一瞬でも同じクラスじゃなかったら和牛は誕生しなかった
──NSC初日の緊張感は覚えていますか?
川西 当日までにいろいろ調べて「入学式で隣だった奴に声をかけて組んだのが今の相方です」みたいなエピソードを見つけてしまったもんだから、めっちゃ隣の子を意識してました(笑)。
──一生の相方になるかもしれない人が隣に座っているぞ、と。
BKB 誰やったか覚えてる?
川西 めっちゃ覚えてんねん。吉井くん。
BKB 吉井大二郎?
川西 そう。
水田 今テレビのディレクターやってる。
川西 「大二郎」やからめっちゃ覚えてて。「賢志郎」と「大二郎」で並んでたから。
水田 そのコンビめっちゃええやん(笑)。
BKB 組まんかったん?
川西 逆隣もいるしさ。
一同 あはははは!(笑)
BKB 真面目やなあ。
──水田さんは入学式で誰かに声をかけはしなかったんですか?
水田 僕は入学式では誰ともしゃべれんくて、「明日は絶対隣の奴としゃべる」って決めて行ってしゃべった奴が2700の八十島でした。
──へえ!
水田 きっしょい顔の奴おるわあと思って。
BKB きしょかった?
水田 当時すごかったよ(笑)。
──コンビを組もうとかではなく、しゃべっただけ?
水田 はい。単純に友達作らなあかんと思って。いろんな人としゃべらないと相方も見つからへんから。最初のほうはずっと八十島たちとつるんでいましたね。
──地元の友達と一緒に入ったBKBさん以外は相方探しから始めたわけですよね。順調にいきましたか?
たかくら 東京校ははじめに相方探しの時間がありました。雑談したりして、フィーリングカップルみたいな。
水田 僕の場合は、めっちゃ相方を探している奴がいたんです。各クラスの授業終わりを待っていろんな人に話しかけていて。6、7人とゲーセンに行ったり、お茶したりしていたんですけど、やっぱりみんな人見知りやからちょっと距離を取ってるんですよね。でも僕はそいつとけっこうしゃべっていて、「じゃあ」ってことで組みました。それがピーナッツタンクです。
──ピーナッツタンクはどうだったんですか?
BKB 面白かったですよ。入って2カ月くらいしたら上から順にAが10組、Bが100組、Cがあとの500組ってピラミッド型にクラス分けされるんですけど、ピーナッツタンクはちゃんとBでした。
川西 Bかい!(笑)
水田 Bは真面目に行ってたらなれんねん。
BKB いやいや、真面目に行ってて100デシベル(BKBのコンビ)はCやから!
川西 100デシベル、Bやったんちゃうん?
BKB 一発目のクラス分けでBになって「よっしゃ!」と思ってたら、最初のネタ見せですぐCに落ちた。
川西 あはははは!(笑)
BKB でも、そのBクラスのときに信二と連絡先交換してるんですよ。だから僕が一瞬でもBにおらんかったら和牛は生まれてないんです。
水田 ほんまやな。
活躍する同期が全体を引っ張り上げた
──大阪26期はかまいたち、藤崎マーケット、天竺鼠など、早くから活躍したコンビがたくさんいます。当時から目立つ存在でしたか?(関連特集:かまいたちインタビュー)
水田 その3組は在学中からAクラスで、卒業してもそのままの勢いでオーディションに受かったり、テレビに出たり、賞を獲ったりしていて、華々しかったですね。
BKB この3組はやっぱりすごかったな。
水田 それを追いかけていったから26期の第2波みたいなものが起きたと思う。
川西 うんうん。引っ張ってもらった。
水田 1人だけ突出していても「あいつは特別やから」って言い訳していたと思うんですけど、3組もいっぺんにガッと行ったから言い訳できない。「負けるか」ってなります。
BKB Aクラスだった奴が10年後も残ってるってすごない? こんな言い方あれやけど、先生ってやっぱ見る目あったんやなって思ってまうよな(笑)。
水田 誰が見てもおもろかったんやと思うで。
BKB かまいたち、藤崎、天竺とはNSC中にしゃべったこともないんです。卒業して、がんばって同じライブに出られたらうれしかったですもん。同期なんで変ですけど、(天竺鼠)川原が普通に話しかけてくれてめっちゃうれしかった(笑)。
水田 ほんま? 俺はもう「くそう!」としか思ってなかったよ。
BKB あはははは(笑)。俺は羨望になっちゃってたから。面白い同期にちょっとずつでも追いついていると感じられると励みになりましたね。
──たかくらさんの同期にはシソンヌやチョコレートプラネット、パンサー向井さんなどがいます。
たかくら そうですね。シソンヌとかチョコプラはどんどん上に行って、悔しいなと思っていました。なかなか僕らはネタがハネずに悶々としていたんです。でも「引っ越し」っていう武器を見つけてからは「こういう道もあるんだな」と。違う方向からでも追いつけたらいいなって思います。
NSC在学中は自分をちゃんと見つめ直す時間
──NSCで得たものとして、何が一番大きかったと感じますか?
