川猿之助
大岡忠相 / 獅子堂獄之助:中村獅童
女医羽笠 / 鬼塚波七:中村七之助
釡桐左衛門 / 暗闇の中治:市川中車
閻魔大王:市川右團次
舞台番竹蔵:市村竹松
茶屋女お稲:坂東新悟
五日月屋亭主藤六:大谷廣太郎
五日月屋女房おさき:中村米吉
赤鬼:中村橋之助
青鬼:中村福之助
舞台番虎吉:中村虎之介
大鬼:中村鷹之資
伊之助妹お園:片岡千之助
中鬼:中村玉太郎
黄鬼:中村歌之助
伊月梵太郎:市川染五郎
五代政之助:市川團子
小鬼:市川右近
三毛猫:中村鶴松
むく犬:市川弘太郎
町名主伊佐久:市川寿猿
後妻お紀乃:澤村宗之助
大家七郎兵衛:松本錦吾
阿野次郎左衛門:片岡亀蔵
住職門海 / 基督:市川門之助
弥次郎兵衛:松本幸四郎

「雨乞其角(あまごいきかく)」
作:伊藤鴎二(「鴎」は旧字体が正式表記)

其角:中村扇雀
船頭:中村歌昇、中村虎之介
芸者:坂東新悟、大谷廣松
其角の弟子:中村橋之助、市川男寅、中村福之助、中村鷹之資、片岡千之助、中村玉太郎、中村歌之助、中村鶴松
大尽:坂東彌十郎

第三部

「通し狂言 盟三五大切(かみかけてさん ごたいせつ)」
作:四世鶴屋南北
補綴・演出:郡司正勝
演出:織田紘二

薩摩源五兵衛:松本幸四郎
芸者小万:中村七之助
家主くり廻しの弥助:市川中車
ごろつき五平:市川男女蔵
内びん虎蔵:大谷廣太郎
芸者菊野:中村米吉
若党六七八右衛門:中村橋之助
お先の伊之助:中村吉之丞
里親おくろ:中村歌女之丞
了心:片岡松之助
廻し男幸八:澤村宗之助
富森助右衛門:松本錦吾
ごろつき勘九郎:片岡亀蔵
笹野屋三五郎:中村獅童

※初出時、出演者に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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読者の反応

てはぬ @tenuh2011

八月納涼は第三部のチケットだけ入手済み。第一部も見たくなるなあ…
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