6月から7月にかけて3都市ツアーが実施される、
「忘れる日本人」は気鋭の作家・
地点の拠点である京都にて行われた懇談会には、三浦と松原、聞き手としてロームシアター京都 / KYOTO EXPERIMENT プログラム・ディレクターの橋本裕介が出席。松原について「地点の座付き作家と言われるのを必死に否定しています(笑)」と切り出した三浦は、その出会いについて「(地点が“新たな鑑賞者を開拓するための試み”として行った)『カルチベート・プログラム』の受講生の中に松原くんがいて、修了後に受講生に書いてもらうエッセイを読んだら、抜きん出た天才だったんです」とエピソードを明かす。
「地点の『ファッツァー』を観るまで演劇に触れたことがなかった」という松原は、「忘れる日本人」について「べケットやチェーホフを読んで、(戯曲に対して)ぼんやりとしたイメージがある中で書いたのが『忘れる日本人』でした。定型とは大きく違い、演劇を学んできた人が書くような戯曲ではない。地点の俳優にしゃべってもらうということぐらいしか考えず、あとは自分が今書けることを書く、という姿勢で書きました」と振り返った。
また本作の出発点について松原は「民俗学者の宮本常一が日本各地のマイノリティの声を拾っていく『忘れられた日本人』をモチーフに戯曲を書くことになり、そのままでは面白くないので、『忘れる日本人』と反転させました」と述べ、「境界線上にいる人たちが登場人物になっていて、その人たちの声を書いてるという意識がありました。“忘れる”という単語一つを取っても両義的なんです。マジョリティの側が、かつてあった悲劇を忘れて、日常にしがみつくみたいなイメージがあったり、ポジティブに忘れて何かに熱中して、そのまま何かを成し遂げるみたいな肯定的な部分も含まれていて……戯曲を読んだ上で境界線みたいなものが浮かび上がってくるといいなと書いていました」と展望を語った。
三浦は松原の書くテキストに言及し、「ずっとしゃべっていて、とにかく長い。誰が何についてしゃべてるのかもわからない。その辺が不思議で、主語の入れ替わりを書く作家が日本にも出てきたんだなというのが最初の実感。それをどう舞台にするかというのは、文学を読み解くのとはまた別の作業でした。イメージみたいなものがたくさん書かれていて、それを1個に絞るのが僕の役割です」と語ると共に、「直接的には書かれていなかったですが、震災が背景になっているなと。その大きなバックボーンを説教くさくなく広げていく、そのときに(戯曲に書かれている)ぼやきとか、つぶやきが一気に反転して、堂々と出てくる。そこが彼の作品を上演する醍醐味かもしれないです」と感慨を述べる。
また三浦は「忘れる日本人」の初演時を振り返り、「長年、KAATと共同制作をやってきて、初めて劇場側が『舞台セットとっておこう』と言い出して、初日が開けた途端に『再演を決めます』と。地点でこんなに褒められるのは珍しいですから(笑)」と笑い交じりにコメント。最後に三浦は「抵抗する相手や現象をそう簡単に見つけにくくなっている時代に、彼はそれを見つけようとして書いている。彼にキャッチコピーが必要ならば、僕は震災後に出てきた“抵抗の作家”だと思っています」と松原を讃え、懇談会を締めくくった。
「忘れる日本人」は6月21日から24日まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ、7月13日から15日まで愛知県芸術劇場 小ホール、7月18日から21日まで京都・ロームシアター京都 ノースホールで上演。また松原が作を担当したKAAT×地点の共同制作第8弾「山山」は、6月6日から16日まで上演される。
地点「忘れる日本人」
2018年6月21日(木)~24日(日)
神奈川 KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
2018年7月13日(金)~15日(日)
愛知県 愛知県芸術劇場 小ホール
2018年7月18日(水)~21日(土)
京都府 ロームシアター京都 ノースホール
作:
演出:
出演:安部聡子、石田大、小河原康二、窪田史恵、小林洋平、田中祐気、麻上しおり
KAAT×地点 共同制作第8弾「山山」
2018年6月6日(水)~16日(土)
神奈川 KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
作:松原俊太郎
演出:三浦基
出演:安部聡子、石田大、小河原康二、窪田史恵、小林洋平、田中祐気、麻上しおり
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リンク
- 2018.6.6-24『山山』&『忘れる日本人』【神奈川公演】|公演予定|地点 CHITEN
- 2018.7.13-15『忘れる日本人』【愛知公演】|公演予定|地点 CHITEN
- 2018.7.18-21『忘れる日本人』【京都公演】|公演予定|地点 CHITEN
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三浦基&松原俊太郎が地点「忘れる日本人」を語る、記者懇談会が京都で - ステージナタリー https://t.co/5JCu7ZbxWx