文学座「牡丹燈籠」円朝の墓参り、鵜山仁「亡霊を背負って立体的な人間ドラマに」

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文学座「怪談 牡丹燈籠」の上演に向け、原作の落語を生み出した初代三遊亭円朝の墓参りが、2月15日に東京・全生庵で行われた。

文学座「怪談 牡丹燈籠」墓参りの様子。東京・全生庵にある初代三遊亭円朝の墓前。

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三遊亭円朝の墓に手を合わせる演出家の鵜山仁。

三遊亭円朝の墓に手を合わせる演出家の鵜山仁。[拡大]

1974年の初演以来、杉村春子と北村和夫のコンビで人気を博し、98年には新橋耐子と北村のコンビでも上演された文学座版「牡丹燈籠」。20年ぶりの上演となる今回は、伴蔵・お峰夫婦を早坂直家富沢亜古が演じる。

三遊亭円朝の墓に手を合わせる三遊亭円朝役の大原康弘。

三遊亭円朝の墓に手を合わせる三遊亭円朝役の大原康弘。[拡大]

墓参り当日は演出の鵜山仁をはじめ、早坂、富沢、萩原新三郎役の釆澤靖起、お露役の永宝千晶、そして本作で三遊亭円朝役を務める大原康弘らキャストが花を手向け、円朝の墓前で手を合わせた。

鵜山仁

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そのあと行われた取材会には鵜山、早坂、富沢、釆澤、永宝が出席。今回初めて「牡丹燈籠」を演出する鵜山は「怨念にしても愛情にしても、現実と理想の軋轢から湧き上がってくるようなエネルギーを表現できれば。この世のものではない感情のぶつかり合いに出会ったとき、人間はどういう表情をするか? どういう声を出すか? というところを描きたい。文学座版の初演から約40年の亡霊を背負って、立体的な人間ドラマにしたいです」と意気込みを語る。

文学座「怪談 牡丹燈籠」取材会の様子。

文学座「怪談 牡丹燈籠」取材会の様子。[拡大]

続けて早坂が「文学座では伴蔵役は北村和夫さんだけしか演じておらず、私で2代目。“文学座財産演目”ということですが、財産は2代目が食い潰すものらしいので、食い潰さないようがんばります(笑)」と述べると、富沢はすかさず「食い潰すのは3代目よ!」とツッコミを入れる。これに対して早坂が「あ、そうなの? あなた今回3代目(お峰)じゃない!」と切り返し、会場は笑いに包まれた。

文学座「怪談 牡丹燈籠」取材会の様子。

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本作に出演経験がある富沢は「80年代に上演されたとき、お竹とお梅で出演させていただきまして、その時はWキャストなどもあったので大人数でしたね」と振り返りつつ「今回は(座組の人数が)コンパクトですし、みんなの気持ちもより1つに向かうんじゃないかと思います」と語った。

早坂直家

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2017年に正座員となり、今回初めて文学座公演に出演する永宝は「鵜山さんとご一緒するのも、お着物を着てお芝居をするのも初めてです。初体験づくしで不安もありますが、先輩方から学ばせていただき、いい作品にできたらと思っております」とコメント。釆澤は「僕が準座員になって初めての文学座公演が、鵜山さんの演出でした。その時、(富沢)亜古さんもご出演されていて。今回、非常に縁を感じております」と語った。

富沢亜古

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円朝の墓参りを終えた鵜山は「お天気も良く、いい季節感の中で(円朝と)交感できた」と話し、「芝居ではこういうものが目に見えなきゃいけないんだなと感じました」と述べる。早坂は、「僕は自分で落語を芝居にする会をやっていて、円朝さんの作品を取り上げるときは、何度も全生庵にお参りに来ています。お墓参りというのも面白いもので、来るたびに胸に迫るものがある。今日も新鮮な気持ちで手を合わせました」と思いを語った。

永宝千晶

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富沢は「先ほど鵜山さんから『名演をすると祟られるんだって』と言われ、複雑な思いです」と苦笑いを浮かべる。永宝は「この作品に関われることが本当に光栄で、お墓参りでは、まず感謝の気持ちが湧いてきました」と言い、釆澤は「円朝さんがいなかったら僕も今ここで手を合わせることはなかったんだと、非常に巨大な縁を感じました」と述べた。

釆澤靖起

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自身が演じる幽霊・お露役について永宝は「好きな人を思い過ぎて焦がれ死にし、取り殺してしまう役です。情念の深い女の子という感じもしますが、とても純粋な気持ちからそんなことになってしまうわけで、普段そんな経験できませんから、思い切り念を注ぎたいです」と宣言する。そんなお露と逢瀬を重ねる新三郎役について釆澤は「僕自身、普段から恋愛に関して奥手で、『好きなんだけど、どうしよう』とか、『LINEが既読スルーだ』とか、やきもきするタイプです(笑)。新三郎も奥手ゆえに相手が死んでしまって、呪い殺されてしまうので親近感が湧きます」と話し、記者たちの笑いを誘った。

文学座「怪談 牡丹燈籠」チラシ表

文学座「怪談 牡丹燈籠」チラシ表[拡大]

早坂は「立川談志師匠が『落語は人間の業の肯定だ』とおっしゃっていました。この話にもそういうところがある気がしています」と感慨深げな様子。最後に鵜山が「舞台というのは、亡くなった人が生き返る場所でもあります。今の我々の表情でお化けを捕まえたい。さまざまな人の思いが重なって、にぎやかな世界にできれば」と会見を締めくくった。

公演は5月25日から6月3日まで東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて。チケットは4月19日に発売される。そのほか、3・4月に首都圏と長岡、6・7月に神奈川、近畿にて上演予定。

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文学座「怪談 牡丹燈籠」

2018年5月25日(金)~6月3日(日)
東京都 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

※3~4月に首都圏と長岡、6~7月に神奈川と近畿にて上演予定。

原作:三遊亭円朝
脚本:大西信行
演出:鵜山仁
出演:早坂直家石川武大原康裕沢田冬樹釆澤靖起、相川春樹、富沢亜古つかもと景子、岡寛恵、梅村綾子高柳絢子(「高」ははしごだかが正式表記)、永宝千晶

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