中村米吉の#カワイイは世界を救う? 第15回 [バックナンバー]
中村米吉、約2カ月のロングラン公演を完走!思い出の“ヤマトタケルカワイイ”をお届け
イノシシ来襲! “でんきタイプ”の息子も現る
2024年3月25日 19:00 26
このコラムは、その可愛さで老若男女問わずメロメロにする米吉に、身近な“カワイイ”を見つけてもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で読者を癒やすことを目的としている。今回、米吉に見つけてもらったのは、「ヤマトタケル」公演内のカワイイ。東京公演後は、5月に愛知・御園座公演、6月に大阪・大阪松竹座公演と続くが、次に米吉による兄橘姫&弟橘姫が観られるのは、10月の福岡・博多座公演。東京公演を振り返りつつ、各地での観劇に備え、米吉と一緒にカワイイポイントを押さえよう。
題字:中村米吉
丸足袋、フルーツ、イノシシ、そして“息子”
さて私、去る3月8日に31歳の誕生日を迎えることができました!
これも日頃支えてくださっている、多くの方々のお陰でございます。本当にありがとうございます。
お祝いに関しましては、誕生日の前後半年受け付けておりますので、どうぞお気になさらないでください(笑)。
そんな31歳を迎えたばかりの私に編集部からコラムの案がやってきました。
“31歳を記念して、カワイイ31アイスクリームを31個食べてみよう!”
それはまだちょっと寒いな……。それに31個もアイス食べたらお腹痛くなっちゃう。
“31歳にちなみ、カワイイもの31連発!!”
いや! 多いな! 1個見つけるのにもヒーヒー言ってるんだから! こっちは!
編集部には相変わらず素敵で不思議な案を出してくる妖精が生息しているようです(笑)。
そんな妖精の出してくれたお題の中から、1つ良いものを見つけました。
題して、“ヤマトタケルのカワイイ”。
約2カ月、全62回の公演を経たスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」。
この作品の中からカワイイもの探してみるということですね。
早速、“走水”でビショビショに濡れた髪をドライヤーで乾かして、キョロキョロとしてみましたが、右にも左にも特にない。
上は天井だし、特にめぼしいものは……
ん? あった! 下にあった!!
ご覧ください。私の履いていた丸足袋さんたちです。
衣裳によって変わる5つのカラーバリエーション。こうしてひとつ所に並べると、なんとも愛らしいですね。
早拵えでは足袋を履き替えることも。足元のものを脱がせてもらうなんて、滅多にできない経験でした。
さあ、濡れた体も乾いてきたし、少し劇場を散策しながら探しましょう。
なんだか甘い匂いに誘われて見つけたのは、序幕のラスト“熊襲の館”に登場する娘たち(通称:フルーツ娘)が頭に乗せているフルーツたち!
これ、なんとなくトロピカルな雰囲気を漂わせていますが、よく見るとみかん、梨、柿、ザクロ、と日本で収穫できるものばかり。
パイナップルの葉っぱのようなてっぺんの部分も稲穂でできているんです。
“米”吉としては見逃せませんね(笑)。
せっかくだからこっそりかぶってやろうと思っていた矢先に、向こうから何かが駆けてきました。
あ、あれは! イノシシだ!!!!!!
みんな大好き、伊吹山の山神の化身であるイノシシちゃんです!
モフモフ、ファサファサしててどこか愛らしい。
青黛隈を模したお顔も近くで見ると、どこかモダンでスタイリッシュ。
それもそのはず。このお顔は38年前の初演時に装置を担当なさっていた朝倉摂先生がサーっとその場でお描きになったんだそう。
初演から1000回欠かさず出演していた市川門松さんがそう教えてくれました。
門松さんは初演の際には、このイノシシのなかに……。
ゴホン! ゴホン!
ナカノヒトナンテイナイヨ。
さあ、話を元に戻しましょう。
イノシシちゃんが、私の旦那様をやっつけるために再び駆け出して行ったところで、私自身も最後の出番の支度に取り掛からなくてはならなくなりました。
あ! そうだ! このあとラストシーンで共演する我が子、ワカタケルこそカワイイものではないか!
早速ご紹介いたしましょう! 自慢の我が子、ワカタケルです!
ん? なんか黄色いね今日。
それに、ゴム手袋しないと感電しそうだ。
おかしいなあ、お父さん多分“ひこうタイプ”なのに、息子は“でんきタイプ”だなんて……。
まさかこんな大谷育江さんの声で鳴きそうな黄色いネズミが我が子なわけはなく、これはワカタケル役の子から誕生日にもらった“ワカタケルピカチュウ”!
ちゃんと橿の葉を簪にしているところが心憎いですな。
それでは真打登場、本物のワカタケルちゃんたちです!
新居悠翔くんに、小嶋佑弥くん!
舞台上ではあり得なかった、奇跡の叔母甥ショットです(笑)。
2人とも私と同じ早生まれの8歳同士。読書とベイブレードが好きで笑うと顔がクシャってなる悠翔くんに、ポケモンが好きでお母さんの首を触るとちょっと落ち着く佑弥くん。
それぞれ個性が違って魅力的な2人の我が子でした。
毎日お芝居のラストでこの2人に癒され、パワーをもらって2カ月勤めることができたんですよ。
1月20日頃から稽古を始め、怒涛の勢いで幕を開け千穐楽まで駆け抜けた「ヤマトタケル」。
振り返ってみればカワイイものがたくさんありました。
東京での公演はもう終わってしまいましたが、5月の愛知 御園座、6月の大阪松竹座、10月の福岡 博多座での公演と、まだまだ続いてまいります。
このコラムを読みながら、カワイイものを実際に生で確認したかった、と思っていたそこのあなた!
是非、各地での公演でお見逃しのないように。
千穐楽までにコラムを書ききれなくて、無理やり今後の公演の宣伝につなげた筆者からのお願いでした(笑)。
プロフィール
中村米吉(ナカムラヨネキチ)
1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。2022年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、2022年12月から昨年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、昨年3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」、今年2・3月に行われたスーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」東京公演では、それぞれヒロイン役を勤めた。4月には東京・歌舞伎座「四月大歌舞伎」昼の部「夏祭浪花鑑」で団七女房お梶、5月には歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」夜の部「伽羅先代萩」御殿で、沖の井を勤める。また10月には「ヤマトタケル」福岡公演に出演し、兄橘姫 / 弟橘姫、みやず姫を中村壱太郎と回替りで演じる。
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