「無学 鶴の間」第20回レポート
初対面から2日連続でトントンと共演
生配信で、いただいた服を着て出たら喜ぶだろうと考えた鶴瓶は、ブルゾン柄の上着をコーディネートして舞台に上がっていた。しかし直前、マネージャーから、「それ、寝巻きですよ」と指摘されたと苦笑する。
見れば、ルームウェアやパジャマのブランドのカーディガン。鶴瓶自身、「可愛いからええやんか」と納得はしてはいるものの、「でも寝巻きと言われたらずっと寝巻きと思てまうやん」と、図らずも寝巻きのまま舞台に上がった格好となっている。
この日は2024年初の「無学 鶴の間」。年末年始、鶴瓶は18日間のハワイでの休日を過ごしたあとで、「仕事で舞台に上がるモードじゃないんですよね」と、ついポロリ。
「でもね、これ、全部ゲストがさばいてくれますからね。そういう意味ではラクですよね。オモロいゲストですから」
鶴瓶がそう言うのも納得する。これから呼び込むゲストはコント師として数多くの舞台を踏んできた芸人で、昨年の「キングオブコント」優勝者のサルゴリラだというのだ。
とはいえ、鶴瓶がサルゴリラの2人と話すのはほぼ初めてのこと。前日、鶴瓶は今田耕司と司会を務める「ザ・ベストワン」(TBS系)の収録を行った。そこにサルゴリラも出演。それが初対面だったのだという。
「こいつらオモロいなと思っていたんですけど、会ったことはなくて、トントンと、2日続けて会うてるんですよ」
この日は朝からずっと彼らのコントの数々をYouTubeで観続け、この舞台に活かそうと彼らのネタのことを一生懸命メモしてきたが、「でも、名前、ずっとブタゴリラって書いてたんです」と苦笑い。
「観てたらオモロいし、YouTubeずーっと観てて、それでここで会うたんですよ。だから向こう(サルゴリラ)がものすごいスターなんですよ。だから、わ! ブタゴリラ、ちゃうちゃう(笑)、サルゴリラや!ってなったんです。ツボにハマるとめっちゃオモロいんですよ。その世界を楽しんでいただきたいと思います。それでは紹介します。ブタゴリラ、いや(笑)、サルゴリラ、のお二人です。どうぞ!」
その呼び声に、赤羽健壱、児玉智洋が「よろしくお願いします!」とにこやかに登場するも、開口一番、鶴瓶の度重なる間違いに、「サルゴリラです!」と連呼。「いやいや、ほんま、ごめんごめん」と鶴瓶が笑う。
赤羽 僕ら、又吉さん(ピース又吉)にサルゴリラという名前を付けていただいたんですよ。でも師匠は「ブタゴリラは有吉(弘行)に付けてもらったんやろ?」って。
鶴瓶 なんやもう全然わからん(笑)。
児玉 ゴチャゴチャになってる。
鶴瓶 いや、違う! ちょっと待って。お前らのコントが、そういうのやねん、全部。
児玉 いや、俺らのせいにしないでもらっていいですか!?
鶴瓶 ウハハ。ちょっとずつ、ちょっとずつ、ちょっとずつ、オモロいっていうか。「ここオモロい」っていうのをそこばっかやるっていう。
同期は「よかったねえ」としみじみ安心してくれた
鶴瓶 (ネタは)誰が書いてるの? 2人で書いてるの?
児玉 そうですね。
鶴瓶 気持ち悪い奴らやな(笑)。
赤羽・児玉 ワハハ!
赤羽 そんなんが好きで。
鶴瓶 オモロいよなあ。「ここが好き!」っていうのがあるやろ? やっぱり。
赤羽・児玉 (頷く)
鶴瓶 俺は、どんなんが好きかわかってもらえるかどうかわからへんけども、「実際にあったこと」が好きなんですよ。伊丹の漬物屋のおばちゃんが、朝、掃除してはるんですけど、誰も人いてないんですよ、朝やから。だけど小さい声で宣伝してはるんですよ。「千枚漬いかがですかー。千枚漬いかがですかー。千枚ないけど」って言うて(笑)。
赤羽・児玉 ワハハハハ!
