お笑いナタリー Power Push - ナタリー×Netflix
恐るべし!水道橋博士がNetflixに脅威を感じる理由とは
日本ではなかなかない壮大なコント
ウェット・ホット・アメリカン・サマー:キャンプ1日目
──最後に「ウェット・ホット・アメリカン・サマー:キャンプ1日目」について。そもそもアメリカンコメディはご覧になりますか?
映画では観るけど、ドラマでは観てないですね。だから「ウェット・ホット・アメリカン・サマー:キャンプ1日目」を最初に観たとき、ギャグなのかどうかさっぱりわからなくて。なんで10代の設定でこれだけ40代の中年の人が並んでるんだろうって。調べてみたら2001年の映画のリメイクをやってるのがわかって、これが日本未公開ながらアメリカではカルト的な人気のある青春映画で、2001年時点では若手俳優程度だったのが今や主役級の俳優になってて。そのオリジナルキャストが集まって高校生の役をやっている。あのブラッドリー・クーパーやポール・ラッドも出世前だもんね。それがめちゃめちゃしょうもない役で出るんだな、と(笑)。この機会に、この伝説的な映画のほうもNetflixの吹き替えで観ちゃいました。
──下ネタもあり、ドラッグも出てきて過激な内容です。コメディとしては好きなタイプですか?
好きです。観ている途中で「これユダヤ系の人たちのキャンプなんだ。だからユダヤジョーク的なことやってんだ」というのがわかって面白いです。「アニマル・ハウス」みたいな。WASPとの対立構図を作っていて。
──お笑いナタリー読者に、「ウェット・ホット・アメリカン・サマー:キャンプ1日目」のここが日本のお笑い好きでもきっと楽しめるよ、というポイントがあれば教えてください。
“童貞モノ”なんだろうね。童貞の人のセックスコメディっていうジャンル。日本の童貞モノも「みんな!エスパーだよ!」とか「電車男」とかがあるけど、アメリカは一大ジャンルで秀作もいっぱいあるからね。「スーパーバッド 童貞ウォーズ」とか「40歳の童貞男」とか。やはり童貞っていう人の心理的な錯乱がすごい。妄想だけで人格異常者になってる。自分も思い当たるだけに「童貞だったらこうだよな」っていう感じ。それを40過ぎた人が、みんな16歳っていう設定でやってるんだもん。
──本物の子供たちとおじさんたちが同じキャンプで。みんなホットパンツ穿いて。
もはやみんな2001年当時の地位じゃなくて大スターだもんね。これだけストーリーラインが長い設定の中で、完全に下ネタコメディでやっていく、って日本ではなかなかないんじゃない? 壮大なコントだもんね。
クリエイターにとって心強い
──最後に総評として、Netflixを体験して気になったことや期待したいことを教えてください。
ひと言。恐るべしだと思ったね。これだけサクサク観られて質の高いものを作られたら、有限な時間の取り合いをするのは間違いない。海外ドキュメンタリーも気になるから観ていきたいな。ゆくゆくはテレビと融合していくと思います。「火花」はみんな観ると思うしね。監督5人くらいでいろんな解釈でやってほしい。
──日本のテレビのリモコンにもNetflixボタンが付き始めています。
パソコンでの視聴は慣れてないから、テレビ受像機で観たいですね。あとは1.5倍速で再生できる機能があればいいんだけど。
──映像配信というと、これまではテレビ局が番組を2次使用するか、レンタルビデオ会社が作品の権利を買い付けて配信するのが一般的だったと思うんですが、今はNetflixのような配信会社がオリジナルドラマを作るようになりました。作品を提供するシステム自体が変わってきたのかなとも思います。
松本(人志)さんは以前ネット(=第2日本テレビ)で「Zassa」っていうコントをやってたけど、採算が合わなくて次につながらなかった。NHKでコントを撮ったときも、NHKの範囲内でやらなきゃいけなかったり。そういう意味では松本人志チームがNetflixでコントを作るのを観てみたいですね。新作を発表するのに一番いい形かもしれない。
──日本発のコンテンツが世界の人の心をつかむケースもありそうですね。
最初から国内って限定しないで、すぐ世界に行けるね。テレビを作ってきたクリエイターにとっては心強いんじゃないでしょうか。
水道橋博士(スイドウバシハカセ)
1962年8月18日生まれ。岡山県出身。オフィス北野所属。1987年に浅草キッドを玉袋筋太郎と結成した。「別冊アサ(秘)ジャーナル」(TBS)、「総合診療医 ドクターG」(NHK総合)、「チャージ730!」(テレビ東京)、「バラいろダンディ」(TOKYO MX)ほかに出演中。
2015年10月9日更新