「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の2代目芸術監督就任会見が、埼玉・彩の国さいたま芸術劇場の開館記念日であり、故・
会見には本日付で新監督に就任した
会見では、まず竹内が挨拶。「蜷川さんが、亡くなる1カ月前の今年の4月に病室で『鋼太郎が役者の面倒を見るのを含めて、残りをやってくれたら本当に安心なんだがなぁ』とお話されたんです。私どもはホリプロさんとこの事実をシェイクスピア委員会に報告。委員会で本件が正式に決定されました」と新監督就任の経緯を語る。
さらに「ちょっとだけ裏話をさせていただくと、蜷川さんは37作品上演を完了した暁には『特別バージョンとしてテンペストをやるんだ』と言っておられた。なんで『テンペスト』にこだわってるのかなと思っていたら、主人公プロスペローの最後に、人生で関わった人たちに感謝を言うセリフがある。蜷川さんはこれを、演出家が演劇に関わったすべての人たちに感謝する言葉と読み取ったわけです。『完結した暁にそれを言わせたいんだけど、その役は吉田鋼太郎しかない』。この言葉を聞いて、蜷川さんの後継者は吉田さんしか無いなと思った次第です」とエピソードを明かした。
続く堀は「シェイクスピアを愛する一俳優の吉田鋼太郎を、現在のポジションまで引き上げてくださったのは、他でもない蜷川さんであります。彼はこれまでこのシリーズに12本出演をしており、4本主役を務めています。近年は妙に映像の世界まで幅を広げておりますが(笑)、一方で彼が97年に自ら立ち上げた劇団AUNでは、シェイクスピアをはじめとしてたくさんの作品を手がけてまいりました。とはいえ“世界のニナガワ”が作り上げたシェイクスピア・シリーズを引き継ぐのは、大変勇気のある決断に違いありません。社を上げてバックアップしたいと思っております」と蜷川への感謝と吉田への期待を語った。
吉田は蜷川との出会いを振り返り「22歳のときに『下谷万年町物語』のオーディションを受けまして、主役は渡辺謙さんがおやりになり、僕はオカマの役をいただきました。稽古初日にオカマ約100人の群舞シーンがあったんですけれども、オカマも踊りもわからず適当な感じで気圧されながらやっていたら、蜷川さんが『そこお前ー! 踊れー! オカマで踊るんだ踊れー!』とおっしゃられまして、それで嫌になりまして、その日限り稽古に行かなかった。逃亡しました。一生会うことはないだろうと俳優人生を生きていたんですが、なぜかこういうことになっている」と感慨にふける。
また吉田は「“世界のニナガワ”。唯一無二。蜷川さんにしかできないシェイクスピア。これを引き継がなくてはいけない。でも蜷川さんの“血”が、いっぱい一緒にやってきましたから、僕の中にも流れているような気がしています。蜷川さんがずっとおっしゃっていたのが『言葉』なんですね」と一つひとつの言葉の重さを噛みしめるように、真摯に語る。「(舞台には)蜷川さん独自の驚愕のセットが組んでありますし、演出はもうできあがっている。そこに俳優が入っていくためには、まず『言葉』をしゃべらなければいけない。しゃべらなければセットも演出もすべてが台無しになる。蜷川さんはそれを一番わかっていらっしゃった。『シェイクスピアは朗唱の壁がある。朗唱に血と肉をいれて会話にしないといけない。そこで脱落する俳優が多い。とにかくシェイクスピアはしゃべれないとだめだ』と。そのことだけは受け継いでいきたいと思っています」と宣言した。
「あとは蜷川さんの自由な発想と自由なエネルギー。そして『シェイクスピアは学者に観せるものじゃない、芸能だ』と蜷川さんは断言してらっしゃいました。その遺志を受け継いで、蜷川さんから受け継いだ“血”と、僕に流れている“血”と両方を融合させて演出をしていくことができればいいなと思っております」と熱くコメントした。
シリーズ残りの5作となる「アテネのタイモン」「ジョン王」「ヘンリー五世」「ヘンリー八世」「終わりよければすべてよし」の上演については、「蜷川さんが、ほとんど上演されない地味なやりたくない演目ばっかり残した(笑)。でも逆にそれは燃える。『蜷川さんだったらこうするだろうな』に『俺はこうしたい』を混ぜ込んで、新しいものを作れればいいなと思います」と意気込む。
また会見では、今年9月20日付で彩の国シェイクスピア企画委員会のメンバーになった、蜷川実花のコメントも披露された。
最後に記者から、彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督の新任について質問が飛ぶと、竹内からは「館全体の芸術監督というのは、その人の存在そのものが、館のすべてを表していくと思っています。そういう意味では、私たちは今、蜷川さんの魂が宿る“蜷川レガシー劇場”として継続しこうと思っています。その先については、新たな地盤が確立する段階で考える訳でございます」と回答があった。
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