終演直後、ロンのイメージで撮影に臨む竪山隼太。(撮影:平岩享)

隼太からHAYATAへ 第12回 [バックナンバー]

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」で287回演じたロン、終演直後の竪山隼太が被写体に

役への思いを写真に込める

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俳優の竪山隼太が、もう1つの夢であるカメラマンへの道を目指す本企画。プロカメラマン・平岩享の指導のもと、第1章では竪山と親交がある俳優たちが被写体となり、それぞれの魅力を引き出す撮影に挑んだ。第2章ではより実践に近い形で、竪山にとって初対面の相手、初めて訪れる場所での撮影に奮闘している。

これまで本連載では“撮影する側”として奮闘してきた竪山。今回は特別編として、11月末に出演を終えた舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」の終演後に密着。「ロンにはいろいろなことを教えてもらった」と話す竪山が、終演直後その衣裳とメイクのまま、平岩による撮影とインタビューに臨んだ。

取材・/ 熊井玲

終演直後の竪山隼太が見てみたい

11月29日。その日、竪山隼太は286回目のロンを演じ、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」の“卒業”を翌日に控えていた。竪山は舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」のオーディションで役を射止め、2022年7月の日本初演から2023年6月30日まで出演。その後、10月にカムバックし11月末までの2カ月間、再び同役を演じた。

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」より。(撮影:宮川舞子)

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」より。(撮影:宮川舞子)

本連載の前回、第11回のテスト撮影中に、平岩が「隼太くんの顔が変わった。被写体としてもすごく良くなった」と話していたのが印象に残っていたので、第12回の企画会議の際、「“ロン役の隼太さん”を終演直後に撮るのはどうでしょう?」とダメもとで提案したところ、竪山と平岩、そして舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」制作陣に思いがけず快諾いただき、予想よりはるかにスムーズに今回の撮影が実現した。

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」より。(撮影:宮川舞子)

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」より。(撮影:宮川舞子)

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」を未見の方のために本作について補足すると、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」はイギリスの作家J.K.ローリングの人気小説「ハリー・ポッター」関連のコンテンツにおける初の舞台作品で、これまでにイギリス・ロンドン、アメリカ・ニューヨークなどで上演され、ローレンス・オリヴィエ賞で9部門、トニー賞で演劇作品賞を含む6部門の賞を獲得しているヒット作だ。劇中では小説の最終巻「ハリー・ポッターと死の秘宝」の19年後を描いた物語が繰り広げられ、3人の子を持つ父親となったハリー・ポッターと、その次男でホグワーツ魔法魔術学校に入学するアルバスの関係を中心に描かれる。“ハリー・ポッターの息子”であることにプレッシャーを感じていたアルバスは、入学式に向かうホグワーツ特急の中で、ハリーと犬猿の仲であるドラコ・マルフォイの息子・スコーピウスと出会ってしまい……。

なお竪山が演じたロン・ウィーズリーはハリーの友人で、“今”はハーマイオニー・グレンジャーとの間に生まれた2人の子供を育てながら悪戯専門店ウィーズリー・ウィザード・ウィーズを経営している人物。明るくお調子者で、作品では観客をほっと和ませる役割を担う。実際に舞台で竪山演じるロンを観たときには、あまりに普段の印象と変わらず驚いたほど。明るく振る舞いつつも細やかに周囲に気を配り、ふざけた素振りを見せつつも芯がぶれない懐の深さは、普段の竪山とロンが溶け合ってしまったかのようだと感じた。

終演後に現れたのは1人…じゃなかった!

そんな印象を持っていたこともきっかけとなり、終演直後の“役が抜けて素に戻る瞬間の竪山隼太”を写真で見てみたい、と思った。とはいえ、生の舞台。終演直後の俳優・竪山がどんなテンションでいるかは、あまり予想がつかない。意外と神経が昂っている可能性もあるし、普段とは違う様子でいる可能性もある。「どんな感じで現れるかなあ」と、撮影の準備をする平岩と共に思いを巡らせていると、なんと竪山はハリー・ポッター(藤木直人)とハーマイオニー・グレンジャー(中別府葵)を引き連れてやって来た! 竪山は、その日が共演ラストとなるお二人と3ショットが撮りたいと言う。その後、ロンの娘ローズ・グレンジャー・ウィーズリー役の橋本菜摘もやって来て、和やかなプライベート記念撮影タイムが繰り広げられた。

ソロ撮影に照れくさがっている竪山隼太。(撮影:平岩享)

