2022年がスタート。艶やかな“和”の世界をさらに堪能すべく、年の初めには歌舞伎観賞なんていかがでしょう。1月から2月にかけては、華やかさと瑞々しさたっぷりな歌舞伎公演が目白押し! その魅力的な舞台に立つ歌舞伎俳優さんたちに、今年のお雑煮を写真付きでご紹介いただきました。なるほど、こんなお雑煮をいただいたら福が来そうですよね。
中村壱太郎
──おうちのお雑煮の自慢ポイントは?
父が京都出身、母が東京出身ということもあり、元旦と2日目でお雑煮の味が変わり、2度楽しめるお雑煮時間が恒例です。元旦は白味噌に丸餅に海老芋、2日目はだし汁に角餅に鴨と贅沢できる至福のときです!
──恒例のお正月の過ごし方はありますか?
毎年1月2日に初日を迎える初春の歌舞伎公演に出演しているため、お正月も普段と変わらず、舞台に励む日々です。もう少しのんびりしたい!と、ふと思ったりもしますが、こんな世の中になると休みなく舞台に立てることのありがたみを強く感じている今日この頃でもあります。
──あいさつ回りでの思い出を教えてください。
コロナ禍に入る前は、元日に諸先輩方や踊りの先生の御宅へ新年のごあいさつに伺うのが通例でした。一度、しっかりと前もって準備していた「お年賀」の品物の熨斗紙が全て「お歳暮」となっていて、慌てて元日から営業している文房具屋さんを探して駆け込んだ苦い思い出がございます……。
──「壽 初春大歌舞伎」への意気込みを教えてください。
歌舞伎座の第二部「艪清の夢」に出演いたします。「新玉の笑いで寿ぐ」と副題のあるごとく、さまざまな隠し芸がこめられた面白き舞台となっております! 餅屋の女房として、めでたく踊り、あっ!という一芸も披露いたしますので! ぜひご観劇にいらしてください!
プロフィール
1990年生まれ。成駒家。中村鴈治郎の長男。祖父は四世坂田藤十郎。1995年に初代
中村種之助
──おうちのお雑煮の自慢ポイントは?
我が家のお雑煮は、鴨と小松菜とお餅のシンプルなお雑煮です。お餅にはたっぷりカラスミが入っています。
──恒例のお正月の過ごし方はありますか?
例年ですと、朝から新年のごあいさつ回りに出かけて夕方頃に戻り、それからお雑煮やおせちをいただくというお正月です。基本的に大晦日と元旦はお稽古がないので、「明日から舞台だ」というソワソワした気持ちで年明けを迎えております。
──あいさつ回りでの思い出を教えてください。
早くからお出かけになられる先輩がいらっしゃいまして、いつも先に着けるか出かけてしまわれるかのせめぎあいだったのですが、ある年、今年は間に合った!とインターホンを押すと「君たちのために紋付を着ました」と、僕たちを紋付袴姿で迎えてくださったことがありました。(市川)左團次のおじさんなんですけど(笑)。
──「壽 初春大歌舞伎」への意気込みを教えてください。
今年も若手で一幕を開けさせていただくことがとてもうれしいです。
僕は、今が旬の江間(北条)義時を勤めさせていただきます。
だんまりに陽の光が差すように、お客様の1年が明るい良い1年になることを願って、精一杯勤めます。
プロフィール
1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村又五郎の次男。1999年に初代
中村米吉
──おうちのお雑煮の自慢ポイントは?
澄んだおつゆに、四角い焼餅、小松菜、お代わりをすると鴨が入ります。
三が日の間1つずつお餅の数を増やして、“もち上がる”よう縁起を担ぎます。
──恒例のお正月の過ごし方はありますか?
元旦は家族でお屠蘇やおせち、お雑煮でお祝いしたあと、スーツに着替え、諸先輩やお世話になってる方々のお宅へあいさつ回りに伺い、先祖の眠るお墓へもお参りします。
ただ、昨年から、コロナ禍のためにあいさつ回りは自粛中です。
のんびりとした元旦はありがたいと言えばありがたいですが、やはり寂しいですね。
──あいさつ回りでの思い出を教えてください。
子供の頃、朝から車に乗り続けで、くたびれ果てていたのか、伺った先でいただいたお薄とお菓子がやけに美味しく感じたのを覚えています。
また、伺う先々でお年玉がいただけるもんですから、ホクホクとした気持ちになりましたよ。
車に乗ってすぐ中身を確認したりして、親に怒られたもんです(笑)。
──「壽 初春大歌舞伎」への意気込みを教えてください。
昨年のお正月に引き続き、若手のみんなで一幕開けさせていただけること、本当にありがたく思っています。
舞踊、だんまり、立廻り、六方など、歌舞伎ならではのエッセンスがたくさん織り込まれた華やかでおおらかな作品です。
約40年ぶりの上演となる、珍しい作品でもありますので、ぜひご覧くださいませ!
