稽古中のアーティストたちが稽古場でのファッションをダイアリー形式で紹介する「ケイコレ」。稽古着姿と共に、ひそかに憧れている稽古場のおしゃれ番長、いつか使いたいと思っている稽古グッズ、現在稽古中の作品の見どころなどをこっそりと教えてもらう。
第15回の「ケイコレ」アーティストは、劇団・柿喰う客の看板俳優の1人である
Day1
色は基本、黒いものしか着ません。裏方時代の名残と汚れが目立たないからです。この日は所属劇団・柿喰う客のTシャツにPUMAのセットアップです。昔飼っていた猫ちゃんがPUMAのロゴにそっくりで、それ以来、稽古着のブランドはPUMAで統一しているのです。でも靴はNIKE。劇団Tシャツを着ているときは大体気合いが入っているときですね。
Day2
敬愛するミュージシャン、向井秀徳氏の展示イベントでゲットしたTシャツ。パンツはやはりPUMAですがスウェット生地。求められてもいないのに地べたをはったりひざを付いたり床を転がったりする演技プランを持ち込むことが多く、スウェット生地はすぐに破れたり穴が開いたりします。なのでこの格好のときは大人しめのお芝居の稽古のときが多いです。のどを大切にしたいときはネックウォーマー必須。筋肉を温めて声の通り道を拡げてあげる目的です。足元は雪駄。暑いのか寒いのかわからん格好ですね。
Day3
リラックスして稽古に挑むときはこんな感じです。上下共にゆったりした着心地のものは身に着けていて非常に楽ですね。サルエルパンツは主宰している人間集団・カスガイの仲間たちが誕生日にくれたもの。破れたところを繕い、ちぎれた腰紐を替え、大切に大切に今まではいてきています。レッグウォーマーはダンサーの森山開次さんの影響で、足首は絶対冷やしたらダメだという教えを守ってはいています。そしてついに裸足。矛盾。基本は靴を履きますが許していただける現場では極力裸足です。理由はただ一つ、一番機動力が高いからです。けがをする可能性が多分にあるので良い子はまねしないでください。
稽古着におけるこだわりは?
気合いが入るか否か、です。
例えば劇団Tシャツや大切な仲間からもらったもの、これらにはとてつもない思い入れがあります。身に着けていると自分は独りで闘っているんじゃない、仲間がいて帰る場所があるんだってことを意識させてくれます。それだけでがんばれるのです。
「稽古着おしゃれだな!」と思う共演者は誰ですか?
竹中直人さんです。
まず第一にスタイルがものすごくいい! そのうえでそれを際立たせるタイトな、でもパッチワークによる遊び心にあふれたジャケットとパンツを稽古着にしていらっしゃって焦がれます。
いつか手にしたい憧れの稽古アイテムは?
いつか機会があったら、自分で稽古着をデザインして作ってみたいと思っています。上から下まで、着心地や機能性、できれば形やデザインに至るまですべて自分仕様の稽古着。
テンションぶち上がること間違いなしです。
「夜は短し歩けよ乙女」で特に注目してほしいのはどんなシーン?
人間同士の数奇なご縁の趣深さ、ですかね。
こんなご時世になり、表面上は人間同士のつながりがどんどん希薄になって、密ではなく個、ともすれば集団ではなく孤独を推奨されるようになってきて、それがまるで正しいこと、人間の理のように錯覚しがちですが、本来はやはり物理的にも精神的にも人は密接に関わり孤独ではないことを分かち合うべきだと思っています。この作品はその核の部分“人は独りではない”ことをこれでもか!と、しかも愉快痛快に突き付けてくれるので、もしご都合が合えば、そして劇場に足を運んでもいいかもと思ってもらえるようでしたらぜひ共有していただきたいです。キャスト、スタッフ一同、万全の状態で最高の演劇をご用意してお待ちしておりますので。
プロフィール
1985年、東京都生まれ。俳優・演出家。劇団・柿喰う客の中心メンバーで、人間集団・カスガイの主宰。劇団内外で活動し、主な劇団外の出演作に「夢の裂け目」、「Take Me Out 2018」、「相対的浮世絵」、PARCO劇場 オープニング・シリーズ「ゲルニカ」など。今夏はNHK土曜ドラマ「ひきこもり先生」、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」“東京編”への出演が控える。そのほかテレビドラマでの出演作に「サギデカ」「恋する母たち」など。6月4日にフジテレビ「『ヨーロッパ企画のYou宇宙be』特別編 舞台『夜は短し歩けよ乙女』みどころ春夏秋冬SP~Ver.2~」が放送予定だ。
バックナンバー
玉置玲央のほかの記事
タグ
ステージナタリー @stage_natalie
ケイコレ〜稽古着ファッションをお届け〜 Vol.15 玉置玲央の“独りじゃない”稽古着
https://t.co/8kwbvVO2Of https://t.co/pV1Q7OIk42