寒さも痛さも伝わらない

──DVD第2弾「冬の章」は、上杉さんにとって酷寒の北海道をひたすら歩く旅でした。マキタさんはどのようにご覧になりましたか？

マキタスポーツ　僕が見るかぎり、急に天候が変わって猛吹雪になってたりして、上杉くんが「これヤバいですよ！」って言ってるんだけど、ぜんぜんヤバさが伝わってこないんですよ。

上杉周大　本当ですか？（笑） それは顔が明るいってことですかね？

マキタ　明るいし、痛々しさに転じない。「クマ注意」っていう看板が立ってるときもあるけど、クマが出てきても上杉くんだったら大丈夫だろうな、って思うよね。なんとかなる。

上杉　アハハハ！ ならないですよ！

──実際、上杉さんが旅で辛かったのは？

上杉　地味な話になりますけど、ご飯が食べられないこと。1日食わないのも当たり前ですから。あと、雪道をこいで歩いていくこと。雪で景色が何も変わらなかったりします。今回のDVDで小樽から札幌まで何の“画代わり”もしないから「撮れ高的に大丈夫なのかな？」と思いながら歩いてましたね。

マキタ　現場でディレクターに怒ることはあるの？

上杉　「なんだよこれ！」って納得いかないことも多々あったはずなんですけど、あまり言わなかったですね。僕よりディレクターのほうが、ディレクションしながらカメラやマイクの受信機を持って重い装備で歩いてたりするんですよ。それでも彼がまったく愚痴も文句も辛いも言わない。だから自然と文句言っちゃいけない現場ができあがってる（笑）。

マキタ　ディレクターのムチャ振りも、あなたが言葉に出している以上に、画面から伝わらないんですよ。

上杉　昔からの関係性もあるんです。演者と制作という間柄であると同時に、師弟関係、といったら変ですけど、不思議な感覚があるんですよね。「お前のそういうところが面白いね！」っていう僕の一番の理解者でもある。画面には映らないんですけど、普段歩いてるときのちょっとした話とか、全部ひっくるめて信頼してるパートナーです。

ダイノジ大地はコメディリリーフ

──大地さんも旅の途中で随所に合流します。

上杉　大地さんが入ってくると、当然プロの芸人さんなので「その場をいかに面白くするか」を第一に考えるじゃないですか。僕とディレクターの2人のときは、もちろんそれも頭にあるんですけど、もっと旅の苛酷さに真剣に向き合う時間になるんですよね。大地さんが合流したときに「あ、そうだな。これじゃダメだな」と思い直して、軌道修正というか、スイッチをちゃんと入れないとな、と思います。

マキタ　吉本の芸人だから“現場笑い”が大好きなんだよね。極端に言うと、テレビを観てる人が笑ってなくてもいい。それくらい芸人は笑いに対して貪欲だし、笑ってくれたら絶対そっちのほう向いちゃう。だから上杉くんがディレクターと2人とやってて「これでいいのか」って迷っているのも、それはそれで絶対いいはずなんだよね。バランスの問題だから。たぶん大地くんの現場笑いだけ優先してたら、旅が“ペラい”ことになると思う。

上杉　そうかもしれませんね（笑）。

マキタ　大地くんはそういう意味でコメディリリーフとして最適なのかもしれない。

上杉　大地さんが来ると歩いてきた疲れも忘れちゃいます。