プロフィール
1993年生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に
中村虎之介
──おうちのお雑煮の自慢ポイントは?
正月は大阪のホテルで過ごすことが多いのですが、(祖母の)扇千景特製の“魔のだし”を使った(笑)、豪華なお雑煮を家族全員でいただきます。大量の材料を買ってきて、お風呂場で作り始めるのですが……「普通はお風呂でお雑煮作らないよな」って思っています(笑)。
──恒例のお正月の過ごし方はありますか?
大阪のお初天神(編集注:露 天神社。近松門左衛門「曽根崎心中」にゆかりがある)に行っています。12月31日が祖父(坂田藤十郎)の誕生日だったこともあり、大晦日から正月まで、家族みんなで過ごします。かずくん(中村壱太郎)も同じことを言うんじゃないでしょうか?
──あいさつ回りでの思い出を教えてください。
実は大阪にいるとあいさつ回りがないため、(あいさつ回りには)1・2回しか行ったことがありません。思い出としては、(坂東)玉三郎さまのお家にごあいさつに伺ったとき、マンションの中でお部屋を見つけられなくて……1時間くらい建物の中でお部屋を探していた記憶があります(笑)。
──渋谷・コクーン歌舞伎 第十八弾「天日坊(てんにちぼう)」への意気込みを教えてください。
コクーン歌舞伎には今回で2度目、「天日坊」には初めての出演となります。「天日坊」は、コクーン歌舞伎の中でも一際ぶっとんでいて、イレギュラーな演目という印象があり、いち歌舞伎ファンとして、エネルギッシュですごく良い作品だと思っています。コクーン歌舞伎の集大成として、お客様には作品を通してパワーを感じていただきたいですね。
プロフィール
1998年、東京都生まれ。成駒家。三代目中村扇雀の長男、四代目坂田藤十郎の孫。2006年に初代
中村鶴松
──おうちのお雑煮の自慢ポイントは?
我が家では毎年味付けはお味噌でいただいております。中身の野菜は具だくさんで里芋や人参、ほうれん草に切り餅を入れて、ほかのご家庭のものと比べて割とボリュームのあるお雑煮だと思います。
──恒例のお正月の過ごし方はありますか?
毎年元旦は、お昼頃から(中村)勘九郎の兄の家に一門みんなで伺っております。中村屋の特色としては、投扇興というお扇子を使った遊びを恒例行事で行うのが通例です。1月2日には、1月のお芝居の初日が来てしまうので、何も考えずのんびりお正月を過ごしたことはないです。
──あいさつ回りでの思い出を教えてください。
あいさつ回りには行ったことがないのでわかりませんが、このような習慣は歌舞伎役者ぐらいなものなのではないでしょうか。皆様お年賀を持ってあいさつに伺われていて、本当に1年を通して休みがないことを痛感致します。
──渋谷・コクーン歌舞伎 第十八弾「天日坊(てんにちぼう)」への意気込みを教えてください。
若者ならではの疾走感と超人的パワーです。コクーン歌舞伎では今までさまざまな演目が上演されていますが、一番体力と精神をすり減らす演目だと皆さまおっしゃっています。既存の型にとらわれないNEW「天日坊」、是非ご覧ください。
プロフィール
1995年、東京都生まれ。中村屋。2005年に十八世中村勘三郎の部屋子になり、二代目
※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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mika_takemura @mikatze78
1年前の記事。歌舞伎俳優さん達がおうちのお雑煮を紹介していて、https://t.co/mdMgWeG7s7白味噌とか餅の形とか・・東西それぞれの違いより、何よりウッときたのが、
中村鶴松さんが(お正月の慣例の)あいさつ回りの思い出を問われて、「あいさつ回りには行ったことがない」と答えていたことだった。