赤堀雅秋の新作「鳥の名前」開幕、名もなき人たちの行き着く先とは

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赤堀雅秋が脚本・演出を手がける「鳥の名前」が、昨日7月22日に開幕した。

「鳥の名前」より。

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「鳥の名前」より。

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新井浩文が2度目の舞台出演に挑むことでも話題を集めている本作。冒頭シーンでは、男2人がテーブルを挟んで向かい合っている。金子(新井浩文)が落ち着きなく1人でしゃべり続ける間、池田(山本浩司)は“大事な話”を切り出すタイミングをじっと待っていた。2人がいるのはファミレス。ついに池田は口を開く。「2万円。返してくれない?」

「鳥の名前」より。

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金子は、自身が経営するボロアパートの住人・金森(村岡希美)を、独り身の自転車屋・中村(赤堀雅秋)に紹介してやろうとする。しかし金森は、元力士で元恋人の東(荒川良々)からストーカー被害に遭っていると語る。そこで金子と池田は、東のところへ話をつけに行くが、東は地下アイドルの田辺(根本宗子)に手を出したせいで、ヤクザの柳(水澤紳吾)に目をつけられていて……。

「鳥の名前」より。

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小さな町を舞台に起こる、それほど大きくはない、いくつもの悲喜劇。登場人物たちはそれぞれ、思いがけない理由から職を失ったり、結婚を決意したり、暴力を受けたり、命の危険にさらされたりするが、それはある時点まで深刻で、ある時点からはどうでもいいことに見えてくる。

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作品全体に通底しているのは、陰を含みつつもどこか“陽”な空気だ。それは、新井演じる金子の飄々としたただずまいと、荒川演じる東の愛嬌あるキャラクター、赤堀演じる中村の冴えない中年男ぶりによるところが大きい。そんな彼らに対し、村岡演じる金森の“ワケあり”な頑なさ、根本演じる田辺の脆い明るさなど、役ごとの演技のコントラストが映える。

「鳥の名前」より。

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また、何気なくさし挟まれたようでいて、役やシーンを端的に言い表す鋭いセリフの数々、ジリジリと進まない会話をサウナで繰り広げる、皮膚感覚に迫った演出、小道具や装置をあまり用いず多彩なシーンを成立させる俳優たちの高い演技力など、作品を構成するすべての要素が有機的に絡み合い、物語に緊張と弛緩の波を作り上げる。その波に合わせて、客席からは何度も大きな笑いが起こった。

当日パンフレットで赤堀は、電車で痴漢をして線路を逃げる中年男の姿をテレビで見たと言い、「何となく、その線路の先に広がる風景を、世界を描いてみたいと思った」と書いている。レールから外れたとき、人生がどん詰まりに見えたとき、自分が名もなき存在に思えたとき、その先をどう生きていくのか。登場人物それぞれが行き着くラストシーンまで、目が離せない。上演時間は約1時間50分。公演は8月13日まで。

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「鳥の名前」

2017年7月22日(土)~8月13日(日)
東京都 ザ・スズナリ

脚本・演出:赤堀雅秋
出演:新井浩文荒川良々、赤堀雅秋、山本浩司根本宗子松浦祐也井端珠里水澤紳吾村岡希美

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眼福ユウコ @gampy

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