「東京芸術祭2018」のラインナップ紹介記者会見が本日6月27日に東京・東京芸術劇場にて行われた。
東京芸術祭は、東京都の提案により行われる都市型総合芸術祭。今年2018年からは
会見冒頭で宮城はまず、プレスリリースに記載された「東京芸術祭2018によせて」と題したステートメントについて言及。宮城は「20世紀前半のオリンピックのような、アーティストが国威顕示の片棒を担がされるような状況を繰り返してはいけない」と語り、「スポーツだけではどこの国が一番かということに思考が傾きがちだが、文化芸術はどんどん“モノサシ”を増やしていくもの。文化芸術によって多様な“モノサシ”を提示し、オリンピックのもともとの理念である『平和でより良い世界の構築』に近付けたら」と述べる。
また宮城は自身を持ち株会社の社長に例えながら、自身に課している3つの役割を説明した。1つ目は東京芸術祭の多彩な事業に関わってきた人材の蓄積を生かし、彼らがもっと広く活躍できるように、東京芸術祭を世界で5本の指に入るような芸術祭にすること。2つ目は自分より若い世代にバトンを渡すこと。特に“心の公共事業”と言われる、税金を使った文化事業に携わる若いアーティストを増やしていくこと。3つ目は俳優がコモディティ化している東京の演劇界に「水面に石を投げるような」動きを展開することと語り、その考えに基づいて「東京芸術祭2018」では、「開く」「極める」「つながる」をテーマにラインナップを組んだと説明を続けた。
その1つとして、ジョルジオ・バルベリオ・コルセッティ演出の「野外劇 三文オペラ」を例にあげながら、「コルセッティさんは僕が最も信頼している演出家の1人です。コルセッティさんに事務所の力や動員力ではなく、俳優1人ひとりと向き合っていただき、フルフラットオーディションで出演者を選んでいただきました。そして池袋西口公園で、1コインで観られる『三文オペラ』を上演します。お祭のような感じで、演じる側の壁も観客の分断も縫合していきたい」と意気込みを述べた。
続けて宮城と協働するプランニングチームメンバーで、直轄事業ディレクターの
「東京芸術祭2018」は9月1日から12月9日までの100日間、池袋周辺を中心に開催される。
宮城聰コメント
東京芸術祭2018によせて
近年、オリンピックが「スポーツと文化の祭典」である、ということがしきりに言われるようになりました。それは近代オリンピック理念の原点に帰ろう、ということでもあり、またスポーツだけに偏りすぎるとオリンピックが国威発揚の道具にされやすくなり「平和でより良い世界の構築(オリンピック憲章第1章第1条)」にはつながらない、という危機感のためでもあるでしょう。
けれど、20世紀前半のオリンピックがそうであったような、国の代表選手としての芸術家が作品の出来を競ってメダルを争う「芸術競技」のありかたでは、スポーツと相補いあうべき芸術の役割が果たせるとは思えません。
では、何が芸術の役割なのでしょうか。
近代オリンピックにおけるスポーツとは、世界各地から異なるバックグラウンドを持った選手たちが集まり、敢えてモノサシをひとつにして「より速く」「より高く」「より美しく」と競うことです。多様な人々が敢えてひとつのモノサシで競いあうことによって信頼関係が生まれることを狙っています。
いっぽう、逆に「こういう『速さ』もあるんじゃないか」「これもまた『高さ』を感じさせるなあ」「こんな『美しさ』もあったのか」とモノサシを増やしてゆくのが芸術です。
「Olympic Games」の「ゲーム」には「競技」と「遊戯」の両方の意味があるように、「こんなモノサシもありなんだ!」と多様性を楽しむ仕掛けとしての芸術が、スポーツとともにオリンピックを形成する、ということなら納得できますね。
近年のグローバリズムの浸透によって、人間たちはつねひごろにおいても「ひとつのモノサシに適応する」ことを迫られています。それができなければこれからの世界を生きのびられないんだ、という脅迫に晒されています。こんな時代には、「モノサシを増やす楽しみ」「モノサシが増えるオドロキ」を共有する“芸術”という人類の知恵が、いっそう活躍しなければならないだろうと僕は考えています。
関連する特集・インタビュー
「東京芸術祭2018」
2018年9月1日(土)~12月9日(日)
総合ディレクター:
東京芸術祭 直轄事業
2018年10月18日(木)~11月4日(日)※予定
ディレクター:
「野外劇 三文オペラ」
2018年10月18日(木)~28日(日)※予定
東京都 池袋西口公園
作:
音楽:クルト・ヴァイル
訳:大岡淳
演出:ジョルジオ・バルベリオ・コルセッティ
総合ディレクター:宮城聰
「ガラスの動物園」
2018年10月27日(土)・28日(日)※予定
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
作:
演出・舞台美術:ダニエル・ジャンヌトー
「ダーク・サーカス」
2018年10月27日(土)~29日(月)※予定
