東ブクロがコントのいい素材に
──ここから少し駆け足にはなりますが、それぞれのネタについて聞かせてください。どれも着眼点がユニークで、展開の仕方にも驚かされました。オープニングコントはやはり「五穀豊穣」というタイトルから?
森田 そうですね。豊作を祈る儀式ってあるよねというところから、生け贄が人間じゃなかったら?と考えて作っていきました。「破格の態度」はよくある飲食店モノですが、ブクロきっかけでできたんですよ。なべちゃんと「あいつが店員だったらちょっと値段安なるんちゃう?」と話していて。「あの態度なら安くないとおかしい」みたいな(笑)。ブクロに飲食店なんかできへんやろなっていうところから生まれたネタです。
──実際、東ブクロさんは飲食店は?
東ブクロ やったことないです。
──アルバイトはやったことありますか?
東ブクロ 駐車場とか、ゴルフの受付とか。
──そのときはどんな態度で?
東ブクロ ちゃんと普通にやってますよ!(笑) コントやからあんなことになってるだけで。
森田 破格の態度ではないんや?
東ブクロ 当たり前や!
──「違約金ビジネス」はスキャンダルを起こした芸能人と、彼をCMに起用していた企業の攻防を描いています。
森田 これもブクロからですね(笑)。マネージャーのヤマネさんが、精力剤のCMだったらブクロもできるんじゃないかと話していて。むしろ一番の宣伝になると。で、その場合、スキャンダルでの違約金ってどうなるんやろうなと膨らませていきました。もともとタレントの不祥事を扱うコントを考えていたんですが、危ういタレントを起用する企業側の“ビジネス”に特化させてできたネタです。
──東ブクロさんから生まれたネタが2本も。
森田 ブクロというものがいい素材になってるのかもしれないです(笑)。
最後までブラッシュアップし続けたネタ
──「ハイ&ロー」はあまりこれまでに見たことがないタイプのコントでした。
森田 最初はそのアイデア1本でいけるか!?と思っていたんですけど、ちゃんと仕上がりました。確かに今回の単独の中では変化球的なネタになったと思います。
──東ブクロさんの声の演技が光っていましたね。
東ブクロ あれはカンペを見ながらできたので一番楽でした。
森田 プロとしてそんなこと言うなや!(笑) タイミングと順番がめっちゃややこしくて、こいつは正解がわかっているからミスるとしたら僕なんですよ。
東ブクロ 「間違えとんぞ? もっかい思い出せ?」と思いながらやってました(笑)。
──「ZZZ」「オレオレ」では森田さんがボケの役でした。森田さん演じる哀愁あるおじさんにも毎回唸らされます。
森田 いつもはツッコミ側のおじさんを演じることが多いんですけど、ボケ側のおじさんでも結果悲しくなるっていうのがよかったですね。
──一番苦労したネタは?
森田 「調教師コメント」は、初日が終わったあとに後半をガラッと変えたんですよ。設定はいいけど、なんか盛り上がりきらんなと。馬とブクロの関係にもうひと設定加えたらめっちゃいい感じになりましたね。ブクロのヤバさも表すことができたので、変えてよかったなと思いました。だから初日を観た人にとっては幻じゃないですけど、DVDを改めて観てもらえたら「え? うしろこんなことなってるの?」となると思います。
──次の日も公演があるわけですよね。覚え直すのは大変だったのでは?
東ブクロ でも、もう十何年そうしてやってきているので、そんなにおおごとでもないというか。まあまあ、いつものことやなと。むしろ今回のはそれが「調教師コメント」くらいだったので、まだ楽なほうですよ。
森田 「オレオレ」は凱旋公演で完成した感じです。自分たち的にけっこう好きなネタやったんで、もうちょっとウケてくれへんかなと思いながらずっとブラッシュアップしてましたね。
売れたなあ、と思う
──特典映像は、東ブクロさんが作家の渡辺さんと今作の細部のこだわりについて45分にわたってお話ししているという内容です。
東ブクロ なべちゃんが「調教師コメント」のときに馬の首の上げ下げをやっていたんですけど、そこの苦労とか愚痴やらをしゃべってます。
森田 リハの時間、けっこうあれに費やしたんですよ(笑)。全員でいろんな角度から見て、「それやと馬が背高すぎるな」とか。なべちゃんも「いや、無理です。これ以上は!」とか言いながら、なんだかんだうまくやってくれました。
東ブクロ あとは、音響さんがこだわって作ってくれた「ZZZ」の曲を歌ったりしてます。
森田 3、4曲作ってくれたんですよ。
──1曲丸々を、3、4曲も?
東ブクロ 転換のときに流れているのが「ZZZ」の曲なんです。みなさんあんまりちゃんと聴けてないよねということで、1曲歌いました。
森田 うちの音響さんって、そういうところに燃える人たちなんですよ。「これどうっすか!」って新曲デモテープみたいに渡してくれて。どれもちょうど腹立つラインの曲で(笑)。
──DVDでよく聴いてみます。単独のテーマ曲は今回も川谷絵音さんが担当していて、ネタはもちろんのこと公演の価値が年々高まっていますね。来年は結成15周年ですが、思い返していかがですか?
森田 最初の単独ライブでキャパ80人のところを埋めるのに必死だったことを考えたら、売れたなあと思います。いやもう、あの頃と比べたらそれに尽きるんじゃないですか?(笑) やってることはそんなに変わっていないんですけど、「ああ、売れたなあ!」って、あのとき来てくれた80人も思ってくれると思います。
東ブクロ お客さんの熱量がありがたいなあと思う年でしたね。レジェンド級の方や若手もたくさんコントライブをやっている中、一番中途半端なおっさんコンビのライブに来てくれる。お笑いファンだったら、もっとシュッとした芸人を追いかけたいじゃないですか。僕ら、YouTubeでも下世話なことしかやってないのに。
森田 こんな下品な奴らでも1万人集められるんや!っていうのは感じました(笑)。東京03さんみたいになるのは無理やろうなと勝手に思ってたので。
──今回はかねてから目標にしていた1万人を超える1万4000人を動員しました。次に目指すのは?
森田 動員はこれを超えていこうと思っています。やしろさんと話しているのは「7」までは見据えてやろうと。第7回でドン!というキャパを叩き出したいと思っているので、次の第6回はそのためにしっかりがんばりたいです。と言っても、僕らがやることは変わらず、いいネタを作る。やしろさんは、そのネタを最大限に生かせるような演出、お客さんがこれだけのお金を払って観に来たんだと思えるような演出を考えてくれているので。僕らみたいな下品なコンビにマッチする演出で盛り上げてくれると思います。
──前回の取材時は、タイトルは決まっていたのに東ブクロさんには伝えられていないという状況でした。先ほどうっすら聞こえたところによると、次のタイトルは東ブクロさんが考えたとか?
東ブクロ 僕は6にまつわる言葉を言っただけです。どうやらそれでいくみたいですけど?
森田 あはははは(笑)。それでいきます。楽しみにしといてください。
イベント情報
DVD発売記念オンラインイベント
日時:2023年2月4日(土)18:00~
応募方法:初回限定生産版に封入されている応募券でエントリー。
<出演者>
さらば青春の光
(株)ザ・森東《第9期株主総会》
日時:2023年1月13日(金)19:00開演
会場:東京・TOKYO DOME CITY HALL
料金:動画配信1600円(イベント割適用価格)
※アーカイブは2023年1月22日(日)23:59まで視聴可能。
チケット:客席観覧は完売。2022年12月17日(土)10:00に一般販売開始、2023年1月22日(日)21:00まで購入可能。
プロフィール
さらば青春の光(サラバセイシュンノヒカリ)
左 / 森田哲矢(モリタテツヤ)
生年月日:1981年8月23日
出身地:大阪府
右 / 東ブクロ(ヒガシブクロ)
本名:東口宜隆(ヒガシグチヨシタカ)
生年月日:1985年10月6日
出身地:大阪府
2008年8月結成。大阪で活動したのち2013年に上京し、個人事務所「ザ・森東」を設立する。第1回大会から出場してきた「キングオブコント」では6度決勝に進出した。「さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ」(TBSラジオ)ほか、レギュラー番組多数。YouTubeチャンネル「さらば青春の光Official Youtube Channel」でさまざまな企画やコントを公開している。