ソロ撮影に照れくさがっている竪山隼太。(撮影:平岩享)

ソロ撮影に照れくさがっている竪山隼太。(撮影:平岩享)

ソロ撮影に照れくさがっている竪山隼太。(撮影:平岩享)

それらを終えたあと、いよいよ竪山のソロ撮影に。共演者がいる間はテンション高く動き回っていた竪山だが、1人になるとどこか気恥ずかしそう。でも平岩の「ロンとして空を見上げて」「これまでの、ロンを演じてきた舞台のことを思い出して」という声に、ふっと背筋を伸ばし、目線と思いとをはるか彼方へ飛ばすような、普段とは違う雰囲気を全身から醸し出した。撮影時間はわずか10分程度。その後、場所を移して、竪山と平岩に撮影を振り返ってもらった。

ロンのイメージで撮影に臨む竪山隼太。(撮影:平岩享)

ロンのイメージで撮影に臨む竪山隼太。(撮影:平岩享)

ロンのイメージで撮影に臨む竪山隼太。(撮影:平岩享)

ロンのイメージで撮影に臨む竪山隼太。(撮影:平岩享)

頭がずっとピヨピヨしてた

だんだん役が抜けて普段の様子になってきた竪山隼太。(撮影:平岩享)

だんだん役が抜けて普段の様子になってきた竪山隼太。(撮影:平岩享)

──ここからはインタビュー形式で撮影を振り返っていただきます。隼太さん、撮影を終えてどんなお気持ちですか?

竪山隼太 終演後の行程は、いつも大体決まっているんです。まずはメイクさんのところへ行きメイクを落とし、ウィッグを返し、衣裳を返して、お疲れ様でした、と。でも今日は、衣裳とメイクはそのままに、平岩さんが待つ撮影ポイントへ向かっていったのが新鮮でした。撮影中、まだ役が抜けきってない状態でふわふわしていたし、頭がずっとピヨピヨしてたのが面白かったですね(笑)。

──終わった瞬間は、役がまだ残っている感覚がありますか?

竪山 自分の意識としては「終わった」とは思っていますが、微妙に残っているんだろうな、という気がします。

平岩享 ピヨピヨしていたという点では、僕も(笑)。というのも、最初は隼太くん1人を撮るつもりで準備していたから、急に3ショットを撮ることになって、一瞬で頭の中を回転させたんですが、途中で「これはプライベートな記念撮影だから……」と思い直して。その3ショット撮影後の隼太くんソロだったので、僕も頭がピヨピヨしていた感じがありました。ただ撮影しながら改めて感じたのは、隼太くんはプロの俳優さんなんだっていうこと。僕にとってプロの俳優さんって、例えば部屋の電気を消すように(役の)オンオフができる人かなと思っているんです。だから役からすっと竪山隼太に戻ることも、逆に「ロンの感じで」と言ったらすぐにその感じになれるのも、すごいなと思いました。

竪山 いやいや、もっとサゲてください(照れ笑い)。

平岩 あははは!

竪山 でもまた、これが悲劇だったりラストがドーンとした感じのものだったりしたら、僕も違う様子かもしれません。この役だから、というところはあると思います。

ロンは昔からよく知っている友達のような感覚

ロンのイメージで撮影に臨む竪山隼太。(撮影:平岩享)

ロンのイメージで撮影に臨む竪山隼太。(撮影:平岩享)

──ロン役を(千秋楽前日の)今日時点で286回演じられたそうですね。これほど演じた役はこれまで……。

竪山 (即答で)ないです!

──ということは、ご自身にとっても特別な役なのではないですか?

竪山 そうですね。ロンは楽しい役だし特別ではあります。ただ自分がそう思う以上に、一度卒業してカムバックしたときの周りの反応が印象的で、特別な役なんだなと自覚しました。そんな大切な役だからこそ、そこに固執したくないとも思っています。それと、この役が少し特別な理由はほかにもあって……小さい頃から「ハリー・ポッター」の原作を読んでいたから、ロンも昔からよく知っている友達のような感覚なんです。なので、戯曲を読んで一から役を立ち上げていくというよりも、「ロンだったらこうするだろうな」と考えながら演じていました。その点でも、今回は“作り方が違う”という感じがしましたね。

──平岩さんも、舞台をご覧になったそうですね。どんな印象をお持ちになりましたか?

