次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味?」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。
44番目に登場するのは、福岡県北九州市を拠点に活動する
劇団言魂
Q. 劇団名の由来、劇団名に込めた思いを教えてください。
劇団言魂代表の山口大器がお答えします。
団体名の由来はシンプルに、口にした言葉は実現される、言葉に宿る力の“言霊”が由来です。
劇団言魂は2014年に北九州の大学で学生8人で旗揚げしました。そのキャンパスには演劇サークルがなく、代表の山口がほぼ初心者の、それも演劇を見たこともないような友人たちに自作の脚本を読ませ、「演劇やろうよ」と(強引に)誘ったことが始まりです。山口自身も高校演劇を経験しただけで、劇団の運営の仕方も知らなければ、演劇の劇場もないような大学で稽古場に使わせてもらえるような教室を探すところから始めました。そのとき頼りになったのは、もう「演劇やろうよ」という言葉だけで、それ以上にはありませんでした。その“言葉に宿る力”が演劇公演をする源になり、その力に縋ってでも劇団をしたい、と“言霊”を信じてみることにしました。
しかし“霊”となるとどこか客体な印象がして、それよりももう少し自分たち自身の力やエネルギーを注ぎたいと思い、「演劇やろうよ」という言葉に自分たち自身の“魂”を込めて「演劇やるぞ!!」と、青臭くも真剣に付けた名前が「言魂」です。
それ以来、「〇〇で公演したい」「〇〇を目指したい」と敢えて言葉にしてみながら、(そしてもちろんうまく言葉にできなかったり、実現しなかったりを繰り返しながら)劇団活動のための力を言葉に借りています。
Q. 劇団の一番の特徴は?
大学1年生のころに立ち上げた劇団で、当時の旗揚げメンバーは卒業してしまいました。当時から変わっていないことと言えば、劇団名と、山口が作・演出を務めていること、そしてその時その時でいるメンバーとどうしたら演劇ができるかを模索しているということくらいでしょうか。
何度か「解散しようか」とか「個人の屋号にしようか」と、考えたこともありますがまだそれには踏み切っていません。それは、なんだかんだ言いながら、その時いるメンバーが山口の「公演しようよ」という言葉に付き合ってくれていることに、山口自身も助けられているからだと思います。
ですから一番の特徴は、劇団の作風よりも、もしかしたらそのとき在籍しているメンバーたちが、そのとき面白いと思っていることを、劇団の在り方を探しながら作品を上演しているということなのかもしれません。
Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。
とっても、演劇続けるの大変だよなあという気持ちです。それはどうしても生活が大変だったり、お金がなかったり、SNSで評判を気にしちゃったり(笑)、うまくいかないことだらけですけれども、北九州で「演劇やろうよ」と集っているのが劇団言魂です。それぞれなんとか生き延びながら、自分たちの表現を探していくしかないなと、半ば諦めにも近い感情で先を見据えています。
次回作「Plant」でも、劇団のアクティブメンバー総出で、今私たちが気になっている「他人と共に生きること」をテーマに可笑しく、真剣に演劇を作っています。この作品は、今のところの私たちの“回答”みたいなものなのかもしれないと思っています。それは、演劇や劇団というものに対する回答です。
そして、近いうちにツアー公演をして「私たちはこんな感じで演劇やってますよ」といろいろな人に会いにいくことが私たちの野望です。いつかどこかの土地でお会いできますように。これも“言霊”、あ、“言魂”です。
劇団言魂
2014年に、北九州市立大学ひびきのキャンパスの学生を中心に発足。主宰の山口大器は第9回九州戯曲賞大賞を受賞した。なお言魂は4月12日から14日まで福岡・枝光本町商店街アイアンシアターにて「Plant」を上演する。
劇団言魂 @KotodamaAct
ステージナタリーさん(@stage_natalie )
の「由来を教えて!劇団名50」というコラム企画に参加させていただきました!
代表の山口が書きました。
ぜひご覧下さい👀✨
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