「父母姉僕弟君」はロロが、2012年に上演した作品。妻を亡くした夫が2人の出会いの場所を目指し、旅するさまが描かれる。2012年度佐藤佐吉賞で優秀作品賞をはじめ、
3面の壁とシンプルな椅子が並べられた空間で、物語はスタート。亀島演じる明夫・ザ・キッドと島田演じる雨天球は仲睦まじい若夫婦で、キッドの故郷をドライブしている。話の流れから、天球は“自分が死んだ後”の希望を夫に語り始める。私が死んだらすぐに新しい奥さんをもらってほしい、でも私を忘れないでほしい……。
そう言い残して死んでしまった妻を乗せたまま、キッドはある目的地を目指す。その道中で、仙人掌(
記憶をテーマにしたロードムービー的な世界観は、前作「BGM」と通じるが、5年前に書かれた作品である本作は、セリフがより熱っぽくストレートで、それゆえに真摯に響く。また時間の経過と共に薄らいでいく記憶、上塗りされる感情を、なんとかそのままの形で留めようともがくキッドの葛藤を、亀島は内面からにじみ出るような演技で好演。そんなキッドに寄り添いながらも、決して同じ時空間に立つことができない天球の痛みを、島田は愛くるしさを交えつつも切なく表現した。
さらにキッドと天球、2人のラブストーリーを、曽我部のオリジナル5曲ほか数曲が、大きく温かく包み込む。2人がかつて見たかもしれない風景や感じたかもしれない思いが、曲や歌詞から立ち上がり、作品に広がりを与えた。特にラストで全員が合奏&合唱する「父母姉僕弟君」は、作品を象徴する名曲となっている。
上演に向けたインタビューの中で三浦は、故郷の宮城県女川が震災による津波ですべて流された光景が、初演時の脳裏にあったと語り、「その時に、記憶は自分の内側じゃなくて外側にあると気付いたんです。そのことを最初に扱ったのが『父母姉僕弟君』でした。僕自身忘れていたんですが、最初のシーンは女川を歩いていたときに思いついたものなんですよ」と語っている。キッドがたどり着く目的地はどこなのか、そこにどんな光景が広がっているのか、ぜひ劇場で目撃してみては。上演時間約130分。公演は11月12日まで、東京・シアターサンモールにて。
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キティエンターテインメント・プレゼンツ「父母姉僕弟君」
2017年11月2日(木)~12日(日)
東京都 シアターサンモール
脚本・演出:
音楽:
衣装:伊賀大介
出演:
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てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u
三浦「記憶は自分の内側じゃなくて外側にあると気付いたんです。そのことを最初に扱ったのが『父母姉僕弟君』でした」/曽我部恵一のメロディが切なく響く、ロロ三浦直之「父母姉僕弟君」開幕 https://t.co/TdqwKWUzm4