春とヒコーキに、
しびれグラムサムがインタビュー

タイタンの学校2期生の春とヒコーキ特集を組むにあたり、インタビュアーはタイタンの学校4期生ですでに「タイタンライブ」出演も果たしているタイタンイチオシの漫才コンビ・しびれグラムサムにお願いした。しびれグラムサムは、フリーで活動していた頃から春ヒコと親交があり、何かにつけて「カレーに行こう」と誘われる、くらいの仲（実際にはまだ行けていないそう）。春ヒコの2人のこと、そしてタイタンの学校について、たっぷりと話を聞いてもらった。

「キモすぎる」で落とされタイタンの学校へ

しびれグラムサム・ヨシダ　今回お笑いナタリーで「春とヒコーキ特集」が組まれるわけですけど、どういう気持ちですか？

春とヒコーキ土岡哲朗　芸人になる前からずっと見ていたサイトだからうれしいね。

春とヒコーキぐんぴぃ　映画「モテキ」でナタリーに勤めている主人公が「童貞」だと会社の中でバカにされるシーンがあるんですよ。だから、僕はあんまりナタリーに対して好印象はなかったです（笑）。

ヨシダ　じゃあ下剋上みたいな感じですか？

ぐんぴぃ　ちげーよ！

土岡　でもそうなんじゃない？ 「童貞」ってバカにされてたけど、今こうして特集を組んでもらうまでになるなんて。

ぐんぴぃ　そういう意味ではそうか。童貞が特集組まれるって史上初めてじゃないですか？

ヨシダ　それはどうでしょうか（笑）。今回僕らも初めてインタビュアーをやらせてもらうんですけど、本当に好きな2人だからこそ、普通に聞きたいことはいっぱいあります。

ぐんぴぃ　そんな、後輩のフリするなって。

しびれグラムサム山田　いやいや、後輩ですやん！

土岡　同期だったじゃん。

ヨシダ　実はタイタンが一番ややこしいんですよ、芸歴問題。

ぐんぴぃ　ウエストランド井口さんとキュウの清水さんはいまだに芸歴どっちが長いかで揉めてますからね（笑）。僕らは2017年にフリーとしてスタートしていますけど、タイタンの学校に入ったことで芸歴ロンダリングしようとしたら、井口さんが絶対それを許してくれないっていう。

ヨシダ　芸歴警察ですからね。ちなみに僕らがタイタンの学校に入ってきたときはどう思いましたか？

ぐんぴぃ　うれしかったけど、“パクられた”とも思ってます。僕らは別の事務所のオーディションライブにずっと出ていて、あと少しで所属できるかも、という頃に「さすがにキモすぎる」という理由で落とされて。路頭に迷っていたところ、タイタンの学校が始まると聞いて入ったんですよ。

山田　僕らも他事務所のオーディションに2年くらい行っていたんですけど、「マジで取る気ないよ」と言われましたね。ちょうどそのときにタイタンの学校からお誘いいただいて、迷ったんですけどコンビを組んだ状態で学校に入っている春ヒコさんがいたのもあって、タイタンの学校を選びました。

ヨシダ　だから、表現としては“パクった”で合ってますよ（笑）。先に成功例があったのは安心材料になりました。

ぐんぴぃ　1年間養成所に通うのは遠回りな気もするんですけど、実はどの事務所のオーディションも預かりになるまで1年くらいはかかるんですよ。しかも、僕たちみたいにせっかくいいところまで行っても取ってもらえる保証がない。だったら1年、学んでみるのもいいんじゃないかと思いますね。

土岡　同じ1年ネタ見せするにしても、スタッフさんやマネージャーさんの目をかけてくれる度が違うしね。

ヨシダ　6、7年同じ事務所のオーディションを受けている方もいることを考えると、選択肢として1つ持っておいてもいいですよね。

2ちゃんで太田光と松本人志の信者してた

ヨシダ　ここからは春ヒコさんの子供時代から芸人になるまでを振り返っていただこうと思います。

土岡　幼稚園の頃はめちゃくちゃおしゃべりな子でした。でも小学校、中学校と徐々に落ち着いていって、高校では友達が1人もできずに誰ともしゃべらなくなって。元来はおしゃべりだけど、コミュニケーションは苦手という感じで今に至ります。

ぐんぴぃ　土岡とは大学で出会ったんですけど、そのときが一番暗い状態でしたね。「高校3年間、誰ともしゃべっていなくて友達0人」というエピソードを聞いて、「完全に爆笑問題・太田さんと同じだ、天才なんじゃないか？」って思ったなあ。うらやましかった。僕は逆に、何も考えない不潔な子供だったんですけど。

ヨシダ　逆ですか？ おしゃべりな子の逆は不潔？（笑）

ぐんぴぃ　消しゴムを使わずに指の脂で消して、周りを引かせていましたね（笑）。すごい発見をしたと思われたくて、逆張りしまくってた。「消しゴムなんていりませんよ」みたいな。

