郊外の精肉店を舞台にした濃密な会話劇、赤堀雅秋の最新作「同じ夢」が開幕

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赤堀雅秋の最新作「同じ夢」が、2月5日に東京・シアタートラムで開幕した。

「同じ夢」より。(撮影:細野晋司)

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「同じ夢」より。(撮影:細野晋司)

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舞台は千葉県船橋市のひなびた商店街にある精肉店。台所と居間を中心に、生活感漂う具象的な空間で物語は展開する。肉屋の二代目・松田昭雄(光石研)は、寝たきりの父親と娘の靖子(木下あかり)の3人暮らし。そこへ、ヘルパーの高橋美奈代(麻生久美子)と店の従業員・稲葉和彦(赤堀雅秋)が通っているほか、昭雄の飲み友達で近所の文房具屋・佐野秀樹(田中哲司)が入り浸っている。昭雄の妻はすでに交通事故で他界しており、加害者の田所元気(大森南朋)は毎年、詫びと焼香のために松田家を訪れていた。「同じ夢」では、昭雄の妻の10年目の命日の、昼から晩までを描く。

「同じ夢」より。(撮影:細野晋司)

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親と子、友達、加害者と被害者、雇用者と被雇用者、介護者と被介護者。それぞれに微妙な関係を保ちながらも表面的にはうまく付き合ってきた彼らが、その晩、ある一線を踏み越えてしまうことで、思いがけない事実に直面する。赤堀が主宰するTHE SHAMPOO HATの作品に「肉屋の息子」(2004年)があるが、「同じ夢」の昭雄は、「肉屋の息子」の主人公の“その後”を感じさせる。

「同じ夢」より。(撮影:細野晋司)

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また、橋口亮輔監督の映画「恋人たち」に続き、中年男の悲哀を繊細に表現する光石研、微妙な心の動きを目線の動きや仕草で巧みに演じる麻生久美子など、俳優たちの演技バトルも見もの。近年はカラッとした笑いや抽象度が高い作品にも取り組んできた赤堀が、手練の俳優たちとともに挑む、濃密な会話劇となっている。

「同じ夢」より。(撮影:細野晋司)

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初日を終えた赤堀は、「この作品は役者の精神、身体のわずかな変化次第でお客様の想像力を何倍にも喚起させられるような芝居ですので、これからさらに良くなっていくのでは」とコメント。出演者の光石も「これからこの作品の長い旅が始まりますが、毎日毎日、緊張を切らさずに演じていきたいです」、麻生も「毎回気が抜けないお芝居なので、この緊張が最後まで持続するのかなと思うと気が重くもあります(笑)」と続けた。また大森が「今日の初日はひとつ完成ですが、ここからもしかしたらまた違う完成の形、新たな世界が見えるのではないかと思っています」と語り、木下も「今日の新鮮さを毎回忘れずに演じていけたら」と意気込んだ。さらに田中が「自分たち次第で良くも悪くもなる可能性を秘めた“危ない”作品だと感じましたので、共演者皆で意見を交わしながら、これからさらに気を引き締めていきたいと思います」と、キャストの思いを代表するように語った。

東京公演は21日まで。その後、松本・水戸・名古屋・兵庫・広島・福岡でツアーを行う。

赤堀雅秋コメント

スタッフ、キャストの皆さんのおかげで本当に良い初日を迎えることができました。この作品は役者の精神、身体のわずかな変化次第で、お客様の想像力を何倍にも喚起させられるような芝居ですので、これから更に良くなっていくのではと感じています。執筆の最中は、この先の展開はどうなるのか自分でもヒヤヒヤしながら書いていた部分もありましたが、最終的には納得のいく作品を作ることができたと自負しています。明日以降も、真摯にやっていきたいと思います。

光石研コメント

これからこの作品の長い旅が始まりますが、毎日毎日、緊張を切らさずに演じていきたいです。お客様からの笑いや反応も本日いただきましたが、稽古場でやってきたことを基に、自分たちは自分たちの世界の中で頑なに頑張っていき、とにかく赤堀さんが僕たちに書いてくださった世界を忠実に再現したいと、それだけを思っています。

麻生久美子コメント

赤堀さんも仰ってましたが、毎回気が抜けないお芝居なので、この緊張が最後まで持続するのかなと思うと気が重くもあります(笑)。ですが予想以上にお客様が笑ってくださり、お客様と一体になった感じがして楽しみや発見がありました。私が演じるのは複雑な面を持つ女性なのでこれからも模索していきたいですし、そうすれば、私自身もっと楽しめるのではないかと思います。

大森南朋コメント

赤堀さんが書かれた世界の人々、そこに流れている空気を、これからもぶれないように立ち上げていくために、この初日の緊張感を継続しなければと心に留めています。今日の初日はひとつの完成ですが、ここからもしかしたらまた違う完成の形、新たな世界が見えるのではないかと思っています。緊張感を持ちつつ、楽しみながら演じていきたいです。

木下あかり

ものすごく緊張しました。初日の緊張感がお客様にもあるのかなと思っていたのですが、沢山笑ってくださって、やはりそれは赤堀さんの台本の力だと思いました。赤堀さんの台本に素直に演じていれば、お客様も感じ取ってくださるんだと。今日の新鮮さを毎回忘れずに演じていけたらと思います。これからますます、良くしていきたいです。

田中哲司

無事初日の幕が開いて良かったです。それと同時に、自分たち次第で良くも悪くもなる可能性を秘めた“危ない”作品だと感じましたので、共演者皆で意見を交わしながら、これから更に気を引き締めていきたいと思います。これまで二作立て続けに挑んできた翻訳作品とは違う面白さが本作にはありますので、取り組める嬉しさを感じています。

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「同じ夢」

2016年2月5日(金)~21日(日)
東京都 シアタートラム

2016年2月24日(水)・25日(木)
長野県 まつもと市民芸術館 実験劇場

2016年2月27日(土)・28日(日)
茨城県 水戸芸術館 ACM劇場

2016年3月1日(火)・2日(水)
愛知県産業労働センター ウインクあいち 大ホール

2016年3月4日(金)~6日(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

2016年3月8日(火)・9日(水)
広島県 JMSアステールプラザ 中ホール

2016年3月12日(土)・13日(日)
福岡県立ももち文化センター 大ホール

作・演出:赤堀雅秋
出演:光石研麻生久美子大森南朋木下あかり、赤堀雅秋、田中哲司

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読者の反応

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aida ronpe @ronpekun

はじめて観たTHE SHAMPOO HATが「肉屋の息子」でした。2004年かぁ。
郊外の精肉店を舞台にした濃密な会話劇、赤堀雅秋の最新作「同じ夢」が開幕 https://t.co/nRdsecSFIN

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