JCA講師の飛永、今の生徒はネタの完成度が基本的に高い
──そのJCAの講師を飛永さんが今担当されているとお聞きしました。いつ頃ぐらいからでしょうか?
飛永 講師と言ってもネタを見て感想を言うみたいな感じなんですけど、3年ぐらい前から年に1回くらいのペースで始めました。個人的に「年に1回だけ見るのも、なんか物足りないな」と思っていたので、今年からは月1ぐらいで行かせてもらっています。
──もともと講師を引き受けたきっかけは?
飛永 最近、ザ・マミィとか吉住さんとか人力舎から若手が出てきたんですけど、後輩が出てきてない時期がストレスではあって「もっとうまいこといかないのかな」と思っていました。「後輩にアドバイスできる立場に」というのは前から興味があったので、やらせていただいている感じです。それで本当に僕のおかげで売れた、みたいな人が出ればいいですね。
──実際にやってみて手応えは?
飛永 早く売れようとしている生徒が年々増えてきている印象です。ネタの完成度が基本的に高いんですよ。もうYouTubeなど参考になるものがいろいろあるから、ネタの作り方がだいぶ浸透している。すごくちゃんとしているなという生徒が多いです。「なんか聞きたいことある?」と聞いたら「僕たちの衣装はどう思います?」とか「私、髪をピンクにしようと思うんですが、どう思いますか?」とか、けっこう細かいところまで気にしていて。「確かにピンクにしたほうが、はっちゃけた感じは出るけど、一概にそれがいいとは言えない」みたいに結局、何も言えないんですけど。「そこまで考えていて売れようとしてるなあ」とは感じます。
──基本はできていて、細かい調整みたいな部分を飛永さんに託しているんですかね?
飛永 そうですね。昔と違うのは今はAクラスとBクラスがあって、ちょっと競争が激しくなってる、というのもやる気につながっているのかなと感じています。
──大水さんは講師をされたことありますか?
大水 僕はないですし、今はちょっとやりたくないです(笑)。というのも、たとえばネタを見て「このセリフ、もっとこういうふうにしたほうがウケるかもよ」とかは言えるとは思うんですけど、果たしてそれがその子のためになるのかとか考えちゃうんですよ。荒削りなほうがいい場合もあるから。結局何を教えるのが正解なのかわからなくなりそう。本当に賢い子だったら取り入れるとこは取り入れて、ができるとは思うんですけど、そこの責任を負うのは僕は無理だなと。
飛永 わかる。めっちゃ迷っている子もいるよ。大水さんの言うように荒削りなほうが面白いとは思うんですけど、ただの荒削りだと絶対に食っていけないから、僕はある程度「なるべくこうしたほうがいいと思う」というのを言います。本人が違うと思えば違うほうに行って、成功したらそれは本人の手柄になるし。失敗したら「ほら、俺の言ったほうが正しいじゃないか!」になるし(笑)。僕が自分の面白いと思うほうを言うといいのかな、という気持ちです。
──JCAの新宿という立地や学校内の環境は、お二人にとってどう映っているでしょうか?
飛永 今、めっちゃいいよね。施設はきれいですし。昔は東高円寺で今は新宿。「がんばったら売れるかも」という感じはあります。
大水 東高円寺のときは「芸能事務所にいる」という感覚があまりなかったんですよ。今の立地だと芸能界というものにビビらなくなりそう。あとはライブの動画を撮っているから事務所のパソコンで確認することもできます。だいぶ環境はいいんじゃないですかね。水も飲み放題だし(笑)。
飛永 公園が近くにあるから、そこで練習してもいいかもしれませんね。
人力舎は自己プロデュースできる人にとってはすごくいい事務所
──ここまでお二人が芸人を続けてきた実感として人力舎のよさとは?
