3時のヒロイン福田、Aマッソ加納、ラランド・サーヤが出演している深夜バラエティ「トゲアリトゲナシトゲトゲ」(テレビ朝日で毎週月曜26:16~放送中)から短編映画「ウワキな現場」が誕生した。そのきっかけは映画「カメラを止めるな!」でも知られる上田慎一郎監督が「トゲトゲ」のファンだったこと。上田監督がメガホンを取り、「トゲトゲ」メンバーの3人が本格的な映画撮影に臨んだ。お笑いナタリーは撮影終了後、3人と上田監督に話を聞いた。なお「トゲトゲ」および「ウワキな現場」はTELASA(テラサ)で楽しめる。
取材・文 / 成田邦洋撮影 / 小坂茂雄
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「ウワキな現場」あらすじ
ミキ(3時のヒロイン福田)と佐藤ユウタ(浅香航大)が路上でキスをしている。サヤカ(ラランド・サーヤ)は離れた場所から、そんな2人をスマホで盗撮していた。後日、ミキとアイカ(Aマッソ加納)にサヤカが「ちょっとやりたいネタを思いついて」と、とある台本を手渡す。どうやら彼女たちはお笑いトリオを組んでいる様子だ。その台本に目を落としたミキは「浮気現場」というタイトルを目にして……。
3時のヒロイン福田×Aマッソ加納×ラランド・サーヤ インタビュー
福田「どうやった?私のキス」
──皆さんは以前「トゲトゲ」の中で「等身大の恋愛ドラマ」を希望されていました。「ウワキな現場」の脚本を最初に読まれた際の感想は?
3時のヒロイン福田 天才だなと思いました。上田監督、ホンマに「カメラを止めるな!」の人なんやって。台本読んで、やっぱすごいなと。衝撃の連続になっていると思います。
Aマッソ加納 書いていただいたものにがんばってついていこうという気でいたんですけど、あがってきた台本を見たら、めちゃくちゃやりやすいように書いていただいていました。特に私の役はホンマに、そのままのしゃべり方。粗野な立ち振る舞い、口調を含めて私がそのままできるように書いてもらっていた。3人のキャラクターの特性が短い中に表れていて、さすがだなと思いました。
ラランド・サーヤ 「なんか賞獲りそう」と思いました。すごすぎて。福田さんのキスシーンがただ目立つだけの面白映画になるのかと思ったら、全部ストーリー、オモロいんかいと。こんなことできるんだと。上田監督、すげーなやっぱりと思いました。
──それぞれご自身の役柄についてはどう思われましたか?
福田 ほぼ私です。「キスさえできれば」と思っていました。
加納 私は恋愛シーンがなかったので、やらなくてもすみました。
サーヤ ちょっと復讐劇っぽい作品で、憎しみとか負の感情のほうが表現しやすいから、やりやすかったです。自分でも画面で確認して「すげー怖いな、顔」って引きました(笑)。
──福田さんのキスシーンの話が先ほどから出ていますが、いかがでしたか?
福田 芸人としての“盛り”は一切なく、リアルな感じでやりました。上田監督から「バードキスで」と指示があったんですけど、キスの時間がもっと長くてもよかったかなと。アドリブでもっとしてやろうかなと思いました。
──キスシーンの前後はどういう雰囲気でした?
福田 浅香さんは役者さんで、キスシーンに関してはなんの感情もない感じだったので「寂しいなー」と思いつつやりました(笑)。役者さんとご一緒する機会はあまりないから、空き時間に雑談じゃないですけど、役者と芸人の生活の違いとかの話をさせてもらいました。
──サーヤさんは福田さんのキスシーンを現場でご覧になっていますよね。
福田 (サーヤに向かって)どうやった? 私のキス。
加納 何が知りたいの?(笑)
サーヤ 麻貴さんがキスしているところを私が盗撮するというシーンがあって、カメラ越しと肉眼で観ていました。自分が撮った写真が本当に週刊誌の“路チュー”みたいで、リアルだな、生々しいなと思いました。めっちゃかわいかったです。浅香さんの背が高いから。
福田 韓国ドラマのDVDの表紙みたいになりました。
加納 (撮影現場で福田の)キスシーンが先にあって、私は入り時間が違ったので現場では見られなかったんです。「どうしても行かせてください、話の種に!」って言ったんですけど。私が2時間くらいあとに合流して「キスシーンどうやった?」って聞いたら「あ、まあ、別に。仕事やから」みたいなテンションで(笑)。いやいや、あんな「キスしたい」言うてたん、そっちやん! もっとなんかテンション上がってしゃべれや!って。
サーヤ (福田は)撮影の初っ端、朝方からキスシーンで、朝からキスして、終わった瞬間に燃え尽きているんです。そのあと何時間も撮影あるのに「帰っていい?」って言われました(笑)。
福田 そのときの写真をあとから見て、改めて抱いた感想は「めっちゃ女やったな」と。女の部分が開花しているなという感じです。
──今回の作品に際して福田さんがキスシーンを熱望された経緯があると思うんですが、「トゲトゲ」にアルコ&ピースがゲスト出演した回で、福田さんがアルピー酒井さんにドッキリでキスを迫られていましたよね。あのときは拒絶していましたが、なぜでしょうか?
