舞台とわたしの新しい日常

舞台とわたしの新しい日常 Vol.2 [バックナンバー]

小沢道成の、稽古着披露

「稽古Tシャツは無駄に楽しく」

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8月、定員の半分以下に座席数を減らしながらも、多くの劇場が徐々に動き始めている。感染予防のために会場では声を抑えつつ、アーティストたちに盛大な拍手を送った観客も多いのでは。フェイスシールドやビニールカーテンも見慣れてきた昨今、劇場や公演に関わる人々はどのような“新しい日常”を歩んでいるのか。

このコラムでは公演を控えるアーティストが“とっておきの稽古着”を披露。また、コロナ禍での舞台への思いから、その人の新しい舞台と稽古と日常をのぞいていく。第2回は、虚構の劇団メンバーであり、自身の主宰するEPOCH MANでは作・演出・美術・出演も務める小沢道成が登場。小沢はあふれる“演劇愛”を胸に、表現の可能性を探り続ける舞台人だ。今年1月、一人芝居「鶴かもしれない2020」で彼は、3台のラジカセから流れる自らの声と“共演”。10着の着物を次々に着替えながら、得意の歌とダンスを交えて「鶴女房」を思わせる女性の内面を描き出した。また小沢は6月、いち早く始動した東京・本多劇場の無観客配信「DISTANCE」に参加。続く8月の「DISTANCE-TOUR-」に向け稽古の真っ最中だった小沢は、はじける笑顔と、彼に負けず劣らず破顔するネコが印象的なTシャツを披露してくれた。

小沢道成

笑うネコTシャツと共に、いざ稽古場へ。

笑うネコTシャツと共に、いざ稽古場へ。

背中には、鋭いまなざしで見つめるトラが。

背中には、鋭いまなざしで見つめるトラが。

“生”の可能性を感じた無観客配信、ネコ×トラTシャツを着る意味は……?

6月2日、演劇人生で初めての経験をしました。お客さんがいない場所で、誰に向けて、何のためにやればいいのか、できれば味わいたくない感情です。しかし、不思議と“生”という力はすごいもので、同じ場所にいなくても、同じ時間にどこかで誰かが観ているということが、僕にいつもと同じ、もしくは今までにない緊張をもたらしました。それは、演劇に似た“生”であることの可能性を大きく感じた瞬間でもあります。でも、それでも、同じ場所で体験するものにはかなわないなあと思う自分もいたわけです。

今も自主ステイホーム期間が続いています。僕の日常は稽古場へ行き、劇場で娯楽を作ることです。そのためには、まず健康でいなければいけません。実に難しいことです。

友人と会うことも、外食をすることも、今はできません。周りの大好きな人たちのために、そして、劇場という場所をなくさないためには、まずは健康で居続けることしかできないのです。

しかし、体の健康の問題だけじゃなくなってきました。こんな新しい形の日常が続くと、心が壊れてしまいそうにもなります。きっと多くの人が抱えているものなのかもしれません。

そんなときに、少しでも心が躍るようなもの を、娯楽をお見せできますように。そんな思いを抱きながら、今日も無駄に楽しい稽古Tシャツを着て稽古場へ出かけます。

プロフィール

1985年10月17日生まれ、京都府出身。2008年、約2000人からオーディションで選出され、鴻上尚史が主宰する虚構の劇団に旗揚げメンバーとして参加。2013年には自身の演劇プロジェクト・EPOCH MANを始動し、ほぼすべての作品で作・演出・美術・出演を担う。2014年度の佐藤佐吉賞では、最優秀助演男優賞を受賞した。近年の主な出演作にM&Oplaysプロデュース「皆、シンデレラがやりたい。」「新感線☆RS『メタルマクベス』disc1disc3」など。2020年6月には東京・本多劇場の無観客上演・配信企画「DISTANCE」、8月には「DISTANCE-TOUR-」に参加した。9月にキ上の空論「脳ミソぐちゃぐちゃの、あわわわーで、褐色の汁が垂れる。」、2021年1月に、魔夜峰央のマンガを原作とした2.5次元作品「舞台『パタリロ!』~霧のロンドンエアポート~」への出演が控える。

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えん @roseyWelt

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