鶴瓶 でも、「今、こんなん言うたよね?」とも言われへんやんか(笑)。そういうのって好きやねん。めっちゃ。
児玉 ああ、確かに。僕らはこう、ちょっと気持ち悪いというか、変な雰囲気っていうか、なんて言うんですかね、台本で言うと「……」みたいな感じのところが好きなんですよね。
お互い東京・高円寺出身で、4歳の頃からの幼馴染だという2人。昨年のキングオブコントで優勝した際は、高円寺純情商店街のアーチに「サルゴリラ優勝おめでとう!」の横断幕が出るなど、地元の祝福もすごかったと話す。
「副賞でお米1トン、お米券でいただけて、母ちゃんに渡したら、ご近所さんに配ったって言ってて、それもやっぱりうれしかった」と赤羽。
「偉いな、お母さんは。周りに配って。周りも喜ばれるわな、それは」と鶴瓶。
赤羽は44歳になった今でも実家暮らしだと言い、この優勝を機に一人暮らしを始めようと思っていたが、横断幕を出してもらった今、「高円寺から出られない」と笑う。
コンビ結成は2016年。それ以前は「ジューシーズ」という名でもう1人を加えたトリオで活動していたため、芸歴自体は長く、その実力も知られてはいたものの、売れない時代も長かった。
「優勝してみんな喜んでくれたやろ? それまでは、『お前らいつまでやってんねん』っていう感じやったんちゃう?」と鶴瓶が言うと、「本当にそうです。周りの芸人もみんな売れちゃっているので」と頷く2人。
「同期で言うと、ハリセンボン、しずる、ライス、囲碁将棋、パンサーとかがいるんです。だから優勝しても『ヤッター!!』っていう感じじゃなくて、『よかったねえ』って、しみじみ安心してくれた」と話す。
コント「ばったり」披露
そして話題は、鶴瓶が年末年始に行っていたハワイの話へ。「行ったことある?」と鶴瓶が2人に訊くと、「行ったことないです。夢ですよ、お正月にハワイっていうのは」と声を揃える。ニヤけながら、「俺、ずっと行ってるでえ。ハワイ最高やわ」と鶴瓶。
「木梨(憲武)もな、長いこと行ってなかったら、帯状疱疹できたって。でもハワイ行ったら治ったって」と鶴瓶が言うと、「え!? 病気が治るなんて聞いたことないですよ。ハワイが帯状疱疹にいいって。ホントですか!?」と疑う児玉。「いやいや、木梨が言うとったんや。会うて聞いてみいな。挨拶する前に『帯状疱疹治ったん?』って」と鶴瓶。「急に! まず挨拶ですよ!」と鶴瓶をいなす児玉の言い方に、観客から笑いが起きる。ほぼ初対面と言いながらもさすが芸人同士、すでに阿吽の呼吸となっている。
ここで鶴瓶が、まずネタをと2人を促す。「でも着替えなあかんちゃうの?」と鶴瓶。
「1本目は大丈夫です。このままでいけます」と赤羽が言うと、「ズボラなネタやなあ」と鶴瓶。すかさず「まだやってないんだから!」「言い方!」と2人に返され、すると客からも「パジャマのくせに!」とツッコミが入る。
その言葉に3人も爆笑。
「厳しい客なやあ!」
小さな会場ゆえの親密さ。こういうやりとりも「無学」の醍醐味かもしれない。
サルゴリラの最初のコントは「ばったり」。
久しぶりに再会した2人。赤羽が一緒にいる彼女「みさちゃん」を紹介する。連れは彼女だけかと思いきや、今度はその横にいるみさちゃんのお父さんの弟を紹介する赤羽。さらに、そのおじさんが学生時代によく行っていたお好み屋の副店長、さらには、そのおじさんが学生時代によく行っていたお好み屋のライバル店にソースを卸している会社の広報担当……と、どんどんと人が増えていく。しかもいったいどういう関係性で集まった仲間なのか、その内訳が謎すぎて、児玉は戸惑いを隠せない。
それでも仲間を、淡々と、続々と、紹介し続ける赤羽の言い方と、その関係性に思いを巡らす児玉の表情の変化が、じわじわと面白みを増していく。中には、児玉のいとこのお母さんまでもいて、観客の頭の中にも、多種多様な不思議な一群が浮かんでくるのだ。そして最後は、赤羽が仲間に児玉を紹介するのだが、そこでまた思いがけない繋がりが明らかにされ、会場は爆笑。
拍手の中、鶴瓶が再び舞台へ。そこからはサルゴリラのネタの作り方についての話となった。
