9月1日から25日まで東京・歌舞伎座にて上演される「秀山祭九月大歌舞伎」。公演に先がけ、去る8月5日に
初代中村吉右衛門の芸を顕彰し、その当たり役を孫で養子の二代目吉右衛門が演じる「秀山祭九月大歌舞伎」。今回、吉右衛門は「一條大蔵譚」と「妹背山婦女庭訓『吉野川』」の2演目に出演する。
「一條大蔵譚」で吉右衛門が演じるのは、平清盛の横暴をかわす処世術として作り阿呆を装う一條大蔵長成。賢者と愚者の演じ分けが見どころとなるこの作品について、吉右衛門は「シェイクスピア劇『ハムレット』のような心境を取り入れた初代吉右衛門の型で演じます」と述べ、自身の役柄を同じく狂人のふりをするハムレットになぞらえて紹介した。また真の姿を周囲に見せたあと、「命長成、気も長成。ただ楽しみは狂言舞」というセリフを発して作り阿呆に戻る場面に注力すると語り、「実際はもっと活躍できただろうに、時世がそれをさせなかった悲しさみたいなものを、このセリフひとつで皆さんに伝えられたらと思っています」と意気込む。
さらに「妹背山婦女庭訓『吉野川』」では大判事清澄に扮する。吉右衛門は過去に大判事を演じたエピソードを「兄の(松本)幸四郎と役替りで演じさせてもらいました。そのとき兄は実父(初代松本白鸚)から教わるだろうと思っていたので同じことをやってもつまらないだろうと、私は(二代目尾上)松緑のおじに頼んで教えていただきました」と振り返る。しかし今回は秀山祭ということで、実父・白鸚も受け継いだ初代吉右衛門の型で演じることを決意。「今までやってきたことを変えるのは勇気がいることでございますけれども『初代はこうしておりました』と皆さんにお伝えするのもひとつの目的、役割かと存じます」と覚悟を語った。
なお「一條大蔵譚」は、吉右衛門の部屋子でもあった三代目中村吉之助の、三代目中村吉之丞襲名披露公演でもある。会見に同席した吉之助は「名前を汚さぬよう、これからも精進してまいりますので、これからもご指導のほどどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶した。
「秀山祭九月大歌舞伎」
2016年9月1日(木)~25日(日)
東京都 歌舞伎座
昼の部:「碁盤忠信」「太刀盗人」「一條大蔵譚」
夜の部:「妹背山婦女庭訓『吉野川』」「眠駱駝物語『らくだ』」「元禄花見踊」
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