プロダクション人力舎のお笑い養成学校、スクールJCAが31期生(2022年5月入学)を募集している。お笑いナタリーはこのたびJCA24期生(2015年度入学)のザ・マミィにインタビューを実施した。
「キングオブコント2021」で初の決勝進出を果たし、最終的に2位となったザ・マミィ。ネタ作りを担う林田の才能が評価される一方、酒井もそのキャラクターが受けてバラエティ番組での活躍が増えている。JCAで出会った2人を強力に結びつけているのは、やはりコント。このインタビューでは2人のスクール生時代はもちろん、影響を受けたテレビ番組、「キングオブコント」の話などをたっぷり語ってもらった。
取材・文 / 成田邦洋撮影 / 小林恵里
スクールJCAとは?
数多くのお笑い芸人を擁するプロダクション人力舎が1992年に開校した、関東初のお笑い芸人養成学校。人力舎のノウハウをもとに、基礎からライブまでの実践型カリキュラムを用意している。
講師陣はお笑い界を知り尽くすタレントや放送作家などのプロばかり。場数を踏むためのライブも幾度となく経験でき、その実力次第では人力舎に所属してプロの芸人としてデビューすることが可能だ。
現在スクールJCAは31期生(2022年5月開校)を募集中。オフィシャルサイトで詳細を確認して、芸人生活への第一歩を踏み出そう。
ザ・マミィ インタビュー
「キングオブコント」準優勝後のうれしい反響
──「キングオブコント2021」初のファイナリストで準優勝という結果でした。ここから芸人人生が変わった実感はありますか?
林田洋平 以前に比べるとスケジュールが2、3倍にはなっていると思います。
酒井貴士 人生でいちばん忙しくなりました。もう十分働きました(笑)。ここからは老後です、というくらいの怒涛の活動です。今までが仕事をしていなかったようなものなので、それに比べればハードスケジュールになったかなと。
林田 自分らの感覚でいえばハードですけど、もっと忙しい芸人さんのことはたくさん見ています。
──どんな内容の仕事が増えましたか?
林田 顕著に変わったのは、お笑い芸人さんとの仕事だけじゃなく、タレントさん、女優さんなどいろんなジャンルの方と一緒になる仕事が増えたことです。それまでは深夜番組に出演することが多かったんですけど、ゴールデンの時間帯にも出られるようになりました。感覚的にはちょっとだけ階段を上れたかなと。
酒井 けっこう刺激的です。スターと一緒になるのは想像していなかったことなので、ワクワクドキドキしています。「あ、芸能人だ!」って思います(笑)。
──今年の「キングオブコント」は大会自体も非常に盛り上がった印象です。出場されたお二人の実感は?
酒井 先輩方から「キングオブコント、面白かったね」って声をかけていただくことが多いです。品川庄司の品川さんにも声をかけられました。それまでは「アメトーーク!」(テレビ朝日系)で1回、ご一緒したくらいなのに。千鳥の大悟さんからも喫煙所で「面白かった。ネタ2本できてよかったなー」と言っていただきました。「チャンスの時間」(ABEMA)という番組で駆け出しの頃から面倒を見てもらっていた憧れの人にそういう言葉をいただけたのでうれしかったです。
林田 決勝に出ているときも、最初の蛙亭さんのネタが始まったときから「なんだかすごくない?」みたいな空気があって、スタジオの盛り上がりもすごかったです。番組を観ていた人に実際あとから聞いてみても同じ感想で、「やっぱりすごかったんだ」という答え合わせができました。
──決勝進出を決めた際の囲み取材(参照:ザ・マミィ初のKOC決勝、林田「ぶちかましたい」酒井「希望の光になりたい」)で、酒井さんが「ヘンテコタレントになりかけてたんで、ちゃんとコントもできるところを見てもらいたい」とおっしゃっていましたが、願いは叶いましたか?
酒井 そうですね。ちゃんとコントができるっていうところを見てもらって、テレビ番組に呼んでもらって、またヘンテコ芸人として出て(笑)。
林田 「キングオブコント」後、すぐに呼んでもらった2つの番組がどっちもドッキリ(笑)。俄然ヘンテコです。
酒井 すぐだまされちゃうから。
林田 でも、その割合は薄まったんじゃない?