飛永 自主性を重んじてくれるところですかね。ネタに対して「もっとああしろ、こうしろ」というのを言われないですし、自分で考えてできるのはありがたい環境だなと。自分次第で売れることができるかも。無理やり嫌な仕事をやらされて「自分の思った感じじゃないな」というストレスを抱えることは一切ないです。自己プロデュースできる人にとってはすごくいい事務所だと思います。
大水 面白い先輩がいっぱいいるのは、すごくいいことだと思います。あとは単独ライブがやりたいですと言えばやらせてくれます。ネタをやる環境としてはいい事務所じゃないでしょうか。
飛永 確かに「キングオブコント」「M-1グランプリ」「THE W」のチャンピオンがいる。「R-1グランプリ」はまだですけどね。
──チャンピオン揃い。
飛永 ネタに強い人力舎のイメージを守ってくれる人たちがいっぱいいるのは、ネタが好きな子にとってはいいんじゃないかなと思います。そこが強みかな。
──では、お二人にとって「芸人になってよかったな」と思うことは?
飛永 平日に休みがあるのはけっこういいです(笑)。どこ行くにもそんなに混んでないので。あと、局とかに顔パスで入れるときはすごくうれしい。芸能人にも会えますし(笑)。普通に生活していたら会えないですからね。大水さんが中谷美紀さんとドラマ(フジテレビ系「ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~」)で共演してるけど、中谷さんがうちらのYouTubeを観てくれたと言っていたらしくて。
──そうなんですか。
大水 めちゃくちゃ観てくれているらしいんですよ。「あのネタのここが面白かった」と言ってくれました。
飛永 学生時代に見ていた人に会えて、そういう感想をもらうのは本当にうれしいです。
大水 あと、一般企業で働いたことがないからわからないですけど、まわりに面白い人がいっぱいいるのは、どの世界にもなかなかないことだと思うんですよ。ザキヤマさんみたいにゲラゲラ笑わせてくれる人って世の中にそんなにいないんじゃないかと。楽屋の塚地さんとかも面白いしなあ。そういう人たちを身近で見られるのは芸人になった特権ですね。
飛永 がんばればがんばるほど面白い人に会えるかもしれない。
──そして先ほど賞レースの話が出たので、よろしければ先日決勝が行われた「キングオブコント2023」について何かご感想を聞かせていただければ。
飛永 もう出ていない身ではあるんですが……2人でよく言っているのは「インパクトが強いネタが増えている」という印象です。
大水 「M-1」に近い感じになってきているなと。「キングオブコント」で勝つためのネタみたいなものがちょっとずつ固まってきている感じがして、競技性が増しているなと思いました。
飛永 みんな大スベりしないですもんね。面白かったです。
大水 全員面白かったです!
──貴重なお話ありがとうございました。最後にJCAに申し込むか悩まれている芸人志望の方の背中を押すような一言をそれぞれ聞かせてください。
飛永 僕は今講師をしていて「ネタを作るにはこうしたほうがいい」となんでも教えるようにしてるので、入ってくれたら質問してください。ほかの講師の方も含めて「売れるためには」「ライブでウケるためには」といったノウハウを教えられる環境にしていきたいなと思っています。ぜひJCAに来ていただきたいです。
大水 まずJCAへ入って、どこかで僕と会ってもらって、「どこに住んでるんですか?」と聞いてもらって、僕の家の近所に引っ越してきてくれたら、たまに飲みに誘います(笑)。だから飲み代はちょっと浮きますよ。
飛永 そうは言っても本当は若手じゃ住めないような、ちょっといいところに住んでいるのが嫌だな(笑)。
大水 1駅ずれたところに住んでもらえれば、飯をおごります!
プロフィール
ラバーガール
飛永翼(トビナガツバサ)
生年月日:1983年2月13日
出身地:静岡県
大水洋介(オオミズヨウスケ)
生年月日:1982年12月12日
出身地:青森県
スクールJCA10期生の2人が2001年8月に結成。プロダクション人力舎所属。「キングオブコント」では2010年と2014年に決勝進出した。YouTubeやTikTokで配信している動画も各チャンネルの合計登録者数が100万人を超える人気ぶり。単独ライブを定期的に開催している。2023年の最新作「インフルエンサー」のDVDが発売中。
ラバーガール : JINRIKISHA OFFICIAL WEBSITE プロダクション人力舎オフィシャルウェブサイト