主人公の気持ちがわかる
──そんな上田監督の最新作「スペシャルアクターズ」をご覧になった感想をお聞かせください。
宮下 上田監督は本当に映画が好きなんだろうな、というのが伝わってきました。映画好きならニヤリとさせられてしまうところが盛りだくさんで、カルト集団が出てきたり、血しぶきが上がったり、古きよきヒーロー映画のオマージュがあったり。父子関係で「スター・ウォーズ」を思わせるような部分もありました。今回も展開に裏切りがたくさんあって、最後までどうなるかわからない感じが楽しかったです。
草薙 本当にシンプルな感想で申し訳ないけど、すごく面白かったです。僕、観ているときに最後のほうで「あ、ここでもう終わる」って油断しちゃったんです。そうしたら、そのあとにビックリするようなシーンがあって。だから最後まで油断しないで観てほしいです。「まだここから面白くなるぞ!」と。
──主人公の大野和人が、草薙さんにかなり近いキャラクターかなと。緊張感のある状況で気絶してしまったり、気持ちを落ち着かせるためにボールを握っていたりと。ご自身ではいかがですか?
草薙 宮下にも言われました。さすがに気絶まではしないですけど、めちゃめちゃ気持ちがわかります。人に詰め寄られてるとき、僕はすごく汗をかいて、湯気が出るくらい体が熱くなるんです。この映画にもあるようなオーディションに2人で行ったとき、辛辣なことを言われてから外に出て、宮下が「まあまあ」って肩を叩いてくれたら「熱っ!」って(笑)。ボールを握るのも、僕も漫才をするときにシャツのボタンをよくいじるのでわかります。落ち着くんです。
宮下 草薙は自分のボタンをずっといじってたんですけど、最近は僕の袖のボタンをいじってくるんですよ(笑)。
草薙 自分のを触ろうと思ったらボタンが取れていたんで。ボールを握るというのは、たしかにいいですね。
宮下 いや、漫才中にボール握らないでよ(笑)。
──上田監督も、この映画を観た別の方に「草薙さんに似てるね」と言われたそうです。
草薙 怒られてるときの顔がそっくりだなって自分でも思います。宮下は怒られているときも、けっこう生意気な顔で聞いてるんですけど。
宮下 造形的にそう見えるだけで、気持ち的に上から目線とかはないです(笑)。
草薙 あと、弟がいるのも和人と同じです。僕の弟は今ジャカルタで新聞記者をやっていて、弟のほうが行動力があるところや兄弟の関係がすごく似てるなと思います。
「教祖の父」に共感する
──宮下さんが共感できるキャラクターはいましたか?
宮下 僕は、カルト集団の教祖の父・大和田克樹(三月達也)ですかね。他人を操って信じさせようとするところが共感できます。
草薙 宮下は教祖の父です!(笑) カルト集団の控室で教祖である息子・多磨瑠(淡梨)にダメ出しするシーンが、楽屋の僕らとめちゃくちゃ似てました。
宮下 草薙がスベったときに、顔に出して諦めたようなときがあったんです。「いや、顔に出すなよ」と。
草薙 あの父子のシーンは、マジでそのときの僕らと同じでした。
──ほかに気になる登場人物はいますか?
草薙 シナリオ担当役の田上陽介(上田耀介)さんがカッコいいです。メンタルクリニックの原田先生(原野拓巳)もメガネをかけている感じが好きです。僕、演技とかわかんないですけど、皆さんめちゃめちゃうまいなと。こんなうまい人でも、そんなに有名じゃないんだな、すごい世界だな、と。
──キャストの方々は草薙さんもおっしゃるように現時点では無名の方々が大半です。こういった映画の見どころをどう考えられますか?
宮下 僕が観る映画には、だいたい1人か2人は「あ、この人!」みたいな有名な人がいるんですけど、上田さんの作品は特に観たことのない人がキャスティングされていて。役者の人は出演する作品のイメージが一度付くと、どうしても先入観を持って観られてしまうんですけど、誰一人としてイメージが定着している人がいないと、まっさらな気持ちで観られる。その人の演技がちゃんとゼロからの印象で、すっと入ってくる。そういう部分でこういうキャスティングもありだと思います! プロモーションのときも、無名の人たちが出演すると「面白い映画ですよ」っていう押し出し方になるじゃないですか。好感が持ててすごくいいなと思います。
草薙 マジでこいつ、好きなんです、映画が(笑)。
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領収書ボケの中で一番面白い