新国立劇場新シーズン、宮田演劇芸術監督の任期最後のテーマは「世界を映し出す」

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新国立劇場 開場20周年記念 2017 / 2018シーズンラインアップ説明会及び記者懇談会が本日1月12日に行われ、オペラ芸術監督の飯守泰次郎、舞踊芸術監督の大原永子、演劇芸術監督の宮田慶子が登壇した。

新国立劇場 開場20周年記念 2017 / 2018シーズンラインアップ説明会より。左から宮田慶子、飯守泰次郎、大原永子。

新国立劇場 開場20周年記念 2017 / 2018シーズンラインアップ説明会より。左から宮田慶子、飯守泰次郎、大原永子。

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2018年に開場20周年を迎え、芸術監督として飯守と宮田にとっては最後の年、大原にとっては3年目となる今シーズン。飯守は「今シーズンはベテランとともに次代を担う若手を多数登用しました」とラインナップを紹介。大原は「ダンサーが非常に育ってきたことを実感しています」と挨拶し、宮田は「いろんな思いがあっての8年です。最後まで気を抜かずに、良い作品をお届けしたいと思います」と、第一声でそれぞれの思いを語った。

宮田慶子

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演劇は、“世界を映し出す”をテーマに8演目を上演。シーズン1作目には、ジャン・ジロドゥ作「トロイ戦争は起こらない」が登場する。岩切正一郎の新翻訳で、栗山民也が演出を担当し、鈴木亮平一路真輝鈴木杏ほかが出演する。ジョーダン・ハリソン作「プライムたちの夜」は宮田が演出を担当。浅丘ルリ子が85歳の老婆役を演じ、共演に香寿たつき佐川和正相島一之が名を連ねる。2015年に初演された長塚圭史作・演出「かがみのかなたはたなかのなかに」には、オリジナルキャストの近藤良平首藤康之松たか子、そして長塚が出演する。鄭義信作「赤道の下のマクベス」は、ソン・ジンチェク演出で2010年に韓国・ソウルで初演された作品。このたび台本を大幅に改訂し、鄭自身の演出により日本初演される。出演は池内博之浅野雅博ほか。次期演劇芸術監督・小川絵梨子が演出を手がけるのは、井上芳雄が出演する「1984」。ジョージ・オーウェルの同名小説をロバート・アイクとダンカン・マクミランが戯曲化した作品だ。鵜山仁演出によるシェイクスピア歴史劇シリーズの新作は、昨年2016年末に上演された「ヘンリー四世」に続く「ヘンリー五世」。出演は同シリーズおなじみの浦井健治岡本健一中嶋朋子中嶋しゅうほかとなっている。2001年に「時代と記憶」シリーズの1つとして上演された井上ひさし作「夢の裂け目」には今回、段田安則木場勝己が出演。演出は栗山民也が手がける。そして8作目、シーズン最後の作品は、宮田が演出を担当する蓬莱竜太の新作だ。内容やキャストはこれから発表となる。

なお、オペラでは10演目、バレエでは6演目、ダンスでは4演目がラインナップ。そのうちオペラの新制作は3本だ。まず1作目は、同劇場が3シーズンにわたり新制作上演している「ニーベルングの指環」4部作の最終章「神々の黄昏」。ゲッツ・フリードリヒ演出版を飯守の指揮で上演する。2作目は現代の作曲家・細川俊夫による「松風」。サシャ・ヴァルツが演出・振付を手がける“コレオグラフィック・オペラ”で、指揮をデヴィッド・ロバート・コールマンが務める。3作目は飯守の指揮による、新国立劇場 開場20周年記念特別公演「フィデリオ」。演出をリヒャルト・ワーグナーのひ孫でバイロイト音楽祭総監督のカタリーナ・ワーグナーが手がける。

バレエの新制作は「くるみ割り人形」の1本のみ。“少女クララの夢”として構成された物語を、振付のウエイン・イーグリングが日本人デザイナーたちとともに立ち上げる。ダンスの分野では「舞踏の今」シリーズとして山海塾大駱駝艦が登場するほか、ダムタイプの高谷史郎や森山開次の作品がラインナップされている。オペラ、バレエの新制作以外の作品は下記ラインナップで確認を。

