岡野陽一「スクールJCA」インタビュー|人力舎は優しい事務所「とにかく台に座ってハンドルを回すことが大事」

プロダクション人力舎のお笑い養成学校、スクールJCAが32期生(2023年5月入学)を募集している。お笑いナタリーはこのたび、JCA17期生の岡野陽一にインタビューを実施した。

岡野は2022年にピン芸人としては自身初の単独公演に臨んだほか、「キングオブコント2022」決勝に進出。パチンコ番組への出演も含め、多方面で活躍している。このインタビューではそんな1年の出来事や、所属する人力舎の優しさ、人生を変えたパチンコ、お金の話、JCAの思い出、芸人志望者へのアドバイスなどをたっぷり聞いた。

取材・文 / 成田邦洋撮影 / 小林恵里

スクールJCAとは?

数多くのお笑い芸人を擁するプロダクション人力舎が1992年に開校した、関東初のお笑い芸人養成学校。人力舎のノウハウをもとに、基礎からライブまでの実践型カリキュラムを用意している。
講師陣はお笑い界を知り尽くすタレントや放送作家などのプロばかり。場数を踏むためのライブも幾度となく経験でき、その実力次第では人力舎に所属してプロの芸人としてデビューすることが可能だ。
現在スクールJCAは32期生(2023年5月開校)を募集中。オフィシャルサイトで詳細を確認して、芸人生活への第一歩を踏み出そう。

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芸人は運が大事。パチンコの要素が強い

──岡野さんには8年前にもJCA特集(参照:プロダクション人力舎 スクールJCA特集 巨匠&リンゴスターインタビューほか)に出ていただきました。この8年でどんな変化がありましたか?

いろいろ変わりました。コンビを解散しましたし、8年前は“クズ芸人”とか言われてなかったんです。収入も増えました。ただ、考え方みたいなものはそんなに変わらないです。それはパチンコをさせてもらっていたおかげで、パチンコからは「ちゃんと無心に自分の台を打つ」ということを教わりました。芸人には売れない時代とか、活動に波があるじゃないすか?

──大半の方が下積みを経ているとお聞きします。

それを考えると2022年の今はたぶん、めちゃめちゃいい時期なのかなと。自分を含めて「絶対に売れないだろうな」と思っていた人がテレビに出ている。たとえばランジャタイはずっと面白かったんですけど、テレビには縁がないと勝手に思っていたんですよ。錦鯉やモグライダーも、みんなとんでもない売れ方をしている。僕も、たまたま“クズブーム”みたいなありがたいブームが来て、ちょっとだけ出られるようになった。8年前には想像できなかったです。

──いわゆる“地下芸人”と呼ばれる方々がここ数年、世に出てきていますよね。

ただ、これについては「思っていたよりも運が大事なんだな」と思います。「面白かったら売れる」というのは実感としてあるけど、運の要素が大きい。だから、最低限のことをちゃんとやっている人は、あんまり深く考えないほうがいいんじゃないかと。ちゃんと無心に自分の台を打つしかない。やっぱりパチンコの要素が強いと思います(笑)。

岡野陽一

収入は増えたけど、なんにも物を買っていない

──先ほど「収入が増えた」とおっしゃいましたが、金銭感覚は変わりましたか?

変わりましたけど、僕の場合は結局収入が増えても、貯金は常にゼロになっちゃうので。虫と一緒なんですよ。「食べ物がなくなるまで食う」という。お金がなくなるまで毎月使っちゃうから、結局トータルの収支は今も昔も変わっていないです。

──使える金額は確実に増えたのでは?

たしかに、飯とかを後輩におごれるようになりました。ただ、物欲がないんです。正直言って8年前から僕、なんにも物を買っていないんですよ。腕時計とか1個も持ってないし、今着ているのも自分が出ているパチンコ番組のTシャツです。給料がただ公営ギャンブルに流れているだけです(笑)。

──8年前に岡野さんはJCAを推薦される際、「入学金が高いところに行けば間違いない」と話していました。もう少し掘り下げていただけますか?

その考えは今でもあります。高いところは安いところに比べてしっかりしているという理論で、ちゃんとした授業もしてくれます。それ以前に、詐欺の会社じゃないかどうかを調べておくのが大事ですね(笑)。人力舎はもちろん信用してもらっていいです。大丈夫です。

岡野陽一

「ネタをやらないと芸人じゃない」というのはある

──2022年の活動を振り返ると充実されている印象ですが、ご本人としてはいかがでしょうか。

今年はちょっと特殊でした。お笑いと、レギュラーで2本やっているパチンコ番組の二足のわらじで、バランス的に今がちょうどいいのかもしれません。理想は週休3日です。芸人である前に1人の人間ですから。もう性根の問題かもしれないです。そこに近づけるためには“単価”を上げるしかない。そのためには結局すごくがんばらなきゃいけない、という矛盾を感じています(笑)。

──ピンで初の単独公演「岡野博覧会」を開催したり、「キングオブコント」決勝に出たりと活躍されていました。

単独をすることになったのは、東京03さんのラジオに出たのがきっかけです。そのあと空気階段のイベントでも飯塚さんに背中を押されました(参照:「空気階段の大踊り場」東京03飯塚がゲスト、岡野陽一の単独ライブ開催を後押し)。ネタからはかなり遠ざかっていて、「ネタやんなきゃ」っていう思いは強かったですね。「ネタをやらないと芸人じゃない」というのは、特に人力舎の芸人なので、やっぱりありますから。

岡野陽一
岡野陽一

──実際にやってみて手応えはいかがでしたか?

まず、あんまりネタを休みすぎるとダメなんだな、というのがわかりました。そもそもピンのネタを、そんなに作っていなかった。ゴールデンウィーク前ぐらいから、いよいよ生きた心地がしなかったです。

──大変でしたね。

はい。単独って苦労をしても、当日お客さんにウケたり好評だったりして、プラマイでプラスが勝つからみんなやるわけじゃないですか。僕も本番でウケたのは、もちろん楽しかったんですけど、苦労したぶんの収支をプラスにするには、もっとウケるしかないなと思いました。これもまた運ですよ。すごく面白いネタが思いついたら勝ちで、思いつかなかったら負けです。

岡野陽一

──ちなみに芸人やネタに求められる昨今のコンプライアンスについては、どうお考えですか?

ちょっと縛りがある中でやるしかないです。「冷蔵庫にあるものでごはんを作るしかない」というか。パチンコも、ずっとそういう戦いなんですよ。規則がめちゃめちゃ変わるんです。我々ユーザーは文句を言わずにその中で戦うしかない。やっぱりお笑いとパチンコは一緒です(笑)。