舞台とわたしの新しい日常

舞台とわたしの新しい日常 Vol.3 [バックナンバー]

西川大貴の、稽古着披露

「厚すぎもせず、薄すぎもせず」

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上演や観劇の尺度がガラリと変わった今年の夏。アーティストたちは舞台とどのように向き合っているのか。このコラムでは公演が待たれる俳優やクリエイターに“とっておきの稽古着”姿を披露してもらい、今の思いを率直に語ってもらう。

第3回に登場するのは、“ミュージカルを寝床に育った”かのようなアーティスト、西川大貴。11歳のときにミュージカル「アニー」でデビュー以降、繊細な演技力と確かな技術で作品を支え続けてきた彼は、クリエイターとしての才能も早くから芽吹かせた。脚本・演出家、歌手などの活動のほか、昨年は若手を率いて“日本発のオリジナルミュージカル”を掲げた新作を創作するなど、人を集め、モノを作るプロデューサー的な立場でも業界を見渡している。現在、力を入れているYouTubeの「ミュージカルch《クロネコチャンネル》」(以下「クロネコチャンネル」)では、視聴者をクスっと笑わせるものから、「ほう!」とうなずかせるものまで、西川の鋭い視点を生かしたユニークな動画が並ぶ。そんな彼の稽古着は、同チャンネルでおなじみのオリックス・バファローズのユニフォームだ。さらに、「実は……」と思い出の品も見せてくれた。

西川大貴

うっすらと見える、銀色の「アニー」ロゴ。ジョエル・ビショッフの新演出に変わったタイミングのもので、 “century twenty one”の文字が添えられている。

うっすらと見える、銀色の「アニー」ロゴ。ジョエル・ビショッフの新演出に変わったタイミングのもので、 “century twenty one”の文字が添えられている。

モノ持ちの良さは愛情の深さ?ビンテージ稽古着

舞台の稽古では、初舞台のときに作った、ロゴ入りパーカーを着ることが多いです。出演者ならどんな服にもロゴを入れてくれるというので、ユニクロの少し大きめなサイズのものにプリントしてもらって。絶妙に厚すぎもせず薄すぎもせず、いまだに着てる(笑)。冬でも夏でも着られるので、気に入っています。ただ、最近は稽古もないので、オリックス・バファローズのユニフォームが“稽古着兼本番着”。昔いた西川拓喜選手(編集注:2013年から2014年まで在籍)のもので、クロネコチャンネルで真面目なテーマを扱うときは、野球選手の入団会見をイメージして、ワイシャツにネクタイ、ユニフォームできちんと感を出しています。いつかクロネコチャンネルのユニフォームも作りたいですね。

神戸のB-WAVEで購入した西川拓喜選手のレプリカユニフォーム。育成時代のもので背番号は117。

神戸のB-WAVEで購入した西川拓喜選手のレプリカユニフォーム。育成時代のもので背番号は117。

クロネコチャンネルを始めたのは新型コロナウイルスの状況がきっかけですが、構想は前からあって、機材を調べたりしていました。俳優の個人的な部分は見たくない方もいるのはわかるし、意見を発信することがどこかタブーになっている雰囲気があるけど、“中の人”が発信することこそ大事だと思うんです。コロナのことがあって、「未来なんて誰にもわからないし、需要はないかもしれないけどやろう!」と。本来は、“俳優が舞台を観て、その感想や作品にまつわる面白いネタ、見どころを伝える”ことがやりたかったのですが、今はできない。形を変えて始めたら、すごい速さで回り出しました。ニッチなチャンネルとはいえ、世間の興味・関心やトレンドは1カ月、1週間単位で移り変わるので、最初の頃の企画の焼き直しではダメ。YouTubeっぽさや見やすさなど、こだわるポイントも変わってきました。もともとお客さんに舞台を多角的な視点を持って楽しんでもらいたいという思いでスタートさせたので、劇場が動き出してからが楽しみですね。

「クロネコチャンネル」より、野球選手のようなポーズを決める西川。チーム体制で作る同チャンネルでは“チャンネルホスト”を務める。主に企画・構成を担当。

「クロネコチャンネル」より、野球選手のようなポーズを決める西川。チーム体制で作る同チャンネルでは“チャンネルホスト”を務める。主に企画・構成を担当。

「クロネコチャンネル」より、河原でほほ笑む西川。来たるライブでは、広めのリハーサル室を押さえており、料金の高さが悩ましい。「逆手に取ってそこで動画の1本でも撮ろうかと」(西川)と思案中。

「クロネコチャンネル」より、河原でほほ笑む西川。来たるライブでは、広めのリハーサル室を押さえており、料金の高さが悩ましい。「逆手に取ってそこで動画の1本でも撮ろうかと」(西川)と思案中。

自粛期間中、脚本を執筆しようとしても、気持ちの整理がつかず、うまくいかなかったんです。そんな中、唯一書けた詞があって。8月末のライブ「303030」ではその新曲を披露します。配信で交流したり、クロネコチャンネルを始めたからこそできるものにしたいと思っていますが、正直、すごくドキドキしていて。こんなに長い時間自宅にいて、再びスポットライトを浴びて歌えるのか。怖さや喜び、切なさ、自分の中から何が湧き上がってきて、またそれを制御できるのか……感情がおかしなことになるんじゃないかって(笑)。僕もお客さんも無意識のうちに変わった部分があるはず。そういう変化をポジティブに捉えられるようなライブにできたらと思います。もちろん、変わらない部分を見つけてホッとしてもらっても、うれしいです。

西川のお出かけスタイルは、マスク、メガネにキャップ。最近は麻などサラッと風通しの良いものを好んで着ている。

西川のお出かけスタイルは、マスク、メガネにキャップ。最近は麻などサラッと風通しの良いものを好んで着ている。

プロフィール

1990年、東京都出身。俳優・アーティスト・演出家・脚本家・タップダンサー。幼少期からタップダンスを始め、2001年にミュージカル「アニー」でデビュー。以降、「ボーイ・フロム・オズ」「ミス・サイゴン」「レ・ミゼラブル」「マタ・ハリ」などミュージカルを中心に活躍し、出演作は枚挙にいとまがない。2013年には音楽ユニット・かららんを始動。近年は脚本や演出も手がける。主な作品に、Artist Company 響人「お月さまへようこそ」(出演)、「オリジナル・ミュージカル『DAY ZERO』」(出演)、「BACKBEAT」(出演)、ミュージカル「(愛おしき)ボクの時代」(脚本・演出)など。2020年は「山崎育三郎 LIVE TOUR 2020」に出演。また、「ミス・サイゴン」でトゥイ役を演じるはずだったが、新型コロナウイルスの影響で公演中止に。誕生日である8月30日にはライブ、クロネコチャンネル presents「303030」が控える。

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