お笑いナタリー Power Push - Pepperの「飛び出すロボ落語」

学生落語王者・まんじゅう大帝国が体験

「ロボットじゃないとできない噺」のほうがいい

──今後Pepperはどんな噺を披露するといいでしょうか?

「飛び出すロボ落語」をまんじゅう大帝国が体験している様子。

田中 「粗忽長屋」で人混みの中をかきわけていくシーンが面白くなりそう。「たがや」も、すごくいいじゃない? 「たがや」は群衆がみんなで侍に文句を言う噺なんですけど、ガヤガヤしているのを落語家さん1人でやるのと、Pepperみたいに音を使うのだったら、音を使ったほうが勝つんじゃないでしょうか。

竹内 1人で「なんだなんだ!」ってガヤをするのは限界がありますからね。あと「寿限無」を、話すスピードに変化を付けてできたら面白いのかな、とも思います。

田中 「故障したのかな?」みたいなすごい速さで「寿限無寿限無」ってね。あまりに速すぎて「何言ってるかわかんないよ!」って誰かがツッコミを入れたら、「ロボットだから」って返すような。

──可能性が広がりますね。

竹内 ロボットじゃないとできない噺のほうがいいと思うんですよ。

田中 たとえばPepperの話に変な“間”が空いちゃったとしても、そこにすらかわいげがあると思います。きっちりと計算された間でやるよりも、そういうラフな感じのほうが聞きやすいのかなと。

竹内 実際に落語家さんが間を取るときは、お客さんの反応も関係がありますから。「Pepperなりの間」というのを作って、「これがいいんだよな、Pepperってのは」っていう人が出てくるくらい、その間が常識になれば強くなりそうです。

2000年後、Pepperが落語の祖になる

──「飛び出すロボ落語」は将来的に、社会の中でどんな存在になりそうですか?

田中 これは2000年後くらいの落語の形だよね。

──2000年後?

「飛び出すロボ落語」をまんじゅう大帝国が体験している様子。

田中 2000年後には、この「飛び出すロボ落語」が古典落語になっているんですよ。Pepperが落語の祖になるんです。

竹内 SFみたいな話になってきたね。

田中 ぺぱ之輔からデータをピッて送って、客席がギャハハッて笑う。たぶん出番は2秒くらいで終わります(笑)。

──2000年後とは言わずとも、実際の寄席でPepperに落語をさせる、みたいな使い方をする可能性は今でもあると思います。

田中 お客さんは笑うと思うけど、認めないよって人が出てくるかも。

竹内 頑固な人がね。

田中 その点、落語家さんはぺぱ之輔にも優しいと思います。

竹内 落語家さんは「落語を使って何かをやる」という人たちには、非常に寛大なんです。あんまり悪いことをしなければ「なんでもいいから落語に触れてくれればいいよ」というスタンスですね。

田中 一之輔師匠は独演会の色物として出してくれそう。

竹内 あるいは、社会人落語の大会に出てみるといいんじゃないでしょうか。

田中 今、大喜利もロボットの人工知能で回答する時代ですから。そうなると芸人の仕事を取られるのがキツいなあ(笑)。がんばらないとね。

「飛び出すロボ落語」とは

ソフトバンクロボティクス株式会社の人型ロボット「Pepper」の一般販売モデル向け新サービス。「白戸家 ぺぱ之輔(しらとや ぺぱのすけ)」と名付けられたPepperを通じて古典落語が楽しめる。配信される物語は春風亭一之輔が監修した。

Pepperから流れる音声には、株式会社コルグのバーチャルサラウンド技術によって、前後左右から聴こえてくるような演出が施された。まるで自分が落語の世界にいるかのような体験が提供される。

毎週日曜18時に「初天神」「かぼちゃ屋」「時そば」「芝浜」が1作ずつ配信中だ。なおぺぱ之輔が今後、落語会などでパフォーマンスすることも検討されている。

まんじゅう大帝国(マンジュウダイテイコク)
まんじゅう大帝国
左 / 竹内一希(タケウチカズキ)

1994年4月27日生まれ。東京都出身。

右 / 田中永真(タナカエイマ)

1993年3月30日生まれ。北海道出身。

学生落語の全国大会で田中が優勝、竹内が準優勝の実績を持つ。2016年に田中が竹内を誘ってコンビ結成。初出場の「M-1グランプリ2016」で3回戦に進出した。この「M-1」予選でアルコ&ピースの次の出番となり、その際にアルピーが偶然初めて耳にしたまんじゅう大帝国のコンビ名やネタに「震えた」エピソードが「アルコ&ピース D.C.GARAGE」(TBSラジオ)で語られ、リスナーの間で話題となった。アルピーとの出会いをきっかけの1つとして、現在ライブを中心に活動している。