「バキ童」への本音

──昨年、YouTubeチャンネル「バキ童チャンネル」の登録者数が130万人を突破しましたね。土岡さん的には相方が“バキ童”として有名になっていくことをどう思っているんですか？

土岡　自分も出ているチャンネルですけど、ぐんぴぃがメインのチャンネルなので、少し他人事のように感じています。「お気に入り登録しているチャンネルがすごいことになっているぞ」みたいな（笑）。

ぐんぴぃ　自分自身も130万という数字に全然ピンと来ていなくて、ちょっとキモいんじゃないかと思ってます（笑）。もちろんうれしいですけど、「こんなにいっちゃうのか」というのが率直な気持ちですね。

土岡　正直、芸人としては「YouTubeはノーカン」みたいな気持ちもあったんですけど、さすがに100万人を超えたら1つ成し遂げたこととして数えてもいいのかなと考えが変わってきました。賞レースで成績を残してテレビに出始めるといういわゆる王道ルートがあるとして、それとは違う新しい出方ができていると思ってもいいんじゃないかなと。

ぐんぴぃ　ただ、タイタンっていう会社が本当に素晴らしくて、YouTubeで成し得たからといって一切調子に乗らせてくれないんですよ。それはやっぱりお笑いの会社だから。少しでも調子に乗ってると井口さんがブチギレてきます（笑）。

土岡　「タイタンライブ」で会ったときに、「よう、YouTuber！」って言われました（笑）。

ぐんぴぃ　YouTubeや俳優業では認めてくれない雰囲気が逆に気持ちいいです。「で、お笑いはどうしたの？」と言われる感じ、アツいです。

──ご自身的には思っていた見つかり方じゃなかったということですか？

ぐんぴぃ　100％その通りです。だってこんな見つかり方、誰が想像しますか!?（笑）

土岡　タイタンの学校の入学式の前日にあの「バキバキ童貞です」のインタビューを受けたんだよね。

ぐんぴぃ　そうだ！ 入学の時点でざわつかせていましたね。「あれ？ 昨日のあいつじゃない？」みたいな（笑）。だから若干ズルしている感覚はありました。バキ童っていうよくわからないもので注目されてしまって。よくわからないものってみんな気になるから。

──理想の売れ方は？

ぐんぴぃ　（ダウ90000の）蓮見です。あいつは許せないっすよ。

土岡　「別に芸人じゃないですよ」みたいな顔してね。で、演劇のところ行くと「お笑いみたいなもんなんで」って（笑）。

ぐんぴぃ　あはははは（笑）。でも、それこそ蓮見がテレビで言ってましたけど、“芸人”だと決めてしまうとお笑い好きの人しか見てくれないから、あやふやにしておけば純粋に「好きだな」と思った人が見てくれる。それは確かになと思いますね。自分たちに置き換えると、YouTubeがきっかけだとしても面白いと思ってくれればいいというか。

──最近ぐんぴぃさんは櫻井翔さん主演ドラマへの出演や、来年には主演映画が公開予定と俳優としてもご活躍です。この勢いで俳優に転身するおつもりなんですか？

ぐんぴぃ　そんなことはないです！ 以前、演劇の公演に誘われて出演させてもらったときに、ドラマのプロデューサーが観に来てくれていたんですよ。そのプロデューサーがたまたまバキ童チャンネルのファンでもあって、ちょうど「童貞のキャラがいたらいいな、バキ童みたいな奴いないかな」と探していたところ、バキ童本人が芝居をしていたので起用した、という経緯らしいです。

土岡　そこが繋がるんだ。

ぐんぴぃ　自分たちのコントに持って帰れるものがあるかなと思って出た演劇が、意外なところに繋がりました。

養成所生でも容赦なく敵視してくるウエストランド井口

──これまでに解散危機はありましたか？

ぐんぴぃ　解散危機とまで行かないですけど、芸人になって最初の1年間はマジで1回もウケなくて、「芸人になっちゃダメだったかな」とは思いましたね。

土岡　「もう終わりかもな……」という気持ちでしたけど、だからといってケンカとかはなくて、2人で一緒に「うーん」ってなってました。

──タイタンの学校では月1で（現在は毎週）ライブを開催していますが、そこでの経験で得たものは？

土岡　それまでフリーでいろいろなライブに出ていましたが、タイタンの学校ライブが一番ウケづらかったと思います。一般のライブはほかに人気の芸人さんも出ているし、普段からライブに通い慣れているお客さんが来ているので、笑いが生まれやすい雰囲気ではあったと思います。ただ、養成所のライブに来るのは養成所生の友人だったりするので、お笑い好きじゃないことも多い。だから苦しかったですけど、ここでウケたネタはよそでもできるぞ、と自信になりましたね。

ぐんぴぃ　今でも「タイタンライブ」系は全部そうです。見る目が厳しい。

土岡　覚えているのが、タイタンの学校生VSタイタン所属芸人というネタライブがあって、僕らが学校生側の大将、ウエストランドさんが所属側の大将だったんですけど、袖で見ていた井口さんが僕らがつかみでスベった瞬間、「よし！」って言ってたらしいです（笑）。