福田 やっぱり、俳優と芸人とでは全然違う生き物ですから(笑)。酒井さんも人間としては素敵な人やと思いますけど。
現場は一切ピリつかなかった
──上田監督とのお仕事はいかがでしたか?
福田 人柄が素晴らしいなと思いました。面白い方やというのはわかっていたんですけど、気さくやし、同じ目線から接してくださる。スケジュールがタイトでも、まったくイライラとかすることもなく、現場の空気がいいままで一切ピリつかず、最後まで温和な感じでした。
加納 映画監督って、いわゆる「カーット! もう一回!」みたいなイメージだったけど、令和の映画の現場ってこんなに柔らかなんだと。もしかしたら上田監督のなせる業というか、監督が持っている空気感が優しかったのかもしれませんけど、終始穏やかでした。打ち合わせから優しくて、現場行ったら怖いんやろなと構えていたんですけど、全然ピリつくこともなく。
サーヤ すごく朗らかですよね。映画監督ってもっとややこしいのかと思いました。めちゃくちゃ優しいし丁寧だし明るいし、本当に統率を取るのがうまい方なんだなと。表情などの演技指導がわかりやすかったです。あと、2人のおかげでもありますけど、(この作品の撮影は)サークルで合宿したみたいな感じです(笑)。
──具体的に印象的だった演技指導などはありましたか?
加納 「アドリブも自然な感じで入れてください」と言っていただきました。台本をいただいてから「芸人さんってこういう言い回しは普段されますか?」って聞いてもらって、「あ、こっちの言い回しのほうが自然かもしれませんね」とか、話し合いながらさせてもらいました。とはいえ映画のことは3人とも何も知らないので言われるがままです(笑)。
──では、そんな撮影の中で難しかったところは?
福田 一度も経験したことがないことのシーンが一番難しかったです。想像でしか演じることができなかったです。それ以外は普段の3人みたいな気持ちでやりました。サーヤが途中から怖くなってきて、リアルに嫌な感情になりました(笑)。
サーヤ 私も経験のないことに対して想像でどうリカバリーするかと。めっちゃ勉強になりました。難しかったけど面白かったです。
加納 ほかの人の演技を待っているとき、ですかね。この2人は演技経験があるんですけど、私はコントくらいしか演技をやったことがない。ほかの人がしゃべっているときに「どういう顔しとこ?」みたいな(笑)。顔がわからなかったです。
──逆に皆さんの「女優魂が炸裂した」というような芝居はありますか?
福田 やっぱり、キスシーンじゃないですか? そこは3時のヒロイン福田麻貴を捨てて、ミキとしてキスをしたので、緊張とかはなかったです。「ミキやから」と。「この人とキスするのは初めてじゃない」という設定なので。
加納 ラストかな、私は。一瞬キリッとした顔します。
サーヤ 私はあざ笑うところです。他人の不幸に対して笑う、って、普段そこまでの感情にならないので力が入りました。普段の10倍、20倍の感情の起伏だった気がします。怒りの演技が多かったんですけど、相方(ニシダ)のせいで私、アンガーマネジメントだけめっちゃうまくなって(笑)。人に対して怒るエネルギーがしんどくて、諦めが年々早くなって、「怒る」ってやっぱり労力がすごいんだなって改めて思いました。普段の貯蓄はあったので、それを出しました(笑)。
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リアルなネタ合わせを演じた