中村米吉

中村米吉の#カワイイは世界を救う? 第23回 [バックナンバー]

“藤”娘だけに藤まみれ!大役に挑む中村米吉、可愛すぎる衣裳を紹介

着物好き垂涎、米吉×藤娘ならではの帯も

16

392

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 106 257
  • 29 シェア

「明治座 十一月花形歌舞伎」にて、昼の部「藤娘」にて藤の精、夜の部「鎌倉三代記」で時姫を勤めている中村米吉。いずれもファン待望の大役で、藤の精は浮世離れした愛らしさのある米吉にぴったりだ。そして昨年「金閣寺」雪姫、今年の1月に「十種香」八重垣姫を勤めた米吉は、本公演をもって三姫をコンプリート。時姫は、ほかの三姫と同様に可憐さと芯の強さを兼ねそろえたお姫様だが、前半部分では家庭的な一面も。夫と父、どちらに忠義を尽くすか苦悩する、米吉扮する時姫の姿は見逃せない。

このコラムは、とろけるようにカワイイ米吉に、カワイイものを紹介してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で、世界を救うことを目指している。明治座から藤の香りが漂う今月は、“藤娘カワイイ”! 「藤娘」では、米吉の無垢な雰囲気が際立つ、麗しく鮮やかな舞いはもちろん、早替りで魅せる、色とりどりの衣裳チェンジも見どころの1つ。そして米吉を支える“嫁吉”の、米吉×藤娘ならではの帯も登場する。

題字:中村米吉

歌舞伎独特の色使いで鮮やかに描かれた藤のカワイイこと!

優しく迎え入れ、恋に酔って決して離れない……。

何とも色っぽい雰囲気で始めてみましたが、これは藤の花の花言葉を1つの文章にしてみたものです。
正確には“優しさ”、“歓迎”、“恋に酔う”、“決して離れない”というのが藤の花言葉。

絡まるツルに、風に揺れる花弁の優しい色味をよく表した花言葉たちですよね。

季節外れな藤の花のお話をしたのは、現在私がその“藤”だから!

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私は今月は明治座において女方舞踊の名作「藤娘」を勤めさせていただいております。

“藤”娘だけに藤まみれのこの作品。
舞台中央の大きな松に絡むように、たくさんの藤の花が咲き乱れています。
衣裳にもたくさんの藤が。

藤尽くしの衣裳×舞台セットの藤で、まさに圧巻!

藤尽くしの衣裳×舞台セットの藤で、まさに圧巻!

着物も帯もみーんな藤! 歌舞伎独特の色使いで鮮やかに描かれた藤のカワイイこと!

この黒地に藤の衣裳から裏で引抜いて、朱色と鶸色の片身替りへ。

早替り中の舞台裏をパチリ。米吉の真剣な表情にもうっとり。

早替り中の舞台裏をパチリ。米吉の真剣な表情にもうっとり。

その後は藤色の衣裳へと着替えますが、その時の帯がこちら。

3度目の衣裳チェンジ時、藤色の着物に締めている帯。右側と左側で、絶妙に異なる刺繍の色合いも美しい。

3度目の衣裳チェンジ時、藤色の着物に締めている帯。右側と左側で、絶妙に異なる刺繍の色合いも美しい。

“ふじ”という文字を藤の花に見立てたおしゃれ可愛い意匠!
黒地にこのポップな色使いがビビットですね。

長唄の詞章にも「いとしと書いて藤の花」という文句があります。
これは“い”を“十(とお)”書いて、間に“し”を通すと藤の花のようになるという何とも洒落た言葉遊びですが、形がデザインしやすい上にそれが可愛らしいというのが藤の花の大きな魅力なんでしょうね。

最後は諸肌を脱ぎ、中のこれまた藤の刺繍がふんだんにあしらわれた襦袢をお目にかけて、幕となります。

襦袢の袖を見せてくれる、藤の精さん。ぽやんとした表情がカワイイ。

襦袢の袖を見せてくれる、藤の精さん。ぽやんとした表情がカワイイ。

衣裳だけでなく、鬘にも藤が。

「藤娘」の前半に登場する鬘。かんざしの朱赤が映える。

「藤娘」の前半に登場する鬘。かんざしの朱赤が映える。

「藤娘」の後半に登場する鬘。ボリューミーな白藤がなんともカワイイ!

「藤娘」の後半に登場する鬘。ボリューミーな白藤がなんともカワイイ!

目につく簪だけでなく櫛にまで藤があしらわれています。
客席からは見えないかもしれないのにこんな細部に至るまで藤でトータルコーディネートされているわけです!

こんなたくさんの愛らしい藤に囲まれまして、どうにか力をもらって日々勤めている「藤娘」芝居の外にも藤が……。

米吉ファンの着物好き垂涎! 嫁吉の背中を美しく彩る、藤に蝶々の袋帯。

米吉ファンの着物好き垂涎! 嫁吉の背中を美しく彩る、藤に蝶々の袋帯。

我が妻の後ろ姿です。
この帯は、今回のためにご縁ある呉服屋さんで誂えた品物です。
藤の中を蝶が舞っているのが可愛らしいですよね。
生地の色、藤の色味、下絵の段階から相談して作っていただきました。
季節外れではありますが、こうしてお芝居に因んだ着物姿を楽しめるのも歌舞伎見物の醍醐味かもしれません。



そういえば、藤の花言葉にはもう1つ“忠実”というのもありました。

是非、うちの妻にも“忠実”でいていたただきたいもので……。


え? こっちの台詞?



ひえー!
ごめんなさい!!!

プロフィール

中村米吉(ナカムラヨネキチ)

1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。現在、東京・明治座での「明治座 十一月花形歌舞伎」昼の部「藤娘」で藤の精、夜の部「鎌倉三代記」で、女方の大役である三姫の1つ時姫に挑んでいる。12月には、「十二月大歌舞伎」昼の部「あらしのよるに」で、2018年の博多座公演ぶりにみい姫を、来年1月には松竹創業百三十周年「壽 初春大歌舞伎」昼の部「寿曽我対面」で曽我十郎祐成、夜の部「『大富豪同心』影武者 八巻卯之吉篇」で真琴姫を勤める。また、3月には南座「三月花形歌舞伎」に出演予定。

バックナンバー

この記事の画像(全8件)

読者の反応

ちゃわん@労働廃絶論(ボブ・ブラック)を広めたい @tyawan

“藤”娘だけに藤まみれ!大役に挑む中村米吉、可愛すぎる衣裳を紹介 https://t.co/dkHYhcLImG  奥様の帯も、わざわざ藤の柄のものを用意したんだ!!

コメントを読む(16件)

関連記事

中村米吉のほかの記事

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャのステージナタリー編集部が作成・配信しています。 「明治座 十一月花形歌舞伎」昼の部 / 「明治座 十一月花形歌舞伎」夜の部 / 「十二月大歌舞伎」第一部 / 松竹創業百三十周年「壽 初春大歌舞伎」昼の部 / 松竹創業百三十周年「壽 初春大歌舞伎」夜の部 / 中村米吉 の最新情報はリンク先をご覧ください。

ステージナタリーでは演劇・ダンス・ミュージカルなどの舞台芸術のニュースを毎日配信!上演情報や公演レポート、記者会見など舞台に関する幅広い情報をお届けします