中村米吉

中村米吉の#カワイイは世界を救う? 第8回 [バックナンバー]

“母”中村米吉、可愛すぎる“我が子”を紹介

お膝に乗っかり、あっち向いてホイで仲を深め、お手々をつないで舞台へ…

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8月初旬、同学年の尾上右近の勉強会「研の會」「歌舞伎舞踊特別公演」に続けて出演した中村米吉。「研の會」より「夏祭浪花鑑」では、右近演じる団七の女房・お梶として、旦那の喧嘩を華麗に仲裁し、団七が舅の義平次を殺してしまう七段目“泥場”では、若い者としてシークレット出演した。続く「京鹿子娘道成寺」では、おしゃべりな能力(のうりき)として「研の會」の歴史を紐解いたかと思えば、鮮やかに舞い踊り、さらに2階席までおみやげの手ぬぐいを投げる剛腕を見せつけた。「歌舞伎舞踊特別公演」では、「釣女」で、右近扮する大名に釣り上げられる美しい上臈に。頭に被った被衣から顔が見えた瞬間、その美しさに客席からはため息が聞こえた。

そんなカワイイ米吉に、日常で見つけた“カワイイ”を写真と共に紹介してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で読者の心を癒やすことを目的としたこのコラム。今回は“我が子カワイイ”として、「夏祭浪花鑑」で団七とお梶の息子・市松を勤めた羽鳥嘉人くんが登場する。尾上菊之丞のご子息である嘉人くんは、本作が歌舞伎作品初出演。右近が自身のSNSにアップした、右近・米吉・嘉人くんの“親子ショット”も話題になったが、米吉はとにかく嘉人くんにメロメロ! 嘉人くんとのひと夏のカワイイ思い出を明かしてくれた。

題字:中村米吉

まごうことなき、完全無欠な、圧倒的なカワイイを誇る存在…

毎月悩む当連載。
いつもいろいろなその月に合ったテーマを考えてくださる優しい編集部。
そのテーマをことごとく採用せずに独自の道を開拓してきた、ひねくれた筆者。

さすがに今回ばかりはご提案に乗っかり、“夏休み中のカワイイ”を探そうと思っていた矢先でした。
そんな殊勝な筆者の思いを覆す、カワイイの大正解に遭遇してしまったのです……!

まごうことなき、完全無欠な、圧倒的なカワイイを誇る存在。

ご紹介いたしましょう。
羽鳥嘉人くんです!

米吉(左)と、ニコニコご機嫌な嘉人くん(右)。稽古着の浴衣姿でパシャリ。

米吉(左)と、ニコニコご機嫌な嘉人くん(右)。稽古着の浴衣姿でパシャリ。

常日頃からお世話になっている尾上菊之丞お師匠さんのご子息。
先日の「研の會」の「夏祭浪花鑑」にて母子役でご一緒させていただきました。

“御年”6歳! “嘉人”の“人”をとって、通称“ヒトくん”です。
いや、改めて写真見ても本当にカワイイ。

赤ちゃんのときに一度だけ会ったことがあるような気がしますが、しっかり相対したのは今回が初めて。
歌舞伎の舞台も初めて、どころか、まだ一度しか舞台に立ったことがなかったそうなんです。
ところが! 稽古初日から大きな声で臆することなくきちんと勤めていて、大したものだとたまげさせていただきました。

可愛らしさはお顔だけではございませんよ!
お稽古初日、一度引っ込んで次の出番まで正座してお稽古をしっかり見つめているヒトくん。
ところが、だんだん足が痛くなってきたのか少しモゾモゾしてきました。

「立ってもいいよ? 椅子に座ってもいいよ?」
と聞いても、「大丈夫!」と返す気丈な彼。
とはいえ、足が痛いのに無理をしては可哀想だと思いまして、物は試しに、「じゃあお膝乗る?」と聞いてみたら、コクコクとうなずいて私のお膝の上に!
起立、着席は嫌でも、着膝はよかったのね……?(笑)
はじめましての距離感じゃないよ!?
ていうかカワイイな君!!