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト
原作:ペフ
出演:ステレオプティク
※初出時より、会場が変更されました。
「空は翼によって測られる」
2018年11月3日(土・祝)・4日(日)※予定
東京都 あうるすぽっと
振付・演出:メルラン・ニヤカム
「アダルト版 ユメミルチカラ」
2018年11月2日(金)~4日(日)※予定
東京都 東京芸術劇場
振付・演出・出演:メルラン・ニヤカム
第七劇場× Shakespeare's Wild Sisters Group 日台国際共同プロジェクト Notes Exchange vol.3「珈琲時光」
2018年10月24日(水)・25日(木)※予定
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト
原作:侯孝賢(映画「
演出:王嘉明、
「フェスティバル/トーキョー18」
2018年10月13日(土)~11月18日(日)※予定
ディレクター:
共同ディレクター:河合千佳
参加アーティスト:
アジアシリーズ vol.5 ピチェ・クランチェン演出・振付作品
2018年10月13日(土)・14日(日)※予定
東京都 南池袋公園
演出・振付:ピチェ・クランチェン
アジアシリーズ vol.5 ショプノ・ドル
アジアシリーズ vol.5 ローモールピッチ・リシー
まちなかパフォーマンスシリーズ
参加アーティスト:L PACK、坂田ゆかり×
「芸劇オータムセレクション」
2018年9月1日(土)~11月25日(日)※予定
ディレクター:内藤美奈子
NODA・MAP「贋作 桜の森の満開の下」
2018年9月1日(土)~12日(水) / 11月3日(土・祝)~25日(日)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
作・演出・出演:
「ゲゲゲの先生へ」
2018年10月 ※予定
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
原案:
脚本・演出:
日本・フランス国際共同制作 「MA-間」プロジェクト
2018年9月27日(木)~30日(日)※予定
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト
演出・振付・出演:カミーユ・ボワテル
バック・トゥ・バック・シアター「スモール・メタル・オブジェクツ」
2018年10月19日(金)~30日(火)※予定
東京都 池袋西口公園
演出:ブルース・グラッドウイン
「としま国際アート・カルチャー都市発信プログラム」
2018年9月1日(土)~12月9日(日)
ディレクター:根本晴美、杉田隼人
伝統芸能@南池袋公園事業
2018年9月23日(日・祝)・24日(月・振休)
東京都 南池袋公園 特設舞台
2018年9月23日(日・祝)
構成・演出:出演:野村万蔵
出演:猿若清三郎 ほか
2018年9月24日(月・振休)
出演:アイヌ舞踊、西馬音内盆踊り、長崎獅子舞、阿波踊り、エイサーなどの民族舞踊団体
「大田楽 いけぶくろ絵巻」2018年10月20日(土)
構成・演出:野村万蔵
「第30回池袋演劇祭」
2018年9月1日(土)~30日(日)
東京都 シアターグリーン ほか17会場
「奈々福の、惚れるひと。」
2018年10月10日(水)
東京都 あうるすぽっと
出演:
「右回りの男」
2018年11月22日(木)~25日(日)
東京都 あうるすぽっと
構成・上演台本・演出:芳賀薫
振付・演出:
出演:
「光の音:影の音」
2018年12月7日(金)~9日(日)
東京都 あうるすぽっと
アーティスティックディレクター:
出演:
「APAF-アジア舞台芸術人材育成部門」
2018年10月15日(月)~11月12日(月)
ディレクター:
APAF2018 国際共同クリエーション「Beautiful Trauma」(仮)
2018年11月10日(土)・11日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト
演出:ユスティアンシャ・ルスマナ
APAF2018 国際共同制作ワークショップ 上演会・ラップアップ
2018年11月9日(金)~11日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト
APAF2018 アートキャンプ
2018年11月12日(月)ほか
東京都 東京芸術劇場 ほか
関連記事
宮城聰のほかの記事
タグ
リンク
- 東京芸術祭 2018 | トップページ
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
東京芸術劇場 @geigeki_info
「東京芸術祭2018」宮城聰が意気込み「世界で5本の指に入る演劇祭に」 - ステージナタリー https://t.co/FSNmuU8sno