中村米吉の#カワイイは世界を救う? 第10回 [バックナンバー]
中村米吉、思い出の国立劇場の“カワイイ”とパシャリ
出番直前のレアショットや、米吉×くろごちゃん×黒衣ちゃんなカワイイ1枚も
2023年10月21日 19:00 12
東京・国立劇場 大劇場で上演中の「『妹背山婦女庭訓』<第二部>」に出演中の
カワイイ米吉に“カワイイ”を探してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で読者を癒やしてきたこのコラムも、早くも10回。今回は、ついに今月末で建て替えのための閉場する国立劇場で、“カワイイ”を探してきてもらった。米吉にとって、国立劇場は思い入れ深い場所。懐かしい思い出を振り返りつつ、米吉が出会ったのは……“国立劇場でカワイイと言えば!”な、あのキャラクター。米吉は、その意外な生態にちょっと怯えつつ、橘姫姿でカワイイ1枚を撮ってくれた。
題字:中村米吉
国立劇場でカワイイと言えばこの方!
第五期歌舞伎座が再開場してから今年で10年!
もう10年、まだ10年、そんな相反する感じ方をしています。
私が本格的に役者の道を歩み始めたのは、第四期の閉場から第五期のこけら落としのちょうど狭間の時期。
つまり、私の役者としてのキチンとした学びや経験は、第五期歌舞伎座との10年間と共にあることになります。
ですが、ふとしたときに思い出されるのは、何とも言えない赤色だった楽屋の薄暗い廊下や階段の窓からの明かり、稽古場代わりに使っていたロビーの売店コーナーなど、第四期の頃の風景や独特の香り。
そんな風に思い出すようになるのかな。国立劇場のことも。
ご存知の通り、57年の歴史を積み重ねてきた国立劇場が老朽化のためもあり、この10月いっぱいでクローズし、建て直しに入ります。
楽屋の扉が木戸だったり、すごーく電波が悪かったり、空調設備がリモコンとかではなくて壁に埋め込まれたダイヤル式のようなものだったり大変に古風です。
廊下も暗~いし(笑)。
でもその古めかしい感じが、何だか私は嫌いじゃありませんでした。懐かしい感じがする、というのでしょうか。
そうそう。少し前までは楽屋の中に食堂もあったんですよ!
食券式で、カレーとかラーメン、ちょっとした定食が食べられました。
いっつも売り切れランプが点いてるうなぎもあったっけ(笑)。
正直大して美味しくはないんです。とにかく普通。おばちゃんは無愛想でちょっと怖かったし。
でも、昔から国立っていうと必ず何か食堂で食べていたんですよね。
歌舞伎公演は大体が大劇場でしたが、楽屋のテレビのチャンネルを切り替えると、隣の小劇場や演芸場の映像が見られるのも面白い時間でした。
文楽さんの公演があるときなんかはとても勉強になるし、舞踊会や邦楽の会では珍しい作品に触れられたり。
と思ったら「天城越え」などの演歌で踊る会があったりして、国立劇場ならではのいろいろな催しを、楽屋から勝手に楽しませていただいていました。
思い出だけでなく、“カワイイ”を紹介しなくてはね!
ここカワイイものあんまりないなーと、悩んでいる時に目に止まったのは揚幕。
花道と鳥屋を結ぶこの揚幕には、どの劇場にも座紋が入っています。
歌舞伎座なら鳳凰丸。浅草公会堂など公共の施設になりますと、区や市の紋章になったりします。マンホール的なね。
国立劇場の座紋は、奈良の薬師寺の楽器を奏でる楽天女の姿がモチーフにされています。
優美でたおやかな姿に、穏やかで優しいお顔、どことなく可愛らしくもあります。
出の前にはこの紋を見つめ、引っ込むときもこの紋に向かうわけです。
温かく見守ってくれていたようなこの紋にも、しばらく会えないのかと思うと寂しいですね。
そして忘れてはいけない、国立劇場でカワイイと言えばこの方!
くろごちゃん!
本名は国立くろ五郎というんだとか。
もともとは国立劇場の奈落にあった謎の卵から生まれたらしく、兄弟が6人もいるそうです。
卵から産まれたの!? 君!!
けっこう謎の生命体だったんだね……(笑)。
彼ともしばらく会う機会は無くなってしまうのかもしれません。
元気でいるんだよ!
国立劇場は古典の復活や通しでの上演、鑑賞教室、独特の意義ある公演や財産が存在します。
新たな国立劇場も今までの良さを更に深め、国の内外に誇れる立派なナショナルシアターとして帰ってきてほしいですね。
もちろん、そのときはくろごちゃんも大活躍してね!
最後になりましたが、“くろごちゃん”を撮る“黒衣ちゃん”で国立劇場とお別れしたいと思います。
こちらの“黒衣ちゃん”こと、父のお弟子さん中村蝶也くんも国立劇場の養成所出身。
国立劇場が担ってきてくれた大きな役割の1つにもなっているのが研修制度。
劇場閉場中も別の場所に移転して研修を続けていくそうです。
現在、来年度の研修生を募集中!
興味のある方はぜひ門戸を叩いてみてくださいね!
※このコラムは国立劇場の依頼で書かれたものではありません(笑)。
プロフィール
中村米吉(ナカムラヨネキチ)
1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。昨年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、昨年12月から今年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」では、ヒロイン・ユウナ役を勤めた。現在、東京・国立劇場での「『妹背山婦女庭訓』<第二部>」に入鹿妹橘姫役で出演中。10月22日にはトークイベント「『初代国立劇場さよなら記念』トークイベント 第4回 歌舞伎俳優・中村米吉と国立劇場」に登場する。11月には、東京・歌舞伎座の「吉例顔見世大歌舞伎」昼の部「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」で汲手姫、夜の部「秀山十種の内 松浦の太鼓」でお縫を勤める。来年1月には、東京・浅草公会堂で行われる「新春浅草歌舞伎」にて、第1部「本朝廿四孝 十種香」に三姫の1つ、八重垣姫役、「与話情浮名横櫛 源氏店」に妾お富役、「神楽諷雲井曲毬 どんつく」に芸者役、第2部「新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎」に召使おなぎ役で出演。2月から3月にかけては、東京・新橋演舞場でのスーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」に兄橘姫 / 弟橘姫役で登場する。11月11日には、自身のトークショーを開催。毎週水曜日にAuDeeプレミアムにて自身がパーソナリティを務める番組「中村米吉 悪魔の時間」を配信中。
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瀬多海人 @kaitos
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