12月10・11日に京都・京都芸術劇場 春秋座にて上演される「繻子の靴 ―四日間のスペイン芝居―」の製作発表が去る10月13日に行われ、翻訳・構成・演出を手がける渡邊守章、キャストの
フランス文学研究家でもある渡邊。留学生時代にパリで観て、いつかやってみたいと思っていたのが、「ロレンザッチョ」と「繻子の靴」だったと語る。また本作が長短入り混じった自由詩で書かれている点に触れ「これをいきなり歌舞伎のせりふ風にしたり謡曲みたいに言えばいいというのではないので、そこが翻訳者としては苦労したところ」と漏らす。同時に「役者の方も身体と魂がかけられている強度をもっていないといけないと思っています」とキャストをチラリ。
剣は渡邉の視線を受け止めつつ、「渡邊さんが翻訳する日本語の美しさが大好きです。セリフを発していても言葉が感情を持っていってくれると常々思っていました」と笑顔を見せた。自身の演じるドニャ・プルエーズについては「繊細で大胆で情熱的で道徳心があって、賢くて、ずる賢くて私の中のありとあらゆる面を出して演じていかないと追いつかないぐらいのやりがいのある役です」とコメント。
2008年に上演された本作の「朗読オラトリオ版」にも出演した茂山は、「狂言師として呼ばれたからには、何か意味があるんだろうなと思っていますが、まだつかめずにおりまして、今回こそはつかみたいと思っています」と意気込む。さらに「狂言はゆっくり話すのですが、渡邊さんの演出作品は、きっちりとした日本語をある程度のスピードを持って話さないといけないので、そこが私ども狂言師の課題だと思っています」と分析した。
高谷は、渡邊と2年ほどかけて本作上演のための打ち合わせを重ねてきたエピソードを披露。翻訳の膨大なバックグラウンドを踏まえた上でセリフが練られ、演出がなされる点に触れ、映像・美術を担当する自身の役割を「この映像とこの言葉を掛け合わせると、こういう風になるんだ! というところをお見せできたら面白いなと思っています」と狙いを明かした。
フランスの劇作家ポール・クローデルが大使として滞日中に完成させた本作は、「一日目」「二日目」「三日目」「四日目」と名づけられた4部で構成される。大航海時代のスペインを舞台に、人妻ドニャ・プルエーズと騎士ドン・ロドリッグによる、カトリック世界では許されない恋と、プルエーズの夫ドン・ペラージュや、背教者ドン・カミーユなど、彼らを取り巻く人々の物語が描かれる。
かつて本国では徹夜での上演も行われてきた大作を、今回は30分の休憩を3度挟みながら8時間超で上演。プルエーズを剣、カミーユを
渡邊守章コメント
この作品は、恋人のすれ違いのメロドラマです。私が留学生時代にパリで見た芝居で、いつかこの作品をやってみたいと思っていたのが、「ロレンザッチョ」とこの「繻子の靴」でした。この作品は近代戯曲の通例とは違って長短入り混じった自由詩で書かれているのです。これをクローデル風ヴェルセというのですが、これをいきなり歌舞伎のせりふ風にしたり謡曲みたいに言えばいいというのではないので、そこが翻訳者としては苦労したところであり、役者の方も身体と魂がかけられている強度をもっていないといけないと思っています。8時間の超大作になりますが、お客様にとって単に過酷ではなく知的ならびに感覚的に芝居の面白さがわかっていただければうれしいです。
剣幸コメント
渡邊守章さんの演出作品に出演するのは、これで3度目になるのですが、渡邊さんが翻訳する日本語の美しさが大好きです。セリフを発していても言葉が感情を持っていってくれると常々思っていました。このドニャ・プルエーズという役は、私が今まで演じた女性像を集めても間に合わないぐらいの役で、繊細で大胆で情熱的で道徳心があって、賢くて、ずる賢くて私の中のありとあらゆる面を出して演じていかないと追いつかないぐらいのやりがいのある役です。8時間、退屈しないで面白かったと言っていただけるような芝居にしたいと思っています。
茂山逸平コメント
2008年にオラトリオ版をやったときにも出させてもらったのですが、狂言師として呼ばれたからには、何か意味があるんだろうなと思っていますが、まだ、つかめずにおりまして、今回こそはつかみたいと思っています。狂言はゆっくり話すのですが、渡邊さんの演出作品は、きっちりとした日本語をある程度のスピードを持って話さないといけないので、そこが私ども狂言師の課題だと思っています。先生の言葉を次の世代へつなぐ役目としても、この芝居を楽しんで参加したいと思っています。
高谷史郎コメント
「繻子の靴」のため2年ほどかけて渡邊さんと打ち合わせを重ねてきました。渡邊さんの翻訳は、作品の奥深さを理解するための膨大な注釈のようなバックグラウンドがあり、それを踏まえた上でのセリフであり演出だと思っています。ですから言葉で伝えられる部分以外の注釈部分を少しでも映像や装置を使って表現できれば、この映像とこの言葉を掛け合わせると、こういう風になるんだ! というところをお見せできたら面白いなと思っています。
「繻子の靴 ―四日間のスペイン芝居―」
2016年12月10日(土)・11日(日)
京都府 京都芸術劇場 春秋座
作:ポール・クローデル「繻子の靴」(岩波文庫)
翻訳・構成・演出:渡邊守章
映像・美術:高谷史郎
出演:
※岩崎小枝子の「崎」は、たつざきが正式表記。
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柏木ゆげひ(朝原広基) @kashiwagiyugehi
渡邊守章翻訳・演出の「繻子の靴」(ステージナタリー10/18) https://t.co/Y5YMKoah4y 「茂山逸平…『狂言師として呼ばれたからには、何か意味があるんだろうなと思っていますが、まだつかめずにおりまして、今回こそはつかみたいと思っています』」