2017年大会ではとろサーモンが優勝し、第13代王者に輝いた漫才日本一決定戦「M-1グランプリ」。今年の「M-1グランプリ2018」は準決勝の結果、エントリー数4640組の中から、和牛、霜降り明星、ゆにばーす、見取り図、かまいたち、スーパーマラドーナ、ジャルジャル、トム・ブラウン、ギャロップの9組が決勝戦に進出した。
決勝は12月2日(日)にABC・テレビ朝日系にて生放送。当日決まる敗者復活1組を加えた10組の漫才師は、果たしてどんな戦いを繰り広げ、笑いを届けてくれるのか。
このたびお笑いナタリーでは決勝を前に、大のお笑いファンやテレビ好きを公言している、川谷絵音、DJ KOO、野呂佳代、ぱいぱいでか美、丸山桂里奈の5名にコメント取材を実施。2018年大会の第14代王者となる優勝コンビを予想してもらうと共に、今大会への期待や「M-1」の思い出を語ってもらった。
取材・文 / 成田邦洋
- 予想
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- 和牛
- ギャロップ
- ジャルジャル
- トム・ブラウン
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11月15日の準決勝を会場で観まして、全体的にめちゃくちゃレベル高いなと思いました。準々