よゐこ、ますだおかだ、安田大サーカスといった人気芸人をはじめ、みなみかわ、ヒコロヒー、森本サイダー、河邑ミク、駆け抜けて軽トラら若手も活動の場を広げ、今勢いのある芸人事務所として業界内外から注目を集めている松竹芸能。明日なるスターを輩出すべく、松竹芸能養成所では多彩な講座、講師を用意している。
中でも目玉なのが、「教えて○○先輩」と題した新カリキュラム。現役で活躍中の先輩芸人や文化人、番組プロデューサー、ディレクターなどから笑いの現場が今どうなっているのか、生の声を聞くことができる。
その松竹芸能養成所が現在2023年4月生を募集中ということで、お笑いナタリーでは漫才の実力はもちろん“ロケの鉄人”としてテレビに引っ張りだこのなすなかにしを迎えて出張版「教えてなすなか先輩」を開講! 6人の現役養成所生が、なすなかの2人に直接質問をぶつけ、ネタ作り、ロケテクニック、芸人としてのこだわり、アドリブ力の磨き方などを学んだ講座の様子をレポートする。なすなかの笑いに対する向き合い方に触れながら、養成所選びの参考にしてみては?
取材・文 / 狩野有理撮影 / 銀色なつみ
松竹芸能養成所
森脇健児、よゐこ、ますだおかだ、アメリカザリガニ、安田大サーカス、オジンオズボーン、なすなかにし、みなみかわ、ヒコロヒー、紺野ぶるま、森本サイダー、キンタロー。、河邑ミク、風穴あけるズ、はっぴちゃんらを輩出。ネタ見せ、ボイストレーニングなど基礎を学ぶ総合科目に加え、2021年4月からはアドリブや瞬発力を伸ばす「バラエティ基礎」、コメント力、レポート力を身につける「タレント応用」、漫才やコントに必要な演技力を養う「演技」から2つを選べる選択科目も導入している。
※東京校・大阪校で講義内容は異なりますので、予めご了承ください。
入学金5万円がオフになる早割キャンペーン実施中!
早割エントリー期限:2022年12月31日まで。
詳しくはオフィシャルサイトで確認を。
「教えてなすなか先輩」開講!ネタ作りは「これ言いたい」から
緊張気味の養成所生が待つ部屋に「ごめんね、わざわざ。ありがとう~」と入ってきたなすなかにしの2人。椅子から立ち上がって自己紹介する生徒たちに「立たなくて大丈夫よ(笑)」と声をかける。参加したのは、養成所でコンビを組んだ「ああmen'sによりけり」のブチさんと光田京志郎さん、「相方は自分より大きい女の子」とアピールする「ふたりはぼんじり」の大森ぽぷさん、サラリーマンをしながら養成所に通っている「クローンズ」の森山実さん、ピン芸人のババトシミツさん、「M-1グランプリ」で惨敗したという「塩レモン」のヤマモトレオさん。ネタやロケ、進むべき方向性について、具体的な質問を用意して今日に臨んだ。
質問1
なすなかにしさんといえば、漫才! 漫才のアイデアはどういうときに思いつきますか?(質問者:ブチ)
中西 「これ言いたい」をそのまま漫才にするパターンが多いかなあ。前に「ブロッコリー」って言いたい時期があってね。なんか、響きがいいから(笑)。それで「ブロッコリー」だけで4分やったこともある。
那須 相方は「これやりたい」「これ言いたい」が先行してネタを作ってますね。
中西 2人はどうやって作ってるの? 設定から?
ブチ 僕たちも、相方がやりたいボケが1個あったらそこから膨らませています。
中西 めちゃくちゃいいやん。ブロッコリー、言いたなるよね。
光田 言いたくなります(笑)。
中西 カンチョーしたい時期もあって、「カンチョーさせてくれへん?」って言って8分くらい舞台上でカンチョーし合うネタもあった。
ブチ ええ!? 那須さんはそれを提案されてOKしたんですか?
那須 そうやね。「カンチョーしようよ」って。ネタを作ってくれる相方が「やりたい」と言ってることを拒むことはしないかな。やりたいことを我慢してボケなあかんのはストレスやと思うから。
光田 確かに、言いたくないボケを言うのはあんまり楽しくないです。
那須 楽しくするには、やりたいことを一緒にやる。
ブチ ちなみに、そのネタでは那須さんはどうやってツッコミをされるんですか?
中西 ツッコミも何も、2人でカンチョーしてたからね。お互いにずっとカンチョーし合う。後ろを取られたら負け。
那須 そうそうそう(笑)。相方を1人にさせないようにするってことやね。
ブチ なるほど!「1人にさせない」。めちゃくちゃ響きました。
那須 相方のやりたいことに対して興味を持つと、疑問とかが出てくるでしょ。「これはなんなの?」みたいなやり取りが漫才になっていくこともある。
中西 こっちも「カンチョーしたい」までしか考えてへんから(笑)。そこから2人で広げていくのがいいかもね。
ブチ それでやってみます!
中西 ただ、めちゃくちゃスベるよ?