ぐんぴぃ　養成所生とか関係なく全員を敵として見てるから、あの人は（笑）。

──ウエストランドさんとの交流はあるんですね？

土岡　ありますね。

ぐんぴぃ　基本的には悪口を言われて、それに返し続けるだけですけど（笑）。

──オフで悪口言われてるんですか？

ぐんぴぃ　あの人にオフなんかない！（笑） でも、さっきも言いましたけど僕らが調子に乗らなくて済む一番の原因の人ですからね。ああいう人がいるおかげでお笑いがんばらなきゃなって思います。

──爆笑問題さんとの絡みもあるんですか？

ぐんぴぃ　うれしいことに、あります。タイタンに入ってよかったことの1つが、本当にフランクに爆笑さんと話せること。事務所にも普通にいますし。

──事務所に行ったら、爆笑問題さんがいらっしゃるんですか!?

ぐんぴぃ　ときどきですけど。

──座っている？

ぐんぴぃ　そうです、そうです。新聞を読んだりなんかして。先日、ウディ・アレンと太田さんのリモート対談の収録があって、「お前、ウディ・アレン好きだったら来いよ」と太田さんが誘ってくれたんです。太田さんはウディ・アレンが大好きだからガチガチに緊張してて、いざ対面したら「映画のまんまだ！」と興奮している様子を横からずっと見ていました。最後に、「まだ自分のことをコメディアンと思っていますか？」と太田さんが聞いたんですよ。「キャバレーでスタンダップコメディはもうやらないけど、自分をコメディアンと思っています」という答えに太田さんが「とても勇気づけられました」と言って対談を終えていて、すごい瞬間に立ち会えたなと思いました。

土岡　あとは新年会をやったりね。

ぐんぴぃ　僕たちは仕事で参加できなかったんですけど、みんなで焼肉食べに行ったりもしていましたね。すごくアットホームな事務所です。

──土岡さんがタイタンに入ってよかったなと感じた瞬間は？

土岡　最近ちょっと薄毛になり始めていて治療しようと考えているんですけど、タイタンにはシティホテル3号室の亮太さんを筆頭に相談できる先輩がたくさんいて、ありがたいです。

ぐんぴぃ　その層は厚いからね。

タイタンライブで爆笑さん以上にウケたい

──YouTubeで有名になってしまったという話が先ほどありましたが、それとは別に目指しているものはありますか？

ぐんぴぃ　僕は爆笑問題さんや伊集院光さんのラジオでお笑いに開眼したところがあるので、地上波ラジオ番組を持ちたいです！ 話芸で注目されたい。

土岡　僕はコントを一番がんばりたくて、そのためには「キングオブコント」が知ってもらうきっかけとして一番デカいところだと思うんですが、「キングオブコント」だけに向けていても勝てないんだろうなと感じています。もっと広くなのか、高くなのか、とにかく面白いコントを作りたいです。その過程で「キングオブコント」決勝に行けるといいのかなと。

──タイタンの若手にとってやはり「タイタンライブ」出演は憧れです。どんな雰囲気ですか？

ぐんぴぃ　ちょっとピリッとした、大人の雰囲気のライブです。だからこそ笑わせたいと思いますし、できればイチウケしたい。今のところ出番は2番手、3番手くらいで、まだまだですけど、いつかはウエストランドさん、そして爆笑さんよりもウケたいって思います。

土岡　10回以上出ていますけど、まったく慣れない舞台です。1回も緊張しないことがない。ウケたときは「よかった、ウケた……」って安心します。

ぐんぴぃ　それこそ、どれだけYouTubeで売れようがまったく関係ない場ですね。フラットに、面白かったらウケる、それだけ。

──最後の質問です。春にタイタンの学校を卒業する僕たちに言っておきたいことはありますか？

土岡　タイタンの学校からスタートしたら、なんとなくタイタンのライブ周りにばかり気を取られるかもしれないけど、それは活動の1つとしていろんなところに目を向けてほしいです。いっぱい芸人仲間がいたほうが張りが出るし、「まだまだこんな面白いやついるんだ！」ってびっくりすることも大事。外に出てみないと自分がすごく狭いところにいることにも気づけないから、最初のうちはエントリーライブにも出てみて、とにかくいろんな事務所の芸人と知り合って、交流するのがいいんじゃないでしょうか。

ぐんぴぃ　ライブはめちゃめちゃ出たほうがいいと思いますね。僕が伝えたいのは、「誰かの萌えは誰かの萎え」という2ちゃんねるの言葉。面白い、つまらないでいろいろ悩むと思いますけど、「誰かのウケは誰かの冷め」だと僕は思います。全員が面白いと思うことはないし、全員がつまんないと思うことはない。だから、とにかく自分が面白いと思うことをやり続けて、もちろんそれはそれで行き詰まったりもするから、うまい塩梅でやってみてください！