コンビでのネタ作りはすごく楽しい
鶴瓶 こういう気持ち悪いの、ぎょうさんあるよな。俺、「概要」が好きや。
児玉 「概要」っていうネタがあるんです。
赤羽 会社のプロジェクトの概要を発表するっていうネタで。社長が総製作費とかを発表するんですよ。その総製作費の数字がちょっと気持ち悪いっていうネタなんですけど、総制作費が130億240円、とか。
鶴瓶 ワハハ。
児玉 いる? その240円みたいな。
赤羽 総スタッフ数、1万2人、とか(笑)。
鶴瓶 ワハハハハ! これが好きやねん。1万2人(笑)。
児玉 言いにくいしね(笑)。
鶴瓶 ほかにコントの中でこういう細かいところ狙うっていうのは少ないよね。
赤羽 確かに数字は珍しいな、みたいなのはよく言われます。
鶴瓶 2人でそういうことずっとやってんの? 「ここ、こんなんオモロイな」って。
児玉 はい。代々木の喫茶店でずっと。
鶴瓶 2人でずっと? 喫茶店に怒られへん? 「もうちょっと、なんか注文してくださいよ」みたいな。
児玉 まあ、アイスコーヒー2杯くらいは。2杯目は安いんですよ。
鶴瓶 2杯飲むと安いの?
児玉 そうなんですよ。今、結構どこもそうですよ。
鶴瓶 ワハハ、何の宣伝やねん(笑)。俺、1人やからね。ネタ、誰かと打ち合わせするって、おかしいやんか。
赤羽 1人だとネタの練習とかってどうされるんですか?
鶴瓶 ネタの練習はほとんどしない。もちろん落語はするよ。でも、そういうネタは、こういうのあるなと思ったらメモして書くというか。
赤羽 頭の中で整理して。
鶴瓶 そうそうそう。これオモロいなとかいうのをね。
児玉 寂しくないんですか?
鶴瓶 お前、それアホの質問や(笑)。72歳に「寂しくないですか?」って!
児玉 ワハハ!
赤羽 ずっとそれでやられてるから(笑)。
鶴瓶 独居老人やで(笑)。でも寂しいと言われたら寂しいのかな。いや、寂しくないで。
児玉 僕らは2人でネタ合わせしてるから会話できるじゃないですか。ネタ作ってるときも反応があるっていうか。その後も俺ら、一緒に銭湯とか行くんですよ。すごく楽しいんですよ。だから1人だとなんか寂しそうだなって。
赤羽 (児玉に)やめろ! 師匠に「寂しそう」って!
鶴瓶が不思議に思っていること
フフフフと笑いながら、「でも1人でいろいろ考えて、こんなことあったな、あんなことあったなってメモ書くやんか。それは誰にも言わへんで、ここ(舞台)が最初やねん」と鶴瓶は続けた。
日常で実際に起きたこと、ふと気になったこと、面白いなあと思ったことを常にメモし、「こないだ、こんなことあったで」と話し出す。それが鶴瓶の話芸の形なのだ。
「三軒茶屋の交番あるやんか。こないだあそこで人と待ち合わせしてたけど、なかなか来うへんねん。俺(笑福亭鶴瓶)やで? そんなこと言うと傲慢やけど、わかるやろ、だいたい俺っていうのは。そしたら婦人警官の人が来て、『さっきから何されてるんですか?』って」
そんな鶴瓶の扱いに思わず吹き出す2人に、「おかしいやろ! なんで職質やねん!」と鶴瓶。
「『人を待ってるんですけど』と言ったら、『そうですか』って。いやいや、そうやろ! 交番目印に待ち合わせしとんのや!」
「そんなこと、起きるんですねえ」と赤羽が感心するように言うと、「起きる起きる」と、あたかも当たり前に頷く鶴瓶。
ほかにもメモにはこんなことも書いてある、と、常日頃不思議に思っていたことを話し出す。
「トイプードル。もともとあの頭が大きいのが最初(原種)らしいな。俺、知らんかった。小さいほうが可愛いやん。頭大きいのブッサイクやなと思ってたら、それから品種改良されて、小さくなったって」
すると、会場から再び強いツッコミが。
「昔、あんた、こんなん(アフロヘア)やったやん!」
二度目の観客から鶴瓶への鋭いツッコミに、サルゴリラの2人も爆笑。
「そうですよね! 師匠が初代トイプードルじゃないですか!」
鶴瓶 それとか、こないだもやけど、「1000円と420円です」って言われた。「と」いらんちゃうか?
