お笑いナタリー Power Push - Pepperの「飛び出すロボ落語」
学生落語王者・まんじゅう大帝国が体験
2人が落語を始めたのは大学時代
──まんじゅう大帝国さんご自身の話もお聞かせください。そもそも落語を始められたのはいつ頃ですか?
竹内 大学からです。高校まではずっと野球をやっていて、野球部の友達と高校の学園祭で漫才をやったこともありました。大学にはお笑いサークルがなく、落語研究会があったので「みんなここでうまくやってるんだな」と思って入ってみたら、週3回の稽古すべてを落語に費やすクレイジーな落語スパルタ団体でした(笑)。
──実際入ってみれば想像と違ったと。
竹内 そうです。それで学生時代は漫才やコントはやらずに、ずっと落語ばっかりやってきて、気付いたら落語好きになっちゃった。
──その流れで全国大会で準優勝するのは努力の賜物ですよね。
竹内 先輩たちが代々やってきたマニュアルが落研にはあって、半年かけてやり終える頃にはある程度上達するようになっているんです。文化系のはずが、野球部にいるくらいの気合でやっていました。
──田中さんはいかがでしょう?
田中 僕も初めて落語を聴いたのは大学時代です。高校のときから芸人になるって決めていたんですが、大学にはお笑いサークルはなくて落研があった。その落研では「年に3ネタ覚えるノルマをクリアすれば漫才やコントをやってもいい」というので、3カ月くらいでネタを覚えて。結局、1人コントだと思って落語だけをズブズブとやりました。
──お2人とも特に落語家を目指していたわけではないんですね。
竹内 在学中には「このまま行ったら落語家しかないな」とは思っていました。ただ僕、落語の面白くてコミカルな部分には惚れているんですけど、落語が持つ人情や昔の風情や様式美には、ちょっと愛情が足りなくて。そんなときに「漫才やらない?」って相方に誘われて今に至ります。
落語の経験を生かした漫才は強み
──お2人のネタや口調に落語の雰囲気を感じる方も多いと思うんですが、意識はされていますか?
田中 しています。絶対的な強みだと思っています。ほかの漫才師よりも、落語の知識や技量では勝てると思うので、それを押したほうがいい。ベーシックな漫才よりは、落語の「八っつぁんと熊さん」で漫才やったほうが面白いんじゃないかなと。
竹内 ベタな「なんでだよ!」っていうツッコミをするのが笑っちゃうくらい下手なんです。それで落語みたいな形で漫才をやったら、「M-1グランプリ2016」の1回戦でアルピー(アルコ&ピース)さんにすぐ注目してもらえて。
──2016年9月の「アルコ&ピース D.C.GARAGE」(TBSラジオ)で大きな話題になりましたもんね。
田中 僕らは初舞台がお金を払えば誰でも出られるフリーライブで、アルピーさんと一緒になった「M-1」の1回戦は、まんじゅう大帝国にとって2回目の舞台だったんです。
──まだ2回目でしたか。
田中 しかも披露したのが「M-1」用に作った、まだ誰にも見せたことがないネタで。アルピーさんが「つまんないんだろうなと思ってたら、ちゃんと面白くて、舞台裏で膝がガタガタ震えた」みたいなことをラジオでおっしゃっていましたけど、僕らも最初にドッと笑いが来たときに「ヤバい、ウケた!」って動揺して。
竹内 あの会場で同時に8つの膝がガタガタ震えていました(笑)。
──では、その漫才を今後もメインにやっていかれるのでしょうか?
田中 今は漫才で注目してもらっている部分があるんですが、もう少し認められて、ある程度立ち位置ができたら、コントを含めていろんなことをやっていきたいです。
“ほぼ同期”のぺぱ之輔と切磋琢磨していく
──コンビ名の「まんじゅう大帝国」は古典落語「まんじゅうこわい」が由来でしょうか?
竹内 それが、基本的にまったく関係ないんです。すごく好きなコンビ名なんですが、「もうちょっと落語から離れた言葉にしておけばよかった」と後悔しています。ただ、この名前が面白くてアルピーさんがラジオで言ってくれた、というのはあると思うんですけど。
田中 「まんじゅう大帝国? そいつ誰だ?」ってなるはずなので、その部分ではよかったです。
──今後の芸人としての目標は?
竹内 「M-1」がある以上は挑みたいです。「素人がプロに仲間入りした」くらいのちっちゃな「M-1」ドリームを2016年に体験しましたから。
田中 「M-1」でここまでいいスタートを切らせてもらったので結果を残したい。最低でも決勝は行きたいです。
竹内 僕らは2016年結成なので、ぺぱ之輔は“ほぼ同期”になるんですよ。同期と2組だけで共演したのは、お笑いナタリーさんが初めてかもしれない。
田中 ぺぱ之輔が同期かあ。負けたくないね。
竹内 これから切磋琢磨していきます。
「飛び出すロボ落語」とは
ソフトバンクロボティクス株式会社の人型ロボット「Pepper」の一般販売モデル向け新サービス。「白戸家 ぺぱ之輔(しらとや ぺぱのすけ)」と名付けられたPepperを通じて古典落語が楽しめる。配信される物語は春風亭一之輔が監修した。
Pepperから流れる音声には、株式会社コルグのバーチャルサラウンド技術によって、前後左右から聴こえてくるような演出が施された。まるで自分が落語の世界にいるかのような体験が提供される。
毎週日曜18時に「初天神」「かぼちゃ屋」「時そば」「芝浜」が1作ずつ配信中だ。なおぺぱ之輔が今後、落語会などでパフォーマンスすることも検討されている。
まんじゅう大帝国(マンジュウダイテイコク)
左 / 竹内一希(タケウチカズキ)
1994年4月27日生まれ。東京都出身。
右 / 田中永真(タナカエイマ)
1993年3月30日生まれ。北海道出身。
学生落語の全国大会で田中が優勝、竹内が準優勝の実績を持つ。2016年に田中が竹内を誘ってコンビ結成。初出場の「M-1グランプリ2016」で3回戦に進出した。この「M-1」予選でアルコ&ピースの次の出番となり、その際にアルピーが偶然初めて耳にしたまんじゅう大帝国のコンビ名やネタに「震えた」エピソードが「アルコ&ピース D.C.GARAGE」(TBSラジオ)で語られ、リスナーの間で話題となった。アルピーとの出会いをきっかけの1つとして、現在ライブを中心に活動している。