野性爆弾のザ・ワールド チャネリング シーズン2|小籔千豊が語る野性爆弾 本当のブレイクはこれから

野性爆弾のロケクイズバラエティ「野性爆弾のザ・ワールド チャネリング」シーズン2がAmazon Prime Videoにて配信中。セオリーにとらわれないロケスタイルが人気を博し、この番組をきっかけに彼らの虜になる人も多い。お笑いナタリーではかつて放送されていた「野爆テレビ」のロケで「死ぬほど笑った」という小籔千豊を迎え、野性爆弾の魅力と「ワールド チャネリング」の見どころを語ってもらった。

取材・文 / 狩野有理 撮影 / 玉井美世子

吉本新喜劇への誘いを断ってくれてよかった

──小籔さんと野性爆弾はよしもとの養成所NSC大阪校の先輩後輩の間柄で、共演も多く親しい印象があります。若手の頃にはどんな交流があったか教えてください。

僕は野性爆弾の1つ上の12期生で、ロッシーは一番一緒にいた後輩ですね。僕と土肥ポン太、シャンプーハットこいでの4人でよく遊んでいました。くっきーとはイベントの打ち上げで一緒になっていたくらい。でも1回、僕が新婚のときにくっきーの家でテーブルを作ったことがあります。17年くらい前のことですけど、そのテーブル、今でも家で使っているんですよ。

小籔千豊

──デビュー当時の野性爆弾はどんな印象でしたか? 「同期の中で一番面白い」と言われていたとか。

13期の芸人に「同期で一番面白いのは誰か」と聞いたら全員が「野性爆弾」と答えたらしいんです。それで僕らの中でも「13期の1位は野性爆弾」っていうのは共通認識になっていました。僕はあまりそういう情報に興味がないんですけど、その野性爆弾っていう奴らのネタを見たら、まあクレイジーコントで(笑)。なるほどな、と。これを1位と認めている13期って素敵やなと思いました。普通、正統派とかすぐに売れそうな芸人を1位って言いそうなもんじゃないですか。ましてやブラックマヨネーズとか次長課長とか(チュートリアル)徳井とか、スター選手がたくさんいる中で。でも13期の芸人たちはあのクレイジーコントのコンビを1位だと言った。だから野性爆弾含め13期全体の印象として、ええ仲間なんやろうなって思いましたね。

──ご本人たちも芸人仲間が笑ってくれたから今まで芸人を続けてこられたということをよくおっしゃっていますよね。

野爆を「おもんない」って言っている芸人を僕は見たことがないです。舞台ではようスベってるって言われていましたけど、客席も全員がおもんないと思っていたわけではないんですよ。絶対に何人かはめっちゃ笑ってました。舞台袖の芸人も爆笑でしたし、笑いがほんまにゼロだったことはないと思います。そういう意味では一番スベってない芸人なんじゃないですか?

──それでもお客さんに受け入れられるまでには時間がかかったと思います。最近の野性爆弾の活躍を小籔さんはどうご覧になっていますか?

デビューして数年で売れるとは到底考えられなかったですけど、爆発力だけはすごかったからいつ売れてもおかしくないとは思っていて、今の状態はそこまで不思議じゃないですね。よかったなと思います。

──今ほど仕事がなかった時代に腐っていた様子はなかったですか?

昔、くっきーがこの世界をやめようとしてるっていうのは何回か聞いたことがあります。東京に行くというのも、千鳥とかダイアンみたいに大阪で活躍してさらにステップアップするためというより大阪にいてもこれ以上仕事がないから、っていうパターンだったみたいで。僕の余計なお世話なんですが、くっきーは結婚もしていたし、お金が必要なんかなと思って「吉本新喜劇に入らへんか?」って勧めたことがあるんです。今までのド貧乏からは脱出させられる自信があったので。でも全然、くっきーは「僕は東京行きます」と。そらそうやろなと思いました。新喜劇の枠に収まるわけがないですから。今こうしてくっきーがやりたいことをやって、一番理想とする売れ方をしているのを見ると、よう断ってくれてたなと思います。

