「シソンヌライブ」の作り方②
裏方さん発信でできたボケがめちゃくちゃ多い
──さて、このインタビューに合わせて「シソンヌライブ」の裏方13名にアンケートをとったので(P3に掲載)、お目通しいただきながら進めていきます。稽古には連日スタッフさんも参加されるんですか?
じろう そうですね。演出部チームは基本的にはずっといて、ネタを見ながら「この場面には何が必要か」を考えてくれます。僕ら、裏方さん発信でできたボケがめちゃくちゃ多いんですよ。置いてある物を使ってふざけるとか。「こういう物を置いて、これでボケる」と台本に書いているわけではなくて、全部このチームが組んでくれたセットの中で思いつくんです。もちろんネタの核になっているものは細かく発注しますけど、“店内の雰囲気”みたいなものはほぼお任せ。音楽に関しても、音響さんが持っている素材の中から適当に当ててくれて、それが面白くてそのまま採用することもあります。
──一緒にコントを作っている感じですね。「dix」の最後のネタ「人類の、未来のために」のカツラが見たこともないデザインで、どういう依頼をしたんだろうと気になりました。コント中にも髪型について話す場面がありますし、要の部分でもあるのかなと。
じろう (ヘアメイクの)西川直子さんにイメージだけ伝えたんですけど、すごい面白いものを作ってくれました。
長谷川 最初は西川さんも一瞬止まってましたけどね。「ちょっと何をおっしゃって……?」みたいな(笑)。それでもちゃんと汲み取って面白いものを持ってきてくれるからすごい。俺らも小道具やカツラの出来でだいぶアガるんですよ。それで稽古もノッてきて、新しいボケとかツッコミが出てくる。
──何を望んでいるのか理解してくれるチームは心強いですね。アンケートに「シソンヌライブは年に一度のお祭り」という言葉もありましたけど、スタッフさんも大きな熱量で取り組んでいるのが伝わりました。
長谷川 これを読んだ限りは楽しんでやってくれているみたいでよかったです。
じろう みなさん普段は演劇の舞台などをやられている方なので、別の現場で「シソンヌライブの音響やってるんでしょ?」みたいに言われているのかなってたまに想像するんですよ。裏方界で「シソンヌやれてるのうらやましい」って言われてたらすごくいいなって。
──「シソンヌライブ」の完成像があるとして、今どの段階まで来ていると思いますか?
じろう うーん……。1回目の「une」のときよりはお互い確実に技術力が高くなっていますし、こうやったら面白くなるっていう方法論はわかってきたとは思いますけど。
──演じられる幅が広がってきた?
長谷川 というより、お互いの呼吸みたいなものがよくなってきていることが大きいですね。「これに対してはこう返そう」とか細かく合わせなくても、やりながらできるようになってきているというか。
じろう どの段階にいるかはわからないですが、今の塩梅はすごくいいと思うんです。入り口おしゃれで、中身しょうもないのが自分たちらしさなのかなって(笑)。で、たまに本当にただのいい話をやったり、かと思えばめちゃくちゃくだらない話をやったり、というバランスでできたらいいのかなと。スーパー理想形を言うと、やっぱり三木聡さん作、演出のときのシティボーイズです。1回ああいう、今のトップクリエイターたちがとにかくおしゃれで面白いもの作りました、ってやつをやってみたいと思いますね。
いまだに誰よりもうんこ、ちんこがコントに出てくる
──シソンヌらしさの話が出ましたが、以前「シティボーイズみたいになりたかったけど、シティボーイズほどの知性がない」とお話しされていたのが印象に残っています(参照:シソンヌ「シティボーイズほどの知性ない」と苦笑いも単独ライブ&全国行脚に充実感)。おしゃれで、くだらないという相反しそうなものが両立しているところがシソンヌの魅力だなと改めて思いました。
じろう 最近はおじさんになって、その知性に対する見栄もあんまりなくなってきましたね。もう知性は無理です。さすがに今からじゃ。知性を得たくて本を買っても、ただ山積みになっていくだけですもん。
長谷川 シティボーイズに憧れてはいましたけど、同じことは僕らにはできないし、してもしょうがないですしね。10回やって形になってきたってことは、俺らはこれでいいのかなと思います。
じろう いまだに誰よりもうんこ、ちんこがコントに出てきますから。
──(笑)。それなのに嫌な気持ちにさせないですよね。品は保っているというか。
じろう それを言って、ウケるニンなんだなっていうのはやってきて感じましたね。
長谷川 確かに。「うわ、なんでこの人『うんこ』とか言うの?」って思われちゃう人もいるので。
じろう でも、このスタッフさんのアンケートに「じろうさんがよくオナラをする」と書いてあるのを見つけちゃって。それは今すごく申し訳ないなって思います。
長谷川 稽古中オナラするって、下品のど真ん中だよ(笑)。
──お笑い界でのシソンヌの存在感についてはどうでしょうか。自分たちが20歳前後の頃に憧れていたサブカル的な、イケてる芸人になれていると思いますか?
