旅のイメージ。

この夏どこで、何を観た?

舞台を求めて旅した夏、遠征先で出会った作品を紹介

ニューヨークから北海道の知床半島まで

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1946年の統計開始以降、夏の平均気温が、西日本で1位、東日本で1位タイとなった2024年。そんな夏の熱気にあおられるように、さまざまな舞台ファンが国内外へと足を伸ばして観劇する様子がSNSをにぎわせた。そこで、日本や世界に遠征した俳優や劇場関係者にアツい夏の観劇体験を寄せてもらった。

台北と神戸で2つの秘儀

鉾久奈緒美(舞踏家 / 大駱駝艦)

今夏、麿赤兒+フランソワ・シェニョー「GOLD SHOWER」助手として台北と神戸を訪れた。

同作品は2020年仏で初演、再演を重ねTaipei Performing Arts Centerに上陸。

劇場はビルの側面の球体部分。球体の中はまるで宇宙船で異世界にトリップし、二人の緊密な異空間交歓を覗き見るようだった。

翌週、森山未來キュレーション、同上二人とパーカッションのスティーヴ・エトウ、鳳笙の井原季子を加え、川俣正の作品《六甲の浮橋とテラス》が舞台の《秘儀 ー GOLD SHOWER》。

六甲山の自然を全て取り込み、蛙飛び込む水の音と四人が繰り広げる解放的なまさに秘儀。

二つの秘儀を間近に覗き見る特別な夏だった。

「秘儀 ー GOLD SHOWER」より。(撮影:井上嘉和)

「秘儀 ー GOLD SHOWER」より。(撮影:井上嘉和)

世界は繋がっていることを実感

橋本菜摘(俳優 / 劇団青年座)

アメリカ・ニューヨークにて観劇。初ブロードウェイは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。人生初観劇の方でも存分に楽しめる、とてもわかりやすくワクワクする舞台だった! 次に「ハリー・ポッターと呪いの子」。自分自身も2年間出演した舞台を、他国で観る夢が叶った! 日本との違いを楽しみながら、改めて良い作品だと感動。どちらも専用劇場に改修して行うロングラン、そして両方とも日本でも観られる! 世界は繋がっていると感じる観劇体験だった。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」より。(Photo by Matthew Murphy and Evan Zimmerman)

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」より。(Photo by Matthew Murphy and Evan Zimmerman)

「ハリー・ポッターと呪いの子」より。(Photo by Matthew Murphy)

「ハリー・ポッターと呪いの子」より。(Photo by Matthew Murphy)

チケット購入カウンターでの声に導かれ…

吉田直美(東京芸術劇場)

エジンバラ国際演劇祭にこの夏飛んできました。鼻息荒く「招聘作品ゲットするぜ!」と肩で風を切る自分の姿は頭の中だけで、お墨付きの劇評が出るとあっという間にチケットが売り切れてしまうスピード感に乗り遅れ、結局BOX OFFICEに並ぶ始末(当日券はアプリでも購入可です)。それでもお目当てが買えずにがっかりしていたら、チケット購入カウンターから「sheeps」という音がやたらと聞こえるので何なのか聞いてみる。「sketch ! popular!すぐ始まるよ!」と笑顔で返すので素直に購入。「Sheeps: The Giggle Bunch(That's Our Name For You)」の会場に入ると、場内案内係が大音量の音楽に乗ってお尻を振りながら右左にお客を振り分け、あっという間に客席は満席。男性3人が登場して「スーパーマンって××なんだって」というセリフから苦悩するネタを入り口に、会場は笑いの渦に。内容を正確に理解できたとは言い難いけど、皮肉っている感じ&とにかく間の取り方が上手くて「これコントじゃん!」と自分も吹き出してた。なんと3人でのフェス登場は6年ぶりで、今回が最後になるとのこと。会場を出たのは21時過ぎ。お酒で楽しく賑わっている人たちを横目にホテルに戻る道すがら、程よい脱力感でなんだかニヤニヤしてしまう晩でした。あ、あと、sketchの合間のSEが羊の鳴き声でした。

べニューの外観。

べニューの外観。

韓国版ベルばら、ラストシーンにグッときた

大滝知里(ステージナタリー編集部)

この夏、多くのミュージカル俳優が観てはSNSに挙げている「ベルサイユのばら」を韓国・ソウルで観てきました! ロザリー&ベルナルドにも大きく光が当たった韓国版。“革命”の比重が大きくなることで、オスカルという1人の女性の誕生から死までが色濃く浮かび上がるようでした。ネタバレへの配慮を無視して良いならば、ラストシーンについて記したい。タカラヅカ版では宙吊りなどのスペクタクルが展開することもあるが、韓国版は、どこからか現れたアンドレがオスカルにそっと寄り添い、舞台奥に歩いていって幕。悲しいけれど、アンドレとオスカルの“あるはずだった幸せな未来”が地続きに感じられる幕引きに、静かに泣きました。

韓国ソウル・忠武アートセンター 大劇場の外観。

韓国ソウル・忠武アートセンター 大劇場の外観。

京都で大衆演劇、「都若丸劇団」!

内田慈(俳優)

この夏は「ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-」に出演していてあまり劇場へ足を運べなかった中、京都公演のオフ日に強烈な演劇体験をした!

初めての大衆演劇、「都若丸劇団」!@花園会館。

「ふくすけ」共演者の猫背椿さんに連れて行っていただき。

1部は芝居、2部は舞踊ショー。

観たことがない価値観やセンスにビックリ。中でも、舞踊ショーでの劇団員あきらさんの舞「LA・LA・LA LOVE SONG」にやられてすっかり推しになってしまった。都若丸劇団は11月横浜の三吉演芸場にもいらっしゃるようなので、是非!

タペストリーと内田慈。

タペストリーと内田慈。

内田慈による、あきらのイラスト。

内田慈による、あきらのイラスト。

北海道で考えた、“どこで誰と創るのか?”

加藤弓奈(急な坂スタジオ 館長)

初めての知床斜里。どこまでも続く青い空と海に飲み込まれそうだった。バストリオが実行委員に名を連ねる「葦の芸術原野祭」は広大な景色を臨む小さな街で開催されている。フィナーレを飾る「葦の波 part3」は旧町役場を舞台に、場所に残る記録や記憶を掘り起こし、ここで生まれた人と外からやってきた人の声が寄せては返す波のように観客を包む。小さくて重厚なタイムカプセルのような作品だった。どこで誰と創るのか? そんな問いをもっと深く考えたくなった。

「葦の波 part3」より。(撮影:川村喜一)

「葦の波 part3」より。(撮影:川村喜一)

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内田慈 @chikappoiuchida

#ステージナタリー さんの
#コラムコーナー
「#この夏どこで何を観た?」
に寄稿しました✍️

色んな方の観劇体験知ることが出来て面白い!
私は8月にデビューしたあの観劇体験について書いました。
イラストも描いたので、是非ご一読くださいませね☺️ https://t.co/n1b5n04zGW

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