酒井 テレビを観ている人に、心の奥底で「コイツは本当はネタができる」って思ってもらえればいいなと。「ヘンテコだけど、ネタになると意外としっかりして、やるときはやるよね。未知数だな」みたいに、いろんな面を見てもらえるとうれしいです。
林田 自分でよくそこまで言えるな(笑)。
全員決勝に行った「コント村」、審査員になった飯塚さん
──林田さんは以前から「コント村」としての活動を、ゾフィー上田さん、ハナコ秋山さん、かが屋・加賀さんとされています。
林田 「キングオブコント」後にメンバーが連絡をくれましたし、優勝したハナコさんを含めて、これで全員「キングオブコント」のファイナリストになれたので、勝手にホッとしています(笑)。コント村が始まった当初は僕らがコンビを組んだばかりだったので、そのときを思い出すと4組の並びを違和感なく見てもらえるようになったかなと。
酒井 今の「コント村」はネタという稲を植えている段階ですかね? もうすぐ穂ができて収穫の時期が来たら、世間様にもお届けできるんじゃないでしょうか。これが村の活動です。
林田 本当の村に例えてくれるんだ(笑)。
──そういった横のつながりがありつつ、縦のつながりもあるかと思います。今年「キングオブコント」決勝で初めて審査員を務めた東京03飯塚さんとファミレスに行かれたりするという話を以前お聞きしました。
林田 飯塚さんには、東京03さんのアプリラジオに「キングオブコント」直後に呼んでいただきました。いろんな覚悟をもって審査員を引き受けていらっしゃるのだろうな、というのが伝わってきました。なので今後、単独ライブを自分たちがやるときに声をかけていいのかな、とは思っています。本当は若手のネタもめっちゃ見たい方だとは思うんですけど、飯塚さんも審査員となると悩んでいるんじゃないかなと。
──決勝のオンエアでも「本当は家で見たかった」といったようなこともおっしゃっていました。
林田 それでも、思いがちゃんとあって審査員を引き受けたんだろうな、という感動もあります。来年どうなるかわからないですけど、決勝で飯塚さんがまたいらっしゃるなら見てもらいたいな、という気持ちはより強くなりました。
酒井 昔は飯塚さんにJCAの稽古場でネタの感想を言ってもらうこともありました。今、見てもらうには「キングオブコント」決勝に行くしかない……かもしれない。決勝がより価値の高いものになりそうです。
笑う犬×バカ殿=ザ・マミィ?
──お二人のお笑い観を形成したものについても話を聞かせてください。好きだったお笑い番組やコント番組は?
林田 僕は「笑う犬」(フジテレビ系)シリーズを家族で観ていました。基本的には全部網羅しているはずで、「小須田部長」シリーズとかが好きでした。そういうものを観て、JCAにもコントをやるつもりで入りました。
──「笑う犬」について林田さんにはコラム(参照:私の好きなポップカルチャー Vol.5 ザ・マミィ林田が綴る「お笑い」)も書いていただきましたね。
林田 学校とかでもみんなでふざけてコントの真似をしていました。めっちゃ影響受けています。
酒井 僕も「笑う犬」などいろいろと観てきたものはあるんですけど、原点は「志村けんのバカ殿様」(フジテレビ系)、バカ殿です。極太の眉毛で白塗りでちょんまげで、オレンジっぽい着物を着て、テレビで初めて観たときに衝撃でハートをつかまれました。ちょっとエッチなのもたまらないですし、ゲラゲラ笑って、虜でした。
──志村さんについても酒井さんにコラム(参照:コントの神様・志村けんが残したもの 第3回 ザ・マミィ酒井「我が家にバカ殿が来た日」)を書いていただきました。
酒井 バカ殿が志村けんさんだというのは、あとから知ったんです。最初は一致しなくて別のタレントさんなのかと。そのあと「8時だョ!全員集合」(TBS系)の昔の映像を観たら、普通のコントも異常な面白さで「なんでこの人は泣きながら怒っているんだろう。情けないのに面白いんだろう。こんなに面白い人がこの世にいるんだ」って。コメディスターです。こういう人になりたいなと。
──ザ・マミィは「笑う犬」と「バカ殿」のハイブリッドなコンビと言えるでしょうか?
酒井 それは最強じゃないですか!
林田 めっちゃカッコいいですね。急に恐ろしくなってきました(笑)。内村さんもコントで泣いて怒るみたいなことがあって、すごく大きく括るとニュアンスは近いですね。
酒井 ネタは設定も大事なんですけど、その外側の部分も結構好きで。「下顎がガクガクと震える」みたいな表現が役者としてこうやったらわかりやすいんだとか。情けなくて面白い人とかバカっぽかったりとか、観ていて楽しい、というのは意識しています。それまでに観てきたものが今のネタにつながってると思います。
林田 ……このインタビュー、気持ちよくなって2人でめっちゃ語ってるけど、「何かを成し遂げ終わった人たち」みたいな感じが出てないですか?(笑) 「キングオブコント」で3回優勝した人みたいになってる。
酒井 準優勝ですんで。でも2番目だから、いいですよね?(笑)
林田 上には上がいますよ。
酒井 あと、「爆笑オンエアバトル」(NHK)はビデオテープに録ってノートにも「キロバトル」を記録してました。それが小4くらいからで、勉強よりお笑いでした。
──これに加えて林田さんは大のラジオ好きとして知られています。そこからの影響もあるでしょうか?
林田 いろんな人のラジオでネタコーナーとかを食い入るように聴いてきました。情報量はかなりあったと思います。あとそもそもラジオが好きで、芸人のラジオを聞く前からFMとか聴いていたんです。ラジオドラマとかも好きで。ラジオって音以外の情報がないから想像しなきゃいけない。そのあたりも考える筋力があるとしたら、助けになっているのかなと今になって思います。
──今後ラジオでご自身がやっていきたいことはありますか?
林田 芸人ラジオって家みたいな感じになるので、そういう場を。GERAのアプリで「ネズミの咆哮」を長くやらせてもらっていますし、文化放送で「カラフルオセロ」をやっているので、そういうのもなるべく長くできたらなと。最近「ラジオ聴いてます」と声をかけてくれる人も増えてきて、リスナーと近く感じるのでそういう場所を守りたいです。
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養成所は誰とどう出会うのかが勝負