ウエストランド、春とヒコーキ、現役生に聞く「タイタンの学校」、爆笑問題・太田の哲学に通ずる育て方 (2/2)

同期がいるから孤独じゃなかった(ぐんぴぃ)

──大学の落語研究会で出会った春とヒコーキのお二人は、まずはフリーとして活動を始めています。そこはウエストランドと同じですね。

ぐんぴぃ エントリー料を払ってライブに出て、よければ上のランクのライブに出られるっていうのに挑戦していました。

土岡哲朗 最初はお客さんの反応がまったくなくて。でもお笑いをやれているっていうのが楽しくて、初期の頃はウケていなくても大丈夫でしたね。

春とヒコーキ

春とヒコーキ

──その後なぜ「タイタンの学校」に?

ぐんぴぃ ウエストランドさんのようにオーディションを受けてタイタンに入りたいと考えていたんですが、受けようとしたまさにその月からオーディションがなくなったんです(笑)。で、「タイタンの学校」から入るルートがあると聞いて、それまで何も知らずにやっていましたし、「この機会に学んでみるか!」と思って入りました。

土岡 そうですね。基礎を学ばずに2年間フリーで勝手にやっていたので。「タイタンの学校」では毎月ネタ見せがあるんですが、今思えば結局これってオーディションに通うのと同じことだったんですよね。

井口 そう考えると、オーディションで有象無象のわけわかんない奴らと一緒にネタ見せするより、「タイタンの学校」の関係性がある中でネタ見せできるほうがいい環境ですよね。講師の方もどういう芸人かわかってくれているだろうし。

ぐんぴぃ フリーで芸歴1年目だと、そんなに芸人仲間ってできないんですよ。孤独にオーディションに向かい、そして落ちる日々ってけっこうつらくて。そういう意味でもいい環境だったかもしれません。

土岡 ずっと同じ審査を受けているので、やっていくうちに同期とも仲間意識が芽生えてきて。「タイタンの学校」では書道やダンスなどお笑いじゃない授業もあったんですが、だんだん「どうふざけるか」みたいなことをみんなで考え始めるんです。同じ目的意識を持っているから、ほかの授業も楽しく取り組めたと思います。

「タイタンの学校」に受け継がれる爆笑問題・太田の教え

──特にためになった授業や講師の方の言葉を教えてください。

土岡 演劇のプロの方、村井雄先生(劇団「KPR/開幕ペナントレース」主宰)の授業を受けたときに、1つひとつの動きや見え方に対してプロはこれだけ考えるんだっていう熱量みたいなものは実感しました。プロの空気感を目の当たりにしたというか。

ぐんぴぃ 僕は菅(賢治)さんのお話が印象に残っています。「笑ってはいけない」シリーズをずっとやってきて、“マンネリ”と「待ってました!」っていう“定番芸”の違いをどう考えているか質問したんです。それを十何年と常に考えてきた方の重みのある答えがズッシリときましたね。

井口 それは本当にいいなあ。そういう話を聞けるのは貴重だよね。

土岡 でも、ぐんぴぃ実はその授業休んでて。僕が代わりに聞きました。

井口 さも自分が質問したかのように言っといて、いなかったのかよ!

河本 又聞きじゃん(笑)。

──ウエストランドのお二人が気になる授業はありますか?

井口 「ぶちラジ!」をやってくれている髙﨑(悠介)さんの「動画作成」とか、こういうのは本当に今必要な知識ですよね。

土岡 どうすれば最後まで見てもらえるかとか、実践的なことを教えていただきました。

ぐんぴぃ 人数が少ないので、何が向いてるか1人ひとりに向き合って助言してくれます。

井口 (パンフレットの講師陣を見ながら)髙﨑さんのような最先端の技術を駆使する人からテレビ界の大御所まで、いろんな方がいますね。

スタッフ まだできたての学校なので、カリキュラムはどんどん進化しています。菅さんは今エピソードトークや持ち込み企画を品評するような授業もやっているんですよ。

井口 菅さんにエピソードトーク……。怖いなあ(笑)。

スタッフ 「さんま御殿」のサイズ感でしゃべってみよう、とか。

井口 そこで激ハマりする可能性もありますしね。僕はタイタンのよさがそういう部分にあると思っているんですが、規模が小さいので、ネタを見てくれた作家さんが「こういうところが生かせるんじゃない?」と提案してくれて、マネージャーさんがすぐ売り込みに行ってくれるとか、各セクションにすぐ伝わって仕事につながったりする。学校もそういう感じなんじゃない?

