上杉くんからは人を幸せにしてくれるようなオーラが出ている

──マキタさんの上杉さんとの共演経験は？

共通の知人に「いいバンドが北海道にいるよ。東京でもやってる」って言われたのがTHE TON-UP MOTORSでした。いつの時代でもああいう人がいるんだな、と上杉くんを見て思いましたね。本宮ひろ志が描くような、ふんどし姿で葉っぱくわえながらおにぎり食べてるような（笑）。劇画チックで男くさくて哀愁がある。人柄ですよね。“ソウル人格”。ブギウギ専務は上杉くんという人間を見るものだと思います。

──もしもマキタさんが上杉さんと同じように「ブギウギ奥の細道」に挑戦をするとしたら？

僕は上杉くんみたいな感じには絶対ならないですね。彼の場合、ディレクターのムチャ振りを受けても画面から痛さが感じられないし、痛さを感じてしまうと話が違う方向に行くと思う。彼が持ってるマンパワーや、ディレクターとの関係性、その土地の人との原初的な触れ合いがいいなー、と思います。僕だったらディレクターとは距離を置いて、企画に口出しすると思います（笑）。

──大地さんがピンポイントで旅に入ってきます。

大地くんも人柄が出てて、見ていてまったくイヤな感じがしないんですよ。相方の大谷くんともまた違う。このキャスティングを見ただけで、当たりだなと思いました。いい意味でハラハラがない。ある程度の安心感や企画の柔らかさが伝わってきます。

──上杉さんは大地さんをはじめ、芸人さんをリスペクトされているようです。

でも、上杉くんが旅の途中で一句ひねったりするのも、なかなかだと思いますよ。ミュージシャンで歌詞を紡ぐ人だけあって、ノリや場全体のグルーヴの中で出てくるものが、うまく韻を踏んでいたりする。イヤミじゃないんですよ。本人は「面白くあろう」と思ってるかもしれないけど、芸人でないナチュラルな部分がすごくいいと思います。

──上杉さんならではの味というのがあるんですね。

バラエティやお笑い、音楽の分野で、僕はすぐ専門的な感じに行っちゃいますけど、自動車で例えると公道を走れないタイプなんです。彼の場合はなにも改造しない純正の状態がとても強い。たとえば1万人相手に武道館でライブをやろうが、旅館に飛び込んで交渉しようが、どちらも同じことだと思うんです。お客さんはその人の持ってるオーラが自分にとってよきことかそうでないことかを判断している。上杉くんからは人を幸せにしてくれるようなオーラが出ている。彼や「ブギウギ専務」の人気は、彼の持ってる人柄のなせる技ですよね。それを味わう、愛でる、というのがこのDVDの正しい見方なのかなと思います。