最初の写真はそのときに撮ったもの。だからとっても近いです。
それからあっち向いてホイで親交を深め、すっかりお友達に。

あっち向いてホイで遊ぶ、可愛すぎる2人の様子。2枚目の、ヒトくんの可愛さにちょっとにやける米吉に注目。

あっち向いてホイで遊ぶ、可愛すぎる2人の様子。2枚目の、ヒトくんの可愛さにちょっとにやける米吉に注目。

好きな物はミカン(1日に基本5個)。
そしてカーズ(ご褒美にあげたカーズのリュックを見た瞬間飛び上がるように喜んでくれました。その反応が私へのご褒美)。
苦手な物は階段(浅草公会堂は階段が多くてね)。

うんしょ、うんしょ…と階段を上がっていくヒトくんと、サポートするママ・米吉。そんな2人を先導する白シャツ姿の男性は、ヒトくんのリアルパパ・尾上菊之丞!

うんしょ、うんしょ…と階段を上がっていくヒトくんと、サポートするママ・米吉。そんな2人を先導する白シャツ姿の男性は、ヒトくんのリアルパパ・尾上菊之丞!

調子を聞くと黙ってグッと親指を立ててくれる。
パイロットスタイル。
ランドとシーならシー派で、好きな乗り物はソアリン。
ちなみにこの話を振ったら交互に好きな乗り物を発表することになり、第5位あたりからけっこう困ったのは内緒です(笑)。
目元がお父様そっくりでお化粧するとほぼミニチュア。

素顔の印象とはちょっと違う、“母子”ショット。

素顔の印象とはちょっと違う、“母子”ショット。

緊張もしたし、眠たくなったりしたこともあったし、ミカンが足りなくなったりしながらも、2日間4回の公演を立派にやり遂げました!

出番前の2人。米吉の優しい手付きと、ヒトくんの信頼しきった表情にほっこり。

出番前の2人。米吉の優しい手付きと、ヒトくんの信頼しきった表情にほっこり。

しかも、最後の回には、最後の場面のお祭りの“若い者”で緊急参戦!

“若い者”に変身した2人。お兄ちゃんたちに交じって出られることに、うれしそうなヒトくん。

“若い者”に変身した2人。お兄ちゃんたちに交じって出られることに、うれしそうなヒトくん。

シークレット出演していた私と種之助、莟玉くんと一緒にお神輿の周りを囃し立てておりました。
その掛け声の、可愛かったこと!
やっぱり子供の声ってのは周波数が違うのか、よく通るものだから、おじさんばかりのその中で一服の清涼剤のような響き。
皆様にぜひ近くで聞いてほしかった!!

同級生でもある右近さんの凄まじい情熱を感じながら、ヒトくんとの楽しく幸せな時間も過ごせた、素晴らしい夏のひと時でした。

ヒトくんを大事に抱っこして運ぶ米吉。2人の姿だけ見ると、江戸時代にタイムスリップしたかのような気持ちに。

ヒトくんを大事に抱っこして運ぶ米吉。2人の姿だけ見ると、江戸時代にタイムスリップしたかのような気持ちに。

好奇心旺盛に物事に向き合い、新たな経験や感動を享受し、日毎に興味や楽しみを最新へと更新していくのが子供さんたち。
それって私たち大人も見習わなくてはならないことかもしれません。

きっと素敵なものを見つけていくそんな日々の中で、私たちとのことなんてすぐ忘れてしまうでしょう。
と言うか、忘れてしまってどんどん新鮮な感情を更新したほうがいいんですよ。それが成長なのだから!

でも、あの初めての歌舞伎の舞台。
あの夏休みの1コマが、なんだかとても楽しかったな、面白かったなと、そんな風なおぼろげな記憶だけでも残ってくれていたら。
あなたと笑い、あなたに癒やされ、遊んでるつもりで遊ばれていた大人たちがきっと喜びます。

遊んでくれてありがとう。
いつの日かまた遊んでね! ヒトくん!

手をつないで、舞台へ。2人にとって、ひと夏の思い出ができました。

手をつないで、舞台へ。2人にとって、ひと夏の思い出ができました。

と言うわけで、大変残念ながら今回もご提案のテーマに沿うことはできませんでした。
いつの日か必ずご希望のテーマで書きますので!
諦めないでね! 編集部の櫻井さん!(笑)

プロフィール

中村米吉(ナカムラヨネキチ)

1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。昨年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、昨年12月から今年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」では、ヒロイン・ユウナ役を勤めた。8月27日まで「ドラマ・リーディング 6eme. seance『それを言っちゃお終い』」に出演中。9月には「『秀山祭九月大歌舞伎』二世 中村吉右衛門三回忌追善」昼の部「祇園祭礼信仰記 金閣寺」で、女方の大役である三姫の1つ、雪姫に挑む。毎週水曜日にAuDeeプレミアムにて自身がパーソナリティを務める番組「中村米吉 悪魔の時間」を配信中。

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