3月に東京・新国立劇場にて上演される大駱駝艦・天賦典式「罪と罰」の記者会見が本日1月24日に行われ、新国立劇場 舞踊芸術監督の大原永子と
本作は、「新国立劇場 開場20周年記念 2017/2018シーズン ダンス 舞踏の今」シリーズの第2弾。大原は自身が海外の舞台に立っていた現役時代、友人たちから「舞踏はすごいよ、すごい感動した」とたびたび言われた体験を振り返り、「新国立劇場20周年において、舞踏の公演が上演できるのは光栄なこと。しかも新制作ということで、麿先生のイマジネーションと人生哲学など、いろいろなものが密に入っている作品になるのではないかと、興味深く思っています」と挨拶した。
続けて麿が登壇。麿は「縁あってと言いますか、長い戦いの革命の末に、国立劇場という牙城を乗っ取ったぞ! くらいの気分で作品を作ろうと思います(笑)」と話し会見場を笑いで包む。「ただ、私の師匠であります土方巽に、もし国立劇場でやると言ったら一体どんな顔をするだろうと思いますね。時代の流れ、人の流れは変わっていくんだなと思います」と感慨を述べた。
新作について麿は、若い頃ドストエフスキーから影響を受けたと話し、「あのあと主人公はどうなったんだろうか、21世紀の今日生きていたらどうなっただろうかと、妄想がどんどん膨らんでいきました」と述べる。さらに「人間のプリミティブな感性にはまず恐怖があり、怯えがあり、そこで神様が想定され、神様との取引がある。演劇も音楽もですが、ダンスもその取引材料の1つだったと思うんですね。ところが時代と共に怯えの質も変わってきて、非常に自然的な怯えから人間的な怯えに変わってきた。近現代にいたっては、複合的な怯えと言いますか、社会や生活、科学の発達による根源的な怯えというものがあると思うんです。人間が目覚めれば目覚めるほど、その怯えがどんどん大きくなっていくところがありまして、その怯えがあまりに大きくなりすぎると社会的な犯罪につながってしまったり……ということを考えながら、舞踏はほかの踊りと違ってセオリーがありませんので、僕のイメージをちょこちょこ伝えながら稽古を進めています」と語った。
また「最近、うちの舞踏は明るくなりすぎているので、真っ黒けにしてやろうという気がしています(笑)。灰色の中で囚人たちがぞろぞろ歩いているような、陰々滅々たる舞台にしてやろうと。ある意味、みんな亡霊と言うか、人類が死んでしまって影がうごめいているような舞台。年寄りの妄想も含めまして、全部死んじゃってここにいるのは嘘の人たち、というようになれば面白いなと。まあ、たいてい僕が耐えられなくて、遊びを入れてしまうんですが……」と笑いを交えつつ、構想を語る。
音楽については、今回はクラシックだけを使う予定だと言い、「クラシックをどーんとかけますと、何もしないほうがいいですね(笑)。クラシックの偉大さを改めて見直しています。ドストエフスキー辺りの、スクリャービンの『はげ山の一夜』とかで遊んでいるんですけどね。さまざまな楽曲のいいところだけをコラージュのように使うことになると思います」と説明。さらに新国立劇場 中劇場という空間については「盆があるので、盆を精一杯使わせてもらおうと思っています。延々と回して目を回らせてやろうかなと(笑)。通常、盆は舞台転換という意味で使われますけれど、僕はそういう意味ではなく装置として生かしたい。ほかの美術は省略して身体を浮き立たせようと思っています」と語った。
2017年に創立45年を迎えた大駱駝艦。その軌跡について麿は、「いい音楽があって身体を置いておけばなんとかなる、そこに変な技術を持ちこむと密度が取れてしまう、という思いがありまして、その姿勢は基本的に今でも変わりません」と述べる。その中で艦員たちの変化については「脚が太くて胴が長い、どっしりした存在感のある身体から、ひょろひょろした身体へ、時代によって変わっていく身体の標本を見ているような面もありますね」と実感を語った。年代が離れた若い艦員とは、若手自主公演の場である壺中天公演を通して関係が深まると話し、「彼らがものを作ってるときに悩んでいる姿を見るのは面白い。作っていく過程での会話が楽しいですね。そうして独立していくやつもいるし、さまざまな場所で活動して成功して、それでまた一緒に一杯飲む、というのが至福の時間です」と語り、笑顔を見せた。
新国立劇場 開場20周年記念 2017/2018シーズン ダンス 舞踏の今 その2 大駱駝艦・天賦典式「罪と罰」
2018年3月17日(土)・18日(日)
東京都 新国立劇場 中劇場
振鋳・演出・美術:
鋳態(出演):麿赤兒 /
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