ラインナップ発表会の後、ジャンルに分かれての記者懇談会が行われた。演劇の記者懇談会では、記者が宮田に「“世界を映し出す”というテーマを反映してか、戦争を意識した作品が多いのでは」と質問。宮田は「あえてそういう作品を選んだわけではないのですが」と前置きしつつ、「我々日本人にとって(戦争が)欠かすことができない題材になってきているのではないかと思います」と真摯に回答し、さらに「演劇は正解を提示するものではないけれど、演劇の持つ多面性を使いながら、戦争が起きる仕組みとか、それを起こさない方法とか、そういうことを考えるきっかけになってくれればいいなと思ってます」と続けた。また8年間の芸術監督としての思いを問われると「日本にとってナショナルな劇場をどう動かしていくかは手探りでした」と振り返り、「でも最初に掲げていたマンスリープロジェクトが実現したり、お客様に『新国立劇場に初めて来ました』と言っていただいたり、それは非常にうれしかったし励みでしたね」と笑顔になった。ただ、東京以外の地域との連携にはまだ課題が残ると言い、「例えば東京から地域に出て行って滞在型で作品を作るなんてこともできたら」と新たな構想を語り、懇談会を締めくくった。

※初出時、本文の一部に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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新国立劇場 開場20周年記念 2017 / 2018シーズンラインアップ

オペラ

楽劇「ニーベルングの指環」第3日 神々の黄昏 2017年10月、新国立劇場 オペラパレス
「椿姫」2017年11月、新国立劇場 オペラパレス
「ばらの騎士」2017年11・12月、新国立劇場 オペラパレス
「こうもり」2018年1月、新国立劇場 オペラパレス
「松風」2018年2月、新国立劇場 オペラパレス
「ホフマン物語」2018年2・3月、新国立劇場 オペラパレス
「愛の妙薬」2018年3月、新国立劇場 オペラパレス
新国立劇場 開場20周年記念特別公演「アイーダ」2018年4月、新国立劇場 オペラパレス
新国立劇場 開場20周年記念特別公演「フィデリオ」2018年5・6月、新国立劇場 オペラパレス
「トスカ」2018年7月、新国立劇場 オペラパレス

バレエ

「くるみ割り人形」2017年10・11月、新国立劇場 オペラパレス
「シンデレラ」2017年12月、新国立劇場 オペラパレス
新国立劇場 開場20周年記念特別公演「ニューイヤー・バレエ」2018年1月、新国立劇場 オペラパレス
「ホフマン物語」2018年2月、新国立劇場 オペラパレス
「白鳥の湖」2018年4・5月、新国立劇場 オペラパレス
「眠れる森の美女」2018年6月、新国立劇場 オペラパレス

ダンス

舞踏の今 その1 山海塾「海の賑わい 陸の静寂ーめぐり」2017年11月、新国立劇場 中劇場
高谷史郎(ダムタイプ)「ST / LL」2018年2月、新国立劇場 中劇場
舞踏の今 その2 大駱駝艦・天賦典式「罪と罰」2018年3月、新国立劇場 中劇場
森山開次「サーカス」2018年5月、新国立劇場 小劇場

演劇

「トロイ戦争は起こらない」2017年10月、新国立劇場 中劇場
「プライムたちの夜」2017年11月、新国立劇場 小劇場
「かがみのかなたはたなかのなかに」2017年12月、新国立劇場 小劇場
「赤道の下のマクベス」2018年3月、新国立劇場 小劇場
「1984」2018年4・5月、新国立劇場 小劇場
「ヘンリー五世」2018年5・6月、新国立劇場 中劇場
「夢の裂け目」2018年6月、新国立劇場 小劇場
蓬莱竜太新作 2018年7月、新国立劇場 小劇場

平成29年度公演

■青少年を対象とした公演
高校生のためのオペラ鑑賞教室「蝶々夫人」2017年7月、新国立劇場 オペラパレス
高校生のためのオペラ鑑賞教室・関西公演「蝶々夫人」2017年10月、京都・ロームシアター京都 メインホール
こどものためのバレエ劇場「しらゆき姫」2017年7月、新国立劇場 オペラパレス
■特別企画
「『ジークフリート』ハイライトコンサートー邦人歌手によるー」 2017年5月、新国立劇場 中劇場
■地域招聘オペラ公演
びわ湖ホール「ミカド」2017年8月、新国立劇場 中劇場

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新国立のオペラは来期は細川俊夫「松風」の日本初演か!(アジア初演でさえないがw「新国立劇場新シーズン、宮田演劇芸術監督の任期最後のテーマは「世界を映し出す」 https://t.co/soYHiUEVO1

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