平岩 昨年、家族で観に行ったんですけど、父親としてすごく誇らしい気持ちになったというか(笑)。家族も以前から隼太くんのことを知っているので、休憩時間のときに「こんな大舞台で隼太くんが演技しているなんてすごいね!」って家族が楽しそうに話していることがうれしかったです。また、とても印象に残っているのが、ロンがお客さんを笑わせるシーン。隼太くんは以前「ロンは、ハリーと息子の確執を緩める役だから、絶対にお客さんを沸かせる!」って豪語してたんです(笑)。実際そうなっていたのがすごいなと思いました。

竪山 まあ日によっては、キンキンに場が冷えている日もありましたけどね(笑)。

平岩・竪山 あははは!

ロンに学んだことを糧に

役が抜けて普段の様子になってきた竪山隼太。(撮影:平岩享)

役が抜けて普段の様子になってきた竪山隼太。(撮影:平岩享)

──隼太さんはじめ出演者の方たちのSNSを見ても、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」のカンパニーは、皆さん本当に仲が良さそうですね。あれだけ多くの人が関わっている大きなプロデュース公演なのに非常にアットホームな印象を受けました。

竪山 ロングランで毎日毎日顔を合わせるから、劇団みたいになっているんですよね(笑)。お互いに調子が悪いかどうかが顔を見るとわかるとか。例えばハーマイオニー役の(中)別府とは作品の立ち上げから一緒だったので、最初のうちはお互いに、ああでもないこうでもないとアドバイスし合いながら共演してきたし、後半は良い意味で信頼し合いながらのびのびと演じられたし……それもロングランの強みですよね。さらに「ハリー・ポッター」はいろいろな国で上演されているので、先日、ドイツからニコライさんという俳優さんがいらしたときも、お互いに大変さがわかるから励まし合ったりしました(笑)。

だんだん役が抜けて普段の様子になってきた竪山隼太。(撮影:平岩享)

だんだん役が抜けて普段の様子になってきた竪山隼太。(撮影:平岩享)

──長きにわたり演じてきたロンという役について、改めてどんな思いをお持ちですか?

竪山 ロンにはいろいろと勉強させてもらいました。言葉巧みというわけではなく、ある意味“ワードがない”人物なんですけど、でも心がすごくある子だから、それでハーマイオニーと相性が良いところもあるんじゃないかと思います。ハーマイオニーは仕事人間できつい性格だと思われがちなんだけど、ハーマイオニーにないところをロンは持ってるし、逆にロンにないものをハーマイオニーは持っている。お互いに補完し合っている夫婦なんだと思います。……それと実は今回、初“お父さん役”なんですよ(笑)。その点でも娘役の菜摘はありがたい存在でしたね。

もちろん大変なことはたくさんありましたが、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」には改めて感謝しかありません。ロン役を演じたことで人を笑わせるって素敵なことだと思ったし、みんながほっこりするムードメーカーって大事なんだなと実感したし、海外のカンパニーであっても、ニコライくんのように同じ大変さがわかる仲間とすぐ仲良くなれたし……それってこの作品の特徴なんじゃないかなと思います。本当に楽しかった。これからも、がんばります。

プロフィール

竪山隼太(タテヤマハヤタ)

1990年、大阪府生まれ。2000年に劇団四季ミュージカル「ライオンキング」ヤングシンバ役でデビュー後、「天才テレビくんワイド」にレギュラー出演し子役として活動。2009年に蜷川幸雄率いる演劇集団さいたまネクスト・シアターで活動。最近の出演作に「ガラスの動物園」(上村聡史演出)、さいたまネクスト・シアター最終公演「雨花のけもの」(細川洋平作、岩松了演出)、「桜の園」(ショーン・ホームズ演出)、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」ロン・ウィーズリー役など。2月に風姿花伝プロデュース vol.10「夜は昼の母」、6月から7月にかけて新国立劇場で上演される「デカローグ」プログラムEに出演する。

平岩享(ヒライワトオル)

1974年、愛知県生まれ。フォトグラファー。時代の顔となるポートレートを数多く撮影。岩井秀人が代表を務める株式会社WAREのサポートメンバー。近年は個別指導の写真塾や平岩記念写真館(家族写真撮影)にも取り組んでいる。

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舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』 @hpstagetokyo

🔔掲載情報🔔

ステージナタリーにて、
ロン・ウィーズリー役を演じ、今年11月に卒業した竪山隼太のインタビューが掲載されています。
卒業前日に #ハリポタ舞台 への思いを語ってくれました。

是非ご覧ください。

#呪いの子 https://t.co/1MxM6ZYAYm

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