岩井×森山×前野「なむはむだはむ」城崎でWIP開催「いいセッションだった」

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「こどもが書いた台本をプロがよってたかって演劇にすることはできないだろうか?」という、東京芸術劇場芸術監督・野田秀樹の発案をもとに、ハイバイの岩井秀人森山未來、シンガーソングライターの前野健太が実践しているコドモ発射プロジェクト。年明けから兵庫・城崎国際アートセンターにて2週間に及ぶ滞在制作を行ってきた彼らが、1月21日に同センターにて、ワークインプログレス発表会を行った。

コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」ワークインプログレスより。

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コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」ワークインプログレスより。

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会場の中央には舞台の片端が上がり、他方はイントレで組まれた長方形の舞台が置かれ、その舞台を挟むように客席が組まれた。開演20分前から岩井、森山、前野の3人は舞台上に姿を現し、おもむろに準備体操を始める。脚や腕をお互いに叩くように刺激し合ったり、顔をしかめるほど身体を伸ばしたりするその様子に、客席の最前列で見ていた子供達は大きな笑い声で反応していた。

やがて岩井が舞台に進み出て、挨拶とともに前説を始める。が、観客に向けて話をしていると思いきや、見えない子供達と会話している様子。子供達に話を考えさせようとしているようだが、話の中ですぐに子供達が登場人物達を“殺して”しまう。「お話をつなげようよ、死なせないで!」と言う岩井。しかし話の途中で急にその場に倒れこみ、岩井は“死んで”しまう。と、その後を森山がつなぎ話し始めるのだが、話の途中で森山も“死んで”しまう。その後を今度は前野が続け、前野が倒れると岩井が……と、いつのまにか冒頭シーンが始まっていたのだった。3人は舞台に開けられたいくつもの穴を出たり入ったり、舞台をあちこち駆け回りながら、追いかけっこの体になる。そんな3人の様子を、子供達は時にツッコミを入れながら大はしゃぎで観ていた。

コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」ワークインプログレスより。

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ワークインプログレスで公開されたのは、その冒頭シーンのほか、「ハムスター」「おじさんの世界へようこそ」「ガイコツ!!」「虹色の馬」「長い毛」と、タイトルから想像力を刺激されるような5話。岩井は朗読、森山は動きを、前野は歌でセッションするスタイルもあれば、3人が形態模写的に話を表現するもの、ある印象的な言葉を1つピックアップしてそれを繰り返し、さまざまな言い方で唱えるものもあり、作品へのアプローチはさまざまだ。中でも子供達に大ウケだったのは「ガイコツ!!」という話で、「ガイコツの頭は八百屋に、体は海に……」というくだりでは、「なんで八百屋なのー?」と大声でツッコみ、大爆笑していた。そんな客席の反応を受けてか、岩井の語りはどんどん滑らかになり、森山の関節がずれたような動きはますますガイコツらしさを呈し、前野の弾き語りはその不思議な作品世界に温かみを加え、3人のセッションはいよいよ熱を帯びていった。

そんな精度の高いシーンの後で、岩井が歌詞を忘れてしまい、前野と森山が助け舟を出しながら曲を歌う1幕も。それが演出だったのか、本当に歌詞を忘れてしまったのかは不明だが、確実にそこで場の緊張感がほぐれ、3人にも客席にも笑顔が戻り、開演前に会場に流れていた緩やかな空気が戻ってきたのだった。

最後の「長い毛」は、“くっさい男”の頭からやっと抜け出せた、長い毛の冒険譚。スープに落ちたり、間違って食べられたり、最後は海に流れ出たりと、書き手である子供の想像力に驚くが、その奇想天外な物語を3人がそれぞれのアプローチでさらに膨らませる。特に森山は、「逃げたい」という意思がありながらも状況に巻き込まれていく毛の細さ、頼りなさを滑らかな動きで表現。ラスト、大海原に浮かぶ木片に毛が身を委ねるくだりでは、前野がしっとりと弾き語る“毛の歌”に合わせて、「き!」と叫ぶ岩井と、「け!」と叫ぶ森山のチークタイムが始まり、木と毛のラブストーリーのような終焉を迎えた。

コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」ワークインプログレスより。

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終演後には、観客が質問や感想を記入したシートに3人が答える形でアフタートークが行われた。話の作者である子供の「話が違った!」という感想に大爆笑しながら謝ったり、「どんな子供だったんですか?」という質問に前野が「本が嫌いだったなあ」、森山が「部屋の中でぐるぐる回って出て行っちゃうような子だった」と返答したり。また「『き』と『け』のラブストーリーに、間の『く』も出してあげてください」という意見には「それいただきだ!」と歓声を上げるなど、3人は観客の率直な感想や意見を楽しんでいた。

コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」ワークインプログレスより。

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アフタートーク終了後、カフェテリアに戻ってきた3人は互いを称えながらハグし合い、そのまま10分程度のミーティングを行った。その後、カフェに残っていた彼らに、城崎での合宿とワークインプログレスの手応えを尋ねた。森山は「城崎での2週間は、演劇、ダンス、音楽とそれぞれ異なる畑の僕達が、共通言語を探す時間ってイメージでした。あと、あまり固めすぎず、アイデアとして出てくるものをそのまま板の上に乗せて作っていこうという意図もあったから、ラフなところがいっぱいあって、今日はそれがお客さんにどう受け入れられているのかを感じられたのですごくいいセッションだったと思いますね」と語った。前野も「共通言語を探すっていうのはまさにそうで。城崎で一緒に暮らして、緊張感があったりうまくいかなかったりするのも含めて、この2人とは恋愛じゃないのにこんな深い関わり方ができるんだって、人生レベルですごい貴重なことでしたね。それに子供の言葉とも、こんなに深く向き合えるとは……」と実感を語る。岩井は「そもそも表現って、まず作り手の中で面白がることが大事だと思ってて。稽古して、影響し合って膨らんで、1人じゃそれぞれ出せないものを作り上げてる感覚がすごく重要だと思うんです。今回、稽古中に3人の中で主導権がどんどん変わるんですね。前野くんも(森山)未來くんもそれぞれ普段は1人で活動してる人たちだから、それぞれ言ってることが信用できる。それが面白いですね」と笑顔になる。

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翌日が滞在制作最終日ということもあり、話は再び城崎での稽古のことに。岩井が「このカフェが一番デカい(影響があった)と思ってて。ご飯を一緒に食べながらいつの間にか作品の話をしていたりするんです」と語ると、前野も「夜めっちゃ飲んで、昼間は緊張感がある稽古をする。そのストレッチが、すごく効果がありましたね」と続ける。森山も「意図的に余白を多くしたというか、(城崎では)朝から晩まで稽古するんじゃなくて、その余白を味わうことを大事にしていて。そういう中で出来てきた関係性がすごく大きいし、舞台上にもそれが乗っていると思います」と滞在制作での手応えを語った。

これから2月18日の初日に向け、東京での稽古が本格化する。ワークインプログレスの成果が作品にどのように反映されるか、またこれからの稽古で作品がどれだけ膨らんでいくかを、本番で観届けてみては。

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コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」

2017年2月18日(土)~3月12日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト

原案:こどもたち
つくる人:岩井秀人森山未來前野健太
そもそもこんな企画どうだろうと思った人:野田秀樹

※初出時、公演年に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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この間の城崎国際アートセンターでの公演のレポ。ふふふ、私も密かに写り込んでいる。わからんと思いますけど。岩井×森山×前野「なむはむだはむ」城崎でWIP開催「いいセッションだった」 - ステージナタリー https://t.co/hJ5I12Ul7q

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