絶対に自分のスイングを変えない

「野性爆弾のザ・ワールド チャネリング」シーズン2より、野性爆弾。

──小籔さんは以前、野性爆弾を元プロ野球選手のサミー・ソーサに例えて「構えこんな(めちゃくちゃ)やけど、インパクトの瞬間は誰よりも基礎通り」と表現していらっしゃいました。当初からそういう芸風だったのでしょうか。

昔はインパクトの瞬間も基礎通りではなかったです(笑)。本当にクレイジーなこと、自分がやりたいことをやっていました。僕はミートバッター系で「ウケなければならない」と思っているところがあって、絶対に当てに行くんです。ヘロヘロになりながらでも、前かがみになってアゴ出しながらでも、空振りだけは避けたくて。でも野爆はバットがどれだけボールから離れていようが、外角が来ようが内角が来ようが、絶対に自分のスイングを変えない。それがカッコええなと思います。

小籔千豊

──どんな見てくれでも当てることを大事にするか、空振りするとしても自分のスイングを貫くことを大事にするか。タイプが違うんですね。

僕は商業ベースなんです。野爆を見ていると、「僕が世に送り出したい作品はこれなんです」ってお金じゃないところで戦っている感じがして、自分が恥ずかしくなるときもありますね。

──そんな野性爆弾が“基礎通り”のインパクトをするようになった、変化のきっかけは何かあるのでしょうか。

昔はめちゃくちゃ破壊的なことを言うたり、深海魚みたいなボケして客席をキョトンとさせてたりしたんですけど、今はそこまでお客さんを置いてけぼりにしていないですよね。年齢を重ねたからなのか家庭を持ったからなのか……なんやろうなあ。ただ何かこれというきっかけがあって自分のスイングを変えたっていうことはないと思います。時代が野爆に合ってきた部分と、もしかしたら野爆もちょっとだけ僕ら一般人のほうに下りてきた部分もあるのかもしれませんね。

スタッフ全員が笑っている

──「野爆のロケを見て死ぬほど笑った」という小籔さんですが、最初に見た野性爆弾のロケがどんなものだったか覚えていますか?

うめだ花月(野性爆弾らがレギュラー出演していた大阪の劇場)でまさに「ワールド チャネリング」みたいな番組をやっていたんです。

──ヨシモトファンダンゴTVの「野爆テレビ」ですね。

「野性爆弾のザ・ワールド チャネリング」シーズン2より、くっきー。
「野性爆弾のザ・ワールド チャネリング」シーズン2より、ロッシー。

舞台上で、野爆が撮影してきた商店街ロケのVTRを見せられるんですけど、もうたまらんくらいむっちゃおもろくて。それが「ワールド チャネリング」ではAmazonさんの力を借りてパワーアップした形でロケが行われていて、“今、一番見てほしい度”が高いバラエティとしては、自分が出ている以外では「ワールド チャネリング」が1位かもしれないですね。

──10年以上前の「野爆テレビ」で、すでに「ワールド チャネリング」のようなロケをやっていたんですか?

そうです。基本軸はなんにも変わっていません。なんですけど、間のとり方とか、細かい部分が洗練されていって、みんなの口の中に入るようになっていますよね。これまでは「うまいけど骨が多くて食べにくかった」というか(笑)。今は味そのままで、だいぶ小骨を取ってくれた状態でみなさんのところに届けられているから、安心して食べられるようになっているのかなと思います。それをくっきーが意識したのか、意識せずに対応できるようになっていったのかはわかりませんけど。

──確かに、やっていることは以前と変わらず攻撃的でも安心感を持って見ていられます。

あとこの番組って、スタッフが全員笑っているんですよ。スタッフ全員が野爆のことを好きで、愛を持って番組を作っているっていうのがすごくいいなと思います。その雰囲気も観ている人に伝わるんでしょうね。くっきーに好きなことをやらせて、それを優秀なスタッフたちがちゃんとパッケージにして視聴者に届けようとしているんだと思います。