じろう どうだろう。ちょうどいいところにはいる感じはしますね。仕事の内容的には。
長谷川 俺はちょっと理想と違うんだよなあ。「よしもと」っていうのが1個乗っかってると、当時の俺とかじろうが見てきた人たちの雰囲気じゃなくなるんですよ。
じろう それ言い出したら、ASH&Dとか人力舎に事務所移らなきゃじゃない?(笑)
長谷川 そうなんだけど、「認めませんよ」みたいな一定数のサブカル野郎の視線を感じるのよ。自分がそういうことを思うタイプだったっていうのもあるんだけど。
じろう 確かに、自分が学生の頃めっちゃセンスあるなって思った芸人が調べてよしもとだったら「ちょっと熱を冷まそう」と思ってたかも。
長谷川 だったら「(好きな芸人)ザ・ギース」って言うでしょ? それと、まだ世間にちゃんと伝わっていないなと思う部分もあって。
じろう もう十分評価してもらっていると思うけど?
──どんなことですか?
長谷川 例えばじろうのすごいところって、女性役で大喜利をしていないんですよ。芸人がやる女性キャラは、女性が言いそうなことや女性が言ったら面白いだろうことの大喜利になっていることが多いんですけど、じろうの女性キャラは普通のことしか言っていないのに笑いを取れてる。これはもうちょっと評価されてもいいはずです!
じろう そこに関しては僕もすごいことやってると思います。ただ女性として存在しているだけっていう。
長谷川 ほら、自分でも思ってるじゃん(笑)。マジでそこに関しては今1位だって。
2人とも子供のときからひょうきんでした
──最後に身も蓋もない質問をしてもいいですか? 舞台に立って笑いを取るのは、楽しいですか?
じろう 楽しいですよ(笑)。だってそれがやりたくて、それが好きで芸人になったわけですから。どれだけお金をもらえて楽な仕事でも、たぶん人を笑わせられなかったら続けられないと思います。2人とも体質的に。そこでしか満たされないものがあるんです。
長谷川 芸人はみんなそうでしょう。
──最初はみんな芸人ではなかったわけですよね。どのタイミングで笑いを取らずにはいられない体質の人間になるのかなと。
じろう 子供の頃ひょうきんだったタイプとそうでないタイプがいるじゃないですか。意外と芸人って、「昔は暗かった」という人が多いと思うんです。でも僕は子供の頃から人前に出て何かやるタイプだった。長谷川さんもそうでしょ?
長谷川 もちろん、もちろん。いや、そうじゃないと芸人始められない気がしますけどね。逆に暗かったのによくお笑いやろうと思ったなっていう。
じろう だけどそっちのエピソードのほうがカッコいいじゃん。影があって。僕もそっちでありたいって思いますもん。だけど小学校のときからステージ上でケツ出したりしてたから。
長谷川 じろうのちっちゃい頃の写真、だいたいふざけてるもんなあ(笑)。俺も球技大会でお尻出して笑い取ろうとしてました。
──お二人とも子供の頃から笑いを取りたいタイプだったんですね。
長谷川 昔から笑ってもらうことに快感を覚えていたと思います。ふざけて、みんながケタケタケターって笑ってるのが一番うれしい。俺らはその延長線上にいるんでしょうね。
じろう 暗かった奴が養成所に入って人前で笑いを取ると言っても、自分の中にデータがないじゃないですか。こうやって笑わせてきたという実績が。
長谷川 でも売れてる人で暗かったって人けっこう多くない?
じろう ネットに上がってる記事とか見ても、そっちのタイプのほうが絶対多い。「子供のときからひょうきんでした!」ってインタビュー、見たことない。
長谷川 「お笑いに出会って変わった」とか、「クラスの1軍の奴らを見返したくて」みたいな話は聞いたことあるけど。
じろう そういうのじゃないね。僕らは2人とも子供のときからひょうきんでした。
──生粋のひょうきん者コンビだ。
長谷川 中学のときはみんなモテを意識してスカしだすので、1回大人しくなるんですよ。で、高校でまたひょうきんが開花する。
じろう まったく一緒です。
──子供の頃からひょうきんで、その延長で芸人になり、今や連日笑いを浴びているって、最高な人生では?
じろう あはははは(笑)。
長谷川 そうやって聞くとなんかバカみたいで嫌だなあ(笑)。子供の頃お尻出してふざけてて、そのまま芸人になったって。まあまあ、そう考えたら感慨深いですね。
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稽古場や舞台裏のシソンヌとは?裏方13名アンケート