玉置玲央

ケイコレ〜稽古着ファッションをお届け〜 Vol.15 [バックナンバー]

玉置玲央の“独りじゃない”稽古着

演技プランを持ち込んでは稽古着に穴が開く

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稽古中のアーティストたちが稽古場でのファッションをダイアリー形式で紹介する「ケイコレ」。稽古着姿と共に、ひそかに憧れている稽古場のおしゃれ番長、いつか使いたいと思っている稽古グッズ、現在稽古中の作品の見どころなどをこっそりと教えてもらう。

第15回の「ケイコレ」アーティストは、劇団・柿喰う客の看板俳優の1人である玉置玲央。劇団の活動と並行し、自身でプロデュースユニット・カスガイを立ち上げ、近年は映像での活動も増えるなど、柔軟かつ縦横無尽の活躍を見せる。玉置と言えば、その身体能力の高さ、そして舞台上でにじみ出る“アツさ”が魅力。玉置の芝居の熱量に、心を動かされた観客も多いことだろう。そんな彼の“アツさ”は、舞台の外でも期待を裏切らず、編集部に寄せられたコメントは「ケイコレ」史上、最も長文なものとなった。6月6日に初日を迎える「夜は短し歩けよ乙女」では、願いごとがかなうまでパンツを替えないパンツ総番長役に挑む。3日間にわたるスタイリッシュな稽古着姿を、アツい文章と共にお届けしよう。

Day1

色は基本、黒いものしか着ません。裏方時代の名残と汚れが目立たないからです。この日は所属劇団・柿喰う客のTシャツにPUMAのセットアップです。昔飼っていた猫ちゃんがPUMAのロゴにそっくりで、それ以来、稽古着のブランドはPUMAで統一しているのです。でも靴はNIKE。劇団Tシャツを着ているときは大体気合いが入っているときですね。

柿喰う客のめこちゃんTシャツが黒のセットアップに映える。

柿喰う客のめこちゃんTシャツが黒のセットアップに映える。

Day2

敬愛するミュージシャン、向井秀徳氏の展示イベントでゲットしたTシャツ。パンツはやはりPUMAですがスウェット生地。求められてもいないのに地べたをはったりひざを付いたり床を転がったりする演技プランを持ち込むことが多く、スウェット生地はすぐに破れたり穴が開いたりします。なのでこの格好のときは大人しめのお芝居の稽古のときが多いです。のどを大切にしたいときはネックウォーマー必須。筋肉を温めて声の通り道を拡げてあげる目的です。足元は雪駄。暑いのか寒いのかわからん格好ですね。

PUMAを着こなす玉置。雪駄をセレクトする様子に“すぐに動ける”心意気がうかがえる。

PUMAを着こなす玉置。雪駄をセレクトする様子に“すぐに動ける”心意気がうかがえる。

Day3

リラックスして稽古に挑むときはこんな感じです。上下共にゆったりした着心地のものは身に着けていて非常に楽ですね。サルエルパンツは主宰している人間集団・カスガイの仲間たちが誕生日にくれたもの。破れたところを繕い、ちぎれた腰紐を替え、大切に大切に今まではいてきています。レッグウォーマーはダンサーの森山開次さんの影響で、足首は絶対冷やしたらダメだという教えを守ってはいています。そしてついに裸足。矛盾。基本は靴を履きますが許していただける現場では極力裸足です。理由はただ一つ、一番機動力が高いからです。けがをする可能性が多分にあるので良い子はまねしないでください。

玉置の仲間への思いがギュッと詰まった、リラックス稽古着。公演ポスターの前で写真を撮る気遣いも素敵。

玉置の仲間への思いがギュッと詰まった、リラックス稽古着。公演ポスターの前で写真を撮る気遣いも素敵。

稽古着におけるこだわりは?

気合いが入るか否か、です。

例えば劇団Tシャツや大切な仲間からもらったもの、これらにはとてつもない思い入れがあります。身に着けていると自分は独りで闘っているんじゃない、仲間がいて帰る場所があるんだってことを意識させてくれます。それだけでがんばれるのです。

「稽古着おしゃれだな!」と思う共演者は誰ですか?

竹中直人さんです。

まず第一にスタイルがものすごくいい! そのうえでそれを際立たせるタイトな、でもパッチワークによる遊び心にあふれたジャケットとパンツを稽古着にしていらっしゃって焦がれます。

いつか手にしたい憧れの稽古アイテムは?

いつか機会があったら、自分で稽古着をデザインして作ってみたいと思っています。上から下まで、着心地や機能性、できれば形やデザインに至るまですべて自分仕様の稽古着。

テンションぶち上がること間違いなしです。

「夜は短し歩けよ乙女」で特に注目してほしいのはどんなシーン?

人間同士の数奇なご縁の趣深さ、ですかね。

こんなご時世になり、表面上は人間同士のつながりがどんどん希薄になって、密ではなく個、ともすれば集団ではなく孤独を推奨されるようになってきて、それがまるで正しいこと、人間の理のように錯覚しがちですが、本来はやはり物理的にも精神的にも人は密接に関わり孤独ではないことを分かち合うべきだと思っています。この作品はその核の部分“人は独りではない”ことをこれでもか!と、しかも愉快痛快に突き付けてくれるので、もしご都合が合えば、そして劇場に足を運んでもいいかもと思ってもらえるようでしたらぜひ共有していただきたいです。キャスト、スタッフ一同、万全の状態で最高の演劇をご用意してお待ちしておりますので。

「夜は短し歩けよ乙女」ビジュアル

「夜は短し歩けよ乙女」ビジュアル

プロフィール

1985年、東京都生まれ。俳優・演出家。劇団・柿喰う客の中心メンバーで、人間集団・カスガイの主宰。劇団内外で活動し、主な劇団外の出演作に「夢の裂け目」「Take Me Out 2018」「相対的浮世絵」PARCO劇場 オープニング・シリーズ「ゲルニカ」など。今夏はNHK土曜ドラマ「ひきこもり先生」、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」“東京編”への出演が控える。そのほかテレビドラマでの出演作に「サギデカ」「恋する母たち」など。6月4日にフジテレビ「『ヨーロッパ企画のYou宇宙be』特別編 舞台『夜は短し歩けよ乙女』みどころ春夏秋冬SP~Ver.2~」が放送予定だ。

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