「大地をつかむ両足と物語」は、2011年に東京のギャラリー・ルデコで初演され、翌12年に京都・元立誠小学校 音楽室にて再演された3人芝居。ロボット工学の研究員である夫と、銀行強盗の妻、そしてその息子の物語が、手作りの音響・照明を役者自身がスイッチングする手法により描かれる。出演者には再演時と同じ、
東京公演の会場は屋外。海に面した広大な公園の一角に、シンプルな照明が設置されたエリアが作られ、観客はその小さな“芝生のステージ”を囲む形で好きな場所に立って観劇する。
16:45ごろに日没し、17:00を告げる音楽が終わるのを待ってゲネプロは開始した。開演後しばらくは俳優たちの表情や衣装、小道具もはっきりと見えるほど明るかったが、辺りは急速に闇に包まれていき、その闇が濃くなるのに合わせて、物語も深まっていく。ロボット工学の研究員と銀行強盗の夫婦という奇妙な取り合わせが、上空を飛ぶヘリコプターのプロペラ音やダイナミックに色を変える夕空を背景にすると、それほど奇妙なことには見えてこない。それよりも、福原がつづるストレートで力強く詩的なセリフの数々が、空間を貫くさまが心地よく、俳優たち3人はセリフを発するたびにどんどんどっしりとたくましさを増していく。
ただ、ゲネプロでは野外ならではの不測の事態が起き、キャストとスタッフが思わず苦笑いしたり、“万が一”のために用意されたアイテムがさっそくお目見えするシーンも。しかしそんなハプニングも飲み込んでしまうほど物語の骨は太く、俳優たちは大地と格闘しながら肝の据わった演技を見せた。入れ替わり立ち替わり、さまざまな時間、役を演じる彼らの肩越しには、ライトアップされたディズニーリゾートや観覧車が。非日常的な空間の中で繰り広げられる非凡な家族の物語は、ブラックボックスで観るとき以上に熱いものを胸に残した。上演時間は約50分。
また上演に際し、福原は「元々どこでも上演出来るようにと、電球やらカセットテープで公演をしていた劇団で、自作の機材なども含め方法論は前回公演でかなり確立できたと思っていたのですが、野外は想定していなかったので、今回また赤子に戻ったような気持ちで作ってます。しっかり防寒して、観に来てもらえれば。雨でもやります!」とコメントしている。
東京公演は11月1日から5日まで。またニッポンの河川初の北海道公演は、11月17日から19日まで北海道・生活支援型文化施設 コンカリーニョにて。17日19:30開演回の終演後には福原による公開ダメ出しが、18日14:00開演回には
福原充則コメント
この作品は7年前、11年の2月が初演です。震災直前ですね。11年3月以降に書いた作品とは明らかに違うと思います。身の回りの悩みのみで書かれていると言いましょうか。悩んでいるけどどこかのんびりしているとも言えますし、だからこそどこまでも深く悩んでいられているとも言えるでしょう。
元々どこでも上演出来るようにと、電球やらカセットテープで公演をしていた劇団で、自作の機材なども含め方法論は前回公演でかなり確立できたと思っていたのですが、野外は想定していなかったので、今回また赤子に戻ったような気持ちで作ってます。しっかり防寒して、見に来てもらえれば。雨でもやります!
ニッポンの河川 第7回公演「大地をつかむ両足と物語」
2017年11月1日(水)~5日(日)
東京都 葛西臨海公園 展望広場
2017年11月17日(金)~19日(日)
北海道 生活支援型文化施設 コンカリーニョ
脚本:
演出:
出演・音響・照明:
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