土岡 確かに、学校のときもありましたね。オーディションを振ってもらったり。

井口 あとは、「ああしろ、こうしろ」「あれはダメ、これはダメ」がないのはタイタンのよさ。僕らもそうですし、僕らと同期の日本エレキテル連合がやっているようなネタにも寛大ですから。それはやっぱり爆笑問題・太田さんの教えで、「芸人が面白いと思ってることが一番面白いんだから」っていうのが基本軸にあると思うんです。

ぐんぴぃ それは学校のネタ見せにも通じてましたね。

左からウエストランド、春とヒコーキ。

左からウエストランド、春とヒコーキ。

──では最後に、これからお笑いを目指そうと考えている人たちへメッセージをお願いします。

土岡 「タイタンの学校」はほかの養成所にはないユニークな授業ばかりで、いろんな角度から「テレビに出る」ということを学べるところ。少人数なので先輩にも早く覚えてもらうことができて、同じライブに出演したり、お話しさせてもらったりして、卒業してからも学ぶ機会がたくさんあります。

ぐんぴぃ “所属”になれば先輩方も気さくにしゃべってくれますから。

井口 現金なやつしかいないからな(笑)。“預かり”の状態だとしゃべってあげませんけど、“所属”になって、勢いが出てきたら話しかけます。

河本 手のひらは返します。

井口 僕たちに手のひら返されるようにがんばってほしいですね。

ウエストランドの特別講座

「M-1グランプリ2020」決勝出場後、2021年は多数の人気番組に出演し、これまで以上にさまざまな経験を積んだウエストランドが「タイタンの学校」特別講座に登壇。養成所出身ではない自らを“野良芸人”と表し、フリーライブで力を付けていった過程や芸人仲間との交流、テレビ出演のチャンスをどうやって生かしていくか、といったことを実体験をもとに語った。

特別講座に登場したウエストランド。

特別講座に登場したウエストランド。

ウエストランドの話に耳を傾ける現役生たち。

ウエストランドの話に耳を傾ける現役生たち。

積極的に質問する現役生たち。

積極的に質問する現役生たち。

井口はまず「我々に教えられることは1つもない!」と断言。その上で、自身が踏んできたステップを回想する。ウエストランド結成当初はひたすらエントリー制のバトルライブに挑戦。「一気に面白さが知れ渡ることなんてないから、身近な人に面白いと思ってもらうしかない。半径5メートルくらいの人たちに『面白い』と思ってもらって、その半径5メートルの円の数を増やしていく」という地道な道のりを振り返ると、受講生たちも頷きながら耳を傾ける。当時は芸人友達もおらず、「養成所に行っていた人たちがうらやましかった」と河本。次第にウエストランドを面白いと思ってくれる芸人たちが声をかけてくれ、コミュニティが広がっていったと話す。

ウエストランド井口

ウエストランド井口

ウエストランド河本

ウエストランド河本

ウエストランドによる特別講座の様子。

ウエストランドによる特別講座の様子。

ネタ以上に「人として面白くなること」が大事だと井口が述べると、河本も受講生と同じように「あぁー」と唸る。「趣味でもなんでも、どこかでお笑いに繋がってくるし、そういう生き方をやっていくしかない。僕は本当にそうで、出し抜くためなら人生どうなったっていいもん。芸人としての人生なんだから、ウケるための選択をしていく。いずれ壁にぶち当たったら、それくらいの覚悟を持つようになるんじゃないですかね」という井口の話に、受講生は身を引き締めている様子。「ライブシーンで人気がないことに悩んでいる」「目標をどう立てているか」といった質問にも答えながらたっぷりと持論を展開した井口だったが、最後は「改めて言いますけど、お笑いに正解はない。自分の好きなことをやってください。どうぞご自由に!」という言葉で締めくくった。

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ウエストランド(左)、春とヒコーキ(右)

ウエストランド(左)、春とヒコーキ(右)

プロフィール

ウエストランド

写真左端 / 井口浩之(イグチヒロユキ)
1983年5月6日生まれ、岡山県出身。

写真左から2人目 / 河本太(コウモトフトシ)
1984年1月25日生まれ、岡山県出身。

中学、高校の同級生で、2008年11月にコンビ結成。フリーで活動を開始し、オーディションライブから預かり期間を経てタイタン所属となる。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年から3年連続で「THE MANZAI」認定漫才師に選出される。2020年には自身初の「M-1グランプリ」決勝進出を果たした。2011年にスタートしたラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeはじめ、Podcast、audiobook.jpで配信中。

春とヒコーキ

写真左から3人目 / ぐんぴぃ
1990年3月31日生まれ、福岡県出身。

写真右端 / 土岡哲朗(ツチオカテツロウ)
1992年2月21日生まれ、栃木県出身。

青山学院大学落語研究会の先輩後輩。家に引きこもっていた土岡が働いていたぐんぴぃを誘って2017年に結成した。2019年に「タイタンの学校」に2期生として入学し、翌2020年にタイタンよりデビュー。「ゴッドタン」(テレビ東京)の企画「この若手知ってんのか!? 2020」で「とにかくヤバい芸人」の3位にランクインした。ぐんぴぃが街頭インタビューに応じた映像が話題となり、これにちなんだYouTubeチャンネル「バキバキ童貞【バキ童】」も人気を博している。