公開されたのは、作品冒頭の数シーン。15世紀末のパリ、ノートルダム大聖堂の鐘つき塔に閉じ込められたカジモドが、鐘楼の外への憧れを歌うナンバー「陽ざしの中へ」では、カジモド役候補の一人、
各シーンの稽古が終わると、演出のスコット・シュワルツはキャストのもとへ近づき、直接アドバイスを伝えていく。シュワルツは身振り手振りを加えながら、役の心情について言葉を尽くし、キャストはその言葉を一つひとつ噛みしめるように聞いていた。
その後、シュワルツとカジモド役候補の海宝、飯田達郎、田中彰孝が登壇し、囲み取材が行われた。記者から、本作を今上演する意義について問われたシュワルツは、「稽古の初日が大統領選直後だったのでこの話をしたのですが、私の個人的な政治的な観点とは関係なく、現在の特に西洋においては他者を排除するような傾向が強いのではないかと思います」とコメント。「2年前にアメリカで本作のプロダクションを開幕したよりも今のほうが、より本作のテーマが伝わるような時代になってしまったのが残念ではあります」としつつも、「本作はさまざまな問いかけをしていますが単純な答えを提供しない作品でもあります。舞台を観たお客さんたちに解釈を委ねる作品なので、ぜひ社会が他者にどう接していくかを考えてもらえたら」と続けた。
またカジモド役の3名には、演じる上で意識していることや役への思いが質問された。オーディションで選ばれた外部キャストの海宝は「カジモドはピュアというかまっすぐな心を持った青年。そのまっすぐさゆえに傷つくし、傷つけられもするんだけど肉体的にはパワフルで、その繊細かつパワフルなところを肉体的にも中身的にも表現できたら」と回答。また「通し稽古をすると精も根も尽き果てるような、すべてのエネルギーを使い果たすような作品。非常に濃度が濃くて、未知なる挑戦だらけです。自分にとっても転換点というか、この役をやりきれたら役者として満足してまうのではないかと思ってしまうほど、重みがあります。初日までに、物語の持つエネルギーをすべて伝え切れるようにがんばりたい」と熱弁する。
飯田は「お2人が稽古で演じているのを観て、何度も泣いてしまうんです。そういった作品の素晴らしさをそのまま崩さず、台本の言葉やドラマを丁寧にお伝えしていけたら。また個人的にタイトルロールというか、作品の中心となる役をやるのは初めてなんです。この作品で、俳優としても人間としても、大きく一歩前に出られたら」と意気込む。さらに「人生で初めて買ってもらったDVDがこの作品で、ご縁も感じています(笑)」と語り、会場の笑いを誘った。
田中は「カジモドの喋り方、身体の使い方を、究極的には自分の自然だと思えるくらいまでなじませないと」と演じる苦労を語りつつ、「カジモド役は今までやってきたどの役より内向き。ミュージカルはもちろんパフォーマンスではあるのですが、彼がそこに存在するだけで悲しみや悲しみの中の喜びが届けられたら」と抱負を語った。
また3人それぞれがカジモド役を演じる上での、声の難しさにも言及。海宝が「(つぶしたような)声の出し方を続けていると喉に負担がかかり過ぎてしまうし、歌にも影響するので、そのバランスを探りながら演じています」と語ると、飯田も「セリフの声と歌への移行が難しいですね」と続け、田中も頷いた。
最後にシュワルツは、「これから本番まで、登場人物の心理にもっと深く入っていき、その複雑さを一人ひとりから引き出していきたいなと思っています。壮大な作品ですが、親密さを感じられるような演出を意識していきます」と語り会見を締めくくった。
劇団四季のミュージカル「ノートルダムの鐘」は12月11日に、東京・四季劇場[秋]にて開幕。チケットは2017年6月25日公演分まで販売中だ。
劇団四季「ノートルダムの鐘」
2016年12月11日(日)~2017年6月25日(日)
東京都 四季劇場[秋]
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