児玉 細か!
赤羽 わかりやすいようにじゃないですか?
鶴瓶 1420円でいいやんか。そこに「と」入れたら余計ややこしいで。1000円「と」? これなんぼやろって、わからんようになったわ。
児玉 1文字入っただけですよ。
鶴瓶 1文字入っただけで気持ち悪いのあるよな。
児玉 ああ、だから俺らの「概要」のネタ好きなんですね。
鶴瓶 「概要」めっちゃええわ(笑)。誰が発見したん? あんな細かいの。
赤羽 昔から、数字で、オモロい数字を2人でなんか遊んでたんですよ。
児玉 そのままネタになったんです。
赤羽 1万2、とか。大きい数字の後に最後、2とか付いたらオモロイな、みたいな。
鶴瓶 やっぱ俺、1人寂しいなあ。
赤羽 (児玉に)お前が言うから!
鶴瓶 ワハハ。お前ら楽しそうやなあ(笑)。
鶴瓶は赤羽の理想の姿
2人の仲の良さがまた、新しいネタを生み出していく。サルゴリラのネタづくりの現場を垣間見たような瞬間だった。
「キングオブコント」優勝以来、テレビの出演も増えたこともあり、少しずつ顔が知られてきたというサルゴリラ。「道歩いてても言われるやろ? サルゴリラや!とか」と鶴瓶が訊くと、「あ、それこそ、ブタゴリラが多いです」と赤羽が笑う。それを聞いてうれしそうに「あ、ブタゴリラは間違いじゃなかったんや!」と鶴瓶。すかさず、「間違いです! 自信持たないでください」と児玉がピシャリ。
まずはサルゴリラという名前を全国的に広めていくこと。そのためにもネタを作り続けていくこと。賞レースとしては「M-1グランプリ」出場のチャンスも残っているが、「漫才に苦手意識があって、どうしてもコントが多いんです」と赤羽。YouTubeで2人のコントを見倒したという鶴瓶も「コントがしっくり来てるからなあ」と納得する。
赤羽 僕ら東京なので、ツッコミというのが普段からないんですよ。だから吉本の養成所に入って、初めてツッコミという行為をしたんです。最初めっちゃ照れました。人生初ツッコミ。やっぱり関西の方って普段から日常で「なんでやねん」ってやってるじゃないですか。
鶴瓶 そうそう、一般の人でも。
赤羽 そうですよね。さっきも「パジャマじゃないか!」って名ツッコミがね(笑)。
鶴瓶 だから日常やんな。でも、昨日の「ザ・ベストワン」でも、一般人の批評の仕方がすごいやんか。「この人たちのここがすごい」とか。
赤羽 街でね、コメントを録ってくれてて。
鶴瓶 なんであんなん言えんのやろ。
児玉 無駄に緊張しますもん。カメラとか。
鶴瓶 あ、そう。
児玉 もう緊張一切しないですか? するわけないか(笑)。
鶴瓶 俺か? でも日常やからなぁ、「家族に乾杯」も。行っておばあちゃんとしゃべってるだけやから。でも、この人(話す相手を)、緊張させたらあかんようにするわ。
赤羽 ああ、なるほど。
鶴瓶 めっちゃオモロいやん。一般の人って。だからそこを活かすためにどうするかなとは思うけれど。
児玉 なんすかね、すごいっすね。
赤羽 当たり前だろ!
児玉 いやいやいやいや、だって、初めてじゃないですか。師匠と会うのは。なんかすごいオーラもあるし。
鶴瓶 オーラなんかないよ。
赤羽 ある。
児玉 あるんですよ。あるけど、近寄りやすい、安いオーラもあるんです。不思議なんですよ、やっぱり。
鶴瓶 え、安い? 安いオーラ?
児玉 しょぼい。しょぼいオーラ。
赤羽 おい!
児玉 すごい師匠というのもあるんですけど、なんか全然触っても大丈夫みたいな。もうちょっとしたら、引っ叩いてもいいくらいの、「バカヤロー!」みたいな。やりませんけど(笑)。
鶴瓶 でもそれはうれしいよ、そこまで近いというのは。で、お前(赤羽)はどうなの?
赤羽 僕は、体型的にちょっと師匠に近いので、僕の理想のお姿というか。
鶴瓶 理想のお姿(笑)。
赤羽 何十年後かに師匠みたいになりたいと思います。
鶴瓶 俺はね、上岡龍太郎という人と一緒にやってたわけだからね。その上に横山ノックさんがいてはるの。このノックさんがめちゃオモロいの。上岡さん、オモロいよ。でもノックさんが、もうほんまに、叩けんねん。いや、ほんまには叩かないけど、叩けるような人やねん。
児玉 それはなんなんですか?
鶴瓶 可愛いの。人間が可愛いの。だから僕らの時代は、やっぱりノックさんになりたいっていう想いがあった。
赤羽 でもやっぱり、鶴瓶師匠みたいになりたいっていう方が多いですよね。後輩にビビられるタイプの芸人さんは、鶴瓶師匠みたいに舐められたいというか。ちょっと、言葉はあれですけど……(苦笑)。
児玉 言葉が難しいんだよなあ。師匠褒めるの。なんか悪口になっちゃう(笑)。
赤羽 大尊敬なんですけど、言葉間違えましたけど(笑)。
児玉 難しい……。説明しづらい……。
ラストはKOC優勝ネタ「青春」
3人の話にあっという間に時間が過ぎたが、もちろんこのままでは終わらせない。「お前ら、このまま帰れるわけやないで」と鶴瓶が釘を刺す。もう1本、コントを披露してもらう流れになっているのだ。2人が一度楽屋に戻り、コントの準備に入る間、鶴瓶は言う。
「ああなるまでにもやっぱりものすごい芸人の数いてるからね。僕は別に大会とか出えへんからあれやけど、大会出るとか言ったらものすごい緊張するやろな。俺はもうそんなんずっと避けてきたからね」
サルゴリラの2本目のネタは「青春」だった。「キングオブコント」決勝での2回目にかけ、優勝に導いたコントを、ここで観てもらおうと用意してくれていたのだ。
高校球児と野球部のコーチ、それぞれの役に入り込んだ2人の演技力にグッと引き込まれながら、「魚」が連呼されていくたびに、笑いが笑いを呼んでいった。2人の表情、言い回し、間とテンポ、何度も舞台を踏んできたからこそのライブ感。大きな拍手が鳴り、「オモロいな、やっぱり」と鶴瓶も2人を讃える。
「ありがとうございます」と2人の言葉を受けて、「皆さんも喜んでくれたと思いますけど、これからコントという魚で」と、言いながらもついつい口が綻ぶ鶴瓶。
「すぐ使うな、すぐ使って!」と児玉の言葉が飛び、「お笑いってオモロいよな」と、うれしそうな鶴瓶の顔が、笑いに包まれる幸せを観客に伝えた。
「無学 鶴の間」、2024年最初のゲストは、赤羽健壱、児玉智洋によるサルゴリラ。彼らが細かく積み重ね、編み出す「物語」、そしてその「物語」に観客を引き込ませる表現力。遅い優勝かもしれなかったが、ともに年齢を重ねた今の2人だからこそ、彼らのコントには、ほかのコンビには醸し出せない、奇妙さ、不可思議さが出現する。そして、今、そこに優勝の勢いが加わって、まさに、「今、観るべき」コント師だと思った。
プロフィール
笑福亭鶴瓶(ショウフクテイツルベ)
1951年12月23日生まれ。大阪府出身。1972年、6代目笑福亭松鶴のもとに入門。以降、テレビバラエティ、ドラマ、映画、ラジオ、落語などで長年にわたって活躍している。大阪・帝塚山の寄席小屋「無学」で、秘密のゲストを招いて行う「帝塚山 無学の会」を20年以上にわたって開催してきた。
サルゴリラ
お笑いトリオ・ジューシーズのメンバーだった赤羽健壱、児玉智洋が2016年に結成。2023年の「キングオブコント」では過去最高得点&史上最高齢で優勝を果たす。しずる、ライス、中村元樹とのユニット「メトロンズ」としても活動。5月3日~5日、単独ライブ「カレー&ラーメン2」が東京・ユーロライブで開催される。
サルゴリラ赤羽 (@akabass) | Instagram