那須 やりたいことがそのままウケるとは限らないからね(笑)。
ロケもその場で「やりたい」と思ったことをやる
質問2
なすなかにしさんといえば、ロケ! ロケに行く際にどれくらい準備をしているのか知りたいです。何個ボケを用意するのか、ロケ先の情報をどれくらい調べるか、など。(質問者:光田京志郎)
那須 調べたりはしていないね。台本に書いてある情報に目を通しておくくらい。
中西 ボケも、「これをやろう」と決めて用意はしてないかな。持ちネタみたいなものはあるけど。
那須 相方がこういうことを言ってきたら「あ、このパターンで来るな」っていうのは何個かあります。「あれ? ちょっと待って」と立ち止まったら、なんか拾いに行くんやなーとか。
中西 そういうのもやらずに、その場で思いついてフリーでやるときもあるね。
光田 (小道具の)四星球は……。
中西 四星球は常にカバンには入れてる(笑)。「ドラゴンボール」好きやから。見つけたいやん、四星球。
光田 見つけたいですね(笑)。
那須 何に使うかは決めていないけど、一応小道具のカバンは持っていきます。
中西 でもそれも全然使わないときもある。さっきの漫才と一緒で、そのときにやりたいことをやりたいから。
光田 ロケの勉強ってされましたか? ほかの芸人さんのロケを参考にしたり。
那須 ほかの芸人さんというより、自分たちのオンエアを見て「こういうところは使われないんだな」という経験の積み重ねかな。
光田 最初のロケはどうでしたか?
那須 ひどいもんだったよ。オープニングでテイク13くらい撮ったんちゃう?
中西 梅田の餃子スタジアムに行ったやつな。「オープニングを何回も撮り直す」みたいな演出でもあったから、スタッフさんも笑わんとずーっと撮ってる。事務的に「はい、もう1回お願いしまーす」って。
光田 メンタル的にきつかったですか?
那須 一番はじめのロケやったから、やり方がわからんっていうのもあって「こんなに難しいんや!」とは思った。
中西 最後は餃子の餡を投げて皮で受けるみたいなボケして。餃子“スタジアム”やから。
那須 いいボケだねえ。
中西 いいボケ! 今だったら1つ目に言うかもしれない。
質問3
ロケテクニックが豊富ななすなかにしさんに技を伝授してほしいです。ボツネタでもいいのでボケをください!(質問者:大森ぽぷ)
中西 「ボケをください」!? アドバイスとかじゃなくて?
那須 あげてよ。欲しいもんなあ?
大森 はい、お願いします!
中西 お互いカンチョーし合うやつでいい?
那須 ロケでカンチョーし合ってたらカオスやん(笑)。でも、その2人のキャラもあるからなあ。
大森 大きい私たちが大暴れをするコントをよくやっています。
中西 なるほどな。じゃあ、食レポでごはん食べるときに、「いただきます」言うて……(おにぎりを両手で持つ動作)。
那須 カメラに対して横向いてね。
中西 (口をガバッと大きく開けておにぎりをガブリ)
那須 「進撃の巨人」の食べ方やないか!
一同 あはははは!(笑)
中西 ちゃんと「進撃の巨人」観いや! 動きを研究して。ただこれ、AKB48の小栗有以ちゃんにもあげたから、それは取り合いしてくれる?
那須 被るかもわからんね(笑)。
「面白い」と思うことがあって始めたのを忘れない
質問4
芸人として「これは絶対に譲らない」というポイントはありますか? また、そういうこだわりはあったほうがいいと思いますか? それともウケること、売れることを優先するほうがいいですか?(質問者:ババトシミツ)
ババ ずっとピンでやっているんですが、1人コントをやったり、今はギャグをやっていたり、芸風をいろいろ変えまくっていて……。売れるためにはマネージャーさんやネタ見せの作家さんにもらうアドバイスを取り入れたほうがいいのかなと迷っています。
中西 こういう悩み、ぶつかる人多いんちゃう?
那須 やってたらみんな思うことよね。
中西 作家さんの言うことでも、10人に聞いたら10人とも意見が違ったりもするから、結局自分がやってて楽しいことをすればいいんじゃないかなと思うけどね。みんな「ここが面白い」というところがあってこの世界に入るわけやんか。でも、いろんな意見を聞いているとだんだん忘れていく。それで「何が楽しいかわからん」みたいになって悩む人が多い。だからそこの軸はずっと持っていないとあかんのじゃないかな。
那須 キャラクターのある人って0から作っているんじゃなくて、自分の中にあるキャラクターを強調しているんよね。もともと自分にないことをやるとしんどい。作家さんのダメ出しで言われたことも、自分に合わないなと思ったら取り入れなければいいし、刺さったものだけ取り入れればいい。
中西 もし「それは違う」って言われら、ネタそのものを捨てるんじゃなくて、伝え方を変えてみればいいんじゃないかな。
ババ お二人はいつ頃自分たちのスタイルを見つけられましたか?
那須 いつ頃かはわからないけど、よく言われるのが、「年齢が追いついてきた」。
一同 ああー!
那須 昔からこんな感じでやってて「ベテランくさい」と言われていたのが、相応の年齢になって、それがキャラになったのかもしれないですね。