土岡　全部逆張りしたら不潔に寄っていくのか。普通は清潔に文明的にやっていくから。

山田　理解するの早すぎますって（笑）。

ぐんぴぃ　中学高校は面白いことを言いたい子だったんですけど、考えてボケを言うというよりは、イジられて楽しくやるタイプ。でも、高校のときに松本人志さんの「遺書」に出会ってしまうんです。「本当におもろい奴は明るいクラスの人気者じゃなくて、根暗で貧乏で女好き、この3つだ」と書いてあって、当時の僕は全部当てはまらなかった。だから読んだ翌日から一切しゃべらなくなりましたね。今はめっちゃ後悔してるんですけど（笑）。

ヨシダ　松本人志さんへの憧れが強くあったんですね。

ぐんぴぃ　特に影響を受けたのが太田さんと松本さんで。2ちゃんのそれぞれのスレで両方の信者のフリしてましたね（笑）。島田紳助さんが好きで、そのへんを調べていくうちにダウンタウンさんにたどり着きました。最初ダウンタウンさんのことはあまり知らなくて、「伝説の教師」（日本テレビ系）というドラマを見ていたから松本さんのことは俳優だと思ってたんですよ。余談ですけど、今出させてもらっている「大病院占拠」（日本テレビ系）のメイクさんが「伝説の教師」もやっていたメイクさんで、めちゃくちゃ裏話を聞かせてもらってます。あとは伊集院光さんのラジオが相当好きでしたね。モテない人間のラジオ。ああいうことやれたらなあって今も思っているんですけど。

ヨシダ　土岡さんが影響を受けたのは？

土岡　小学校高学年くらいの頃に「エンタの神様」（日本テレビ系）や「オンエアバトル」（NHK総合）とかのネタ番組を見始めたんだけど、特に「M-1グランプリ」（ABCテレビ・テレビ朝日系）に南海キャンディーズさんが出て、そのあとバーンと売れていったのが印象に残ってて。今までテレビに出ていなかった人が急に売れっ子になるさまを初めて目の当たりにして、お笑いってカッコいいなと思うようになりました。

土岡は落研の伝説的な存在だった

ヨシダ　コンビ結成は土岡さんから誘ったんですよね。落研出身で面白い人も周りにたくさんいそうですけど、なぜぐんぴぃさんを？

土岡　僕の持っていないものを一番持っている、真逆の人だなと思って。僕が内向的なのに対してぐんぴぃは社交的というのもそうだし、目立つ、イジられる、予想外のことを起こす。「バキバキ童貞」のインタビューを受けたのもそれの最たる例ですよね。何かを引き寄せる、“持ってる人”だなと思う。僕はラーメンズさん、バナナマンさんに憧れてネタをやっていきたい気持ちがあったんだけど、いくらネタをがんばってもそういう部分はどうにもならないから。

ぐんぴぃ　特集の取材だからいい感じに言ってますけど、土岡は松本さんの「働くおっさん劇場」（フジテレビ）が大好きなんです。松本さんが一般のおじさんにいろいろやらせて、研究する番組。土岡はそれをやりたいだけなんですよ。野良の1人の男をめちゃくちゃにしたいだけ。

土岡　（ニコニコして聞いている。）

山田　怖っ！（笑）

ヨシダ　就職もしていたのに、よくOKしましたね。

ぐんぴぃ　土岡がネタを書くならっていう信頼はあった。まだバレてませんけど、土岡は大学時代の落研で伝説的な存在だったんですよ。関東中の落研の人が土岡の落語を聴きに集まるくらい。やる落語も、古典じゃなくて全部自分で作り変えていてめちゃくちゃ面白かった。

ヨシダ　お笑いの世界に足を踏み入れる怖さはなかったですか？

ぐんぴぃ　まんじゅう大帝国の田中が関東の落研団体の後輩なんですけど、彼が「僕が今まで会ってきた中で一番面白い人が山口さん（＝ぐんぴぃ）です」って言ってくれて、あんなに面白い奴がそう言うんだったら俺は面白いんだ！と思い込んじゃって。ただ、田中にその話をしたら「言ってない」って言うんですよ。「一緒にいて楽しいとは言ったけど、面白いとは言ってない」と。まあ、勘違いも必要です（笑）。

山田　タイタンに入ったのはまんじゅうさんがいたからというのもあったんですか？

ぐんぴぃ　そうですね。あとは自分たちに合っていると思って受けていた事務所に入れなかったことだし、大好きな爆笑問題さんの事務所にしようと思って。

土岡　僕はタイタンって最初、特殊な事務所のイメージだったんですよ。自分たちには爆笑問題さんみたいな文化的な教養もないし、合っていないんじゃないかと思って不安もあった。でも若手の先輩たちを見ると全員ガツンとお笑いをやってるから、勝手なイメージで恐縮してただけだったんだよね。

ぐんぴぃ　ウエストランドさんはじめ、先輩みんな野武士だもんね。

土岡　オーディションだけの時代をのし上がってきた強者たちという感じがする。

ぐんぴぃ　タイタンのオーディションってめっちゃ厳しかったんですけど、そこに養成所から入れるのは不思議な気持ちでしたね。