さらば青春の光「四季折々」ステージから見た“絶景”に何を思う、再確認した単独ライブの意義

さらば青春の光が今年1月から4月にかけて単独ライブ「四季折々」を開催した。新型コロナによる全公演中止を経て、1年越しに実現した全国5都市6会場を巡る自身最大規模のツアー。11月17日に発売されたDVDには彼らが「完成形」と話すツアー終盤の東京公演Bの模様だけでなく、1会場目の東京公演Aで披露された2本のコントも惜しみなく収められ、さらにコント「動くなJASRACだ」から派生したユニークなミュージックビデオも楽しむことができる。

コンビの軸としている単独ライブをコロナ禍によって断念しながらも、めげることなく力強い活動を展開してきたさらば。ツアーが開幕してみれば、目標としていた「動員1万人」にも間もなく手が届くところまで来た。このインタビューでは、2人の思う単独ライブの意義を今、改めて尋ねる。また「史上最高」と評する声が続々と上がった「キングオブコント2021」の感想や、次回公演についても聞いた。

取材・文 / 狩野有理撮影 / 渡会春加

“仕事の幅”を見せている

──今回のツアー「四季折々」は、新型コロナウイルス感染拡大による中止を経て1年越しの開催となりました。コロナの影響が大きかった2020年、さらば青春の光のお二人はどうお過ごしでしたか?

森田哲矢 それが、なぜか忙しくなったんですよ。だから複雑な気持ちではありましたね。

──忙しくなったというのは、単純に新しいお仕事が増えて?

森田 そうです、そうです。世の中の流れとは矛盾しているなーとは思いながら。自家発電的な活動も多かったので、その副産物として生まれた仕事がけっこうあったんでしょうね。こういう大変な状況でも、アイデアを持ってとりあえず何かやればなんだかんだ食っていけるんだなと思いました。

──たくましいです。東ブクロさんはどうでしたか?

東ブクロ うーん。忙しい時期があったはずなんですけど、あれ?みたいな。

森田 こいつには暇な1年だったんじゃないですか?

東ブクロ できることならコロナも何もなかった2年前に戻りたいですけど。まあまあ、事務所としては順調だったんじゃないですか?

森田 順調じゃないよ! 誰が言うてんねん!

東ブクロ なんとかやれてるやろ。

森田 まあ、なんとかはやれてますね(笑)。

──ここ最近は以前にも増して幅広いお仕事をされている印象がありますし、つくづく強い事務所だなと思わされます。

森田 もしかしたら一番幅を見せている芸人かもしれませんね。モルック、猫、アイドル、DIY、ゴルフ、Eテレ、風俗番組……。こいつを抱えながらにしてここまで成長できたのはよかったです。

さらば青春の光

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お客さんが100%入った景色は絶景

──まだ制限も多いさなかだった2021年1月に開幕したツアー。席を間引いていたとはいえ、お客さんのいる景色を久々に目の当たりにして感慨深いものがあったのではないでしょうか。

森田 泣きはせんけど、正直ちょっと泣きそうになる感じはありました。(お客さんが)入った!っていう。半分ではありましたけど、やっと入れることができた。ファイナルのときには100%入れられたので、それはもう絶景でしたね。それが普通の光景だったはずなんですけど。

東ブクロ 声を出して笑っていいのかというお客さんの不安もあったでしょうし、最初の笑いまでのハードルが昔より高くなっているんじゃないかと予想していたんですよ。だから1個目の笑いが来たときのホッとした感は、今まで十何年と舞台に立っていますけど初めての感覚でした。制限や不安もある中、果たして皆さん劇場に足を運んでくれるのか、笑ってくれるのかっていうのは心配やったんで。

森田 ただ、せっかくツアーで全国各地に行っているのに打ち上げができないとは。一体何を楽しみに……打ち上げのために行く、みたいなところもあるじゃないですか(笑)。それは残念でしたけど、各会場のお客さんに喜んでもらえたのはありがたかったですね。

森田哲矢

森田哲矢

──こういう状況下でツアーを無事完走できたことは、単独ライブの意義を再確認するきっかけにもなったのでは?

東ブクロ ちょっと前までは僕らの単独なんて東京でしかできなかったのに、こうして規模が大きくなっていろんなところに行くようになって、最初は面倒くさいなと思ってたんです。

森田 なんでやねん!

──(笑)。

東ブクロ 昔は、単独なんて1回やってウケた、ウケへんかった、でええやん!って思っていたんですよ。でも各地に行って喜んでもらえていることを肌で感じられたり、「ここはこの地方でウケるんや」とか反応の違いが面白かったりして、いろんなところで開催できるのは楽しいなと思うようになりました。だからこういうご時世ですけど、できる限りは続けていきたいって今は思いますね。

森田 僕ら、大阪から東京に上京してから単独やらんかった年なんてないんですよ。だから去年は「やらんでええんや」っていう新鮮な感覚と、「やらんでええんか?」みたいな焦りもありました。

──お二人にとっては「やらないわけにはいかないもの」になっているわけですね。

森田 単独ライブをやらないのは、芸人の仕事の8割くらいをやっていないのと一緒みたいな感覚があって。だから2020年はモヤモヤしてましたね。

さらば青春の光

さらば青春の光

ツアー期間中にネタを差し替えて「四季折々」が完成

──開催中止を発表した際、それと同時に振替公演の日程もいっぺんに告知していたじゃないですか(参照:さらば青春の光ツアー「四季折々」全公演中止、2021年に同規模の延期公演へ)。連日さまざまなライブの中止が発表される中、そのお知らせが個人的には希望だったというか、明るいニュースにも感じられました。

森田 あ、ほんまですか? 僕は僕で、ネタを作る身としては「よっしゃ延びた」っていう気持ちではありましたけどね(笑)。実際、よりパワーアップできたと思いますし。

──2020年の中止を決めた段階ではネタはどれくらい完成していたんですか?

森田 できていたものもあり、できていないものもあったって感じです。

──延期となったことでじっくり時間をかけてネタを考えられたのでは。

森田 それもありつつも、やっぱ僕らみたいな人間はズボラやから、「よっしゃ延びた」っていう余裕が生まれて最初は遊びましたね(笑)。で、「やばいやばい、そろそろやらな」と。でも、できていたネタももう1回考えてみようかとか、これは差し替えたほうがいいんじゃないかとか、いろいろ試行錯誤できたと思います。

さらば青春の光

さらば青春の光

──ツアー開幕後にもネタを差し替えていて、最初の東京公演Aと終盤の東京公演Bで内容が異なります。この変更にはどういう意図があるのでしょうか?

森田 まず本数が多いなっていうのがあったので1本減らしたかったんです。あとはお客さんの反応的にもっとウケるネタにしたほうがいいだろうということになって、1本は差し替えました。それによって公演の全体の尺的に一番しっくりくる形になりましたね。

──予備ネタをストックしていたということですか?

森田 いやいや、東京Aと東京Bの間に急遽作ったんですよ。名古屋公演で初めてやったのかな? そのネタがよかったんです、お客さんの反応が。その差し替えたネタは「鬼食育」なんですが、これを入れたことによってライブが完成した感じがしましたね。前のネタが悪かったわけではないんですが、今回の「四季折々」としてはDVDに収録されている東京公演Bが一番いい流れになったなと思っています。

さらば青春の光

さらば青春の光

東ブクロの等身大の狂気

──東ブクロさんは今回はどの段階でネタ作りに参加されたのでしょうか。

東ブクロ 今回、ほぼゼロです。

──え、ゼロ?

森田 設定が出揃ってからですね。作家が作った叩きの台本をブクロに渡して、ニュアンスを伝えて、やりながら詰めていくっていう。

東ブクロ 「爆弾魔の父」は、打ち合わせで案を出すよりもう「やったろ」みたいな感じで本番で出したりもしましたけど。

──さらばのコントはネタによってボケ、ツッコミが替わりますが、単独ライブではそのバランスも考えていますか?

森田 なんとなくは考えます。でも、おもろさ重視です。基本的にはブクロがボケているネタのほうがポップやし、ウケるんですよ。こいつの“サイコみ”が生む設定っていうんでしょうか(笑)。そっちのほうが作ってて楽しいですし。これはさせられへん、ブクロには向いてないっていうのは僕がやるようにしてます。

──まさに今回も東ブクロさんの狂気がよく出ていますね。

森田 ブクロじゃないとおもろないですよね。

東ブクロ 僕としてはやりにくいですよ、めっちゃ。

東ブクロ

東ブクロ

森田 いやいやいや、等身大でやってくれてますから。

東ブクロ 等身大で“爆弾魔の父”やってないわ!(笑)

森田 「奈良南高校吹奏楽部」「爆弾魔の父」「動くなJASRACだ」「鬼食育」はブクロのサイコみを味わえるのでオススメです。4種類の“変な奴”を楽しめます。こいつ、年々変な奴の引き出しが多くなってきてるんで(笑)。

──反対に東ブクロさんのオススメは?

東ブクロ 「施設王」は森田の最近亡くなったおばあちゃんがモチーフになっているので、思い入れはあるんじゃないかなと。

森田 いや、そんなにないかな。

東ブクロ ないんかい。

──「あんた誰や?」の動画は以前話題になっていましたね。

森田 まあまあ、「天国のばあちゃんに見てほしいです」って書いといてください(笑)。