水田 人前でネタをやることは自分をさらけ出す作業やから、ハートがめっちゃ強くなったと思います。大勢の前でスベるって、全否定されたような気持ちになるんです。あんな思いをすることなんて普通に生活していたらないですから。度胸がつくと思いますし、どの世界に行ってもあの経験は役立つんじゃないでしょうか。しかもNSCの場合は、最初はみんながスベっている状態なので、自分1人だけで傷つかなくていいというか。スベることへの耐性をつけやすい場所なのかなと思います。
──スベるという経験を繰り返すことで心が強くなるわけですね。川西さんはいかがでしょうか。
川西 NSCに入ってくるときってみんな自分のことを面白いと思っているし、売れることを期待しているんですけど、やっぱりそううまくはいかない。「こんなところが足りてなかった」と気づかされて、すごくしんどい時間を多く過ごすことになります。でもそれって大事なことで、何年後にも関わってくることやから、足りていない自分とちゃんと向き合って見つめ直す機会を与えてもらえたのは大きいですね。
BKB 「自分は何者でもなかった」って気づかせてくれるよな。講師の先生には本当に嫌なことばっかり言われてきたから。「君はほんまに売れへんよ」とか。
川西 あはははは!(笑) そんなこと言われたん?
BKB ネタ見せたあとに、「はい、すべての悪い例が詰まった漫才でした」って言われた。
川西 うわっ。キツいなあ。
水田 今のNSCではたぶん言わへんけどな。当時はけっこうキツめだった。
BKB でもそれでちゃんとヘコんで、信二が言ったようにメンタルが鍛えられたと思う。「こっから売れて全員見返したろやないかい」っていう雑草魂は生まれました。だからNSC中にまったくおもんなくても、経験にはなっているので、卒業してからでもあがけばなんとかなる可能性はゼロではないです。「ゼロ!」って言われてもゼロじゃない。
川西 あははははは!(笑)
──バイクさんは「ゼロ」って言われたんですもんね。
BKB はい(笑)。でもゼロじゃない。それは講師が悪いんじゃなく、そのときはほんまにゼロやったんです。
川西 「このままでは……」とか足して言ってほしいよな。
BKB もしかしたら言ってたのかもしれへんけど、みんなの前で「ゼロ」って言われてるから恥ずかしすぎて記憶がないのよ(笑)。でもそれで変なプライドもなくなった。あとNSCに行っててよかったことは、浅はかな言い方かもしれないですけど、一生の友達ができたこと。フリーで入ってくる人もいますけど、やっぱり僕らより寂しそうですもん。
──スベったり怒られたりして恥ずかしい経験を共にした仲間だからこそ特別な絆でつながっているんだろうなと思います。
BKB 今でも残っている同期全員がお互いを気にかけてます。
川西 感謝してるしな。
──たかくらさんはNSCで一番大きな収穫はなんですか?
たかくら NSCって人が多いので、いろんな人との人脈ができたのは引っ越し会社としては大きいです。芸人さんだけじゃなく、ほかの業界に行った方とのつながりもありますし。あとは皆さんがおっしゃったようにメンタルがかなり強くなったと思います。例えば引っ越し屋にクレームが入ったとしても全然動じないというか。
一同 あはははは!(笑)
川西 あかんやん!
BKB それはクレームの理由によるけどな(笑)。
たかくら もちろんクレームが入ったときは誠意をもって謝るんですけど、ここから逆転しようっていう考え方ができるようになりました。
水田 え、クレームくるの? 任せてほんまに大丈夫?
川西 ほら、すぐクレーム言う客来たで(笑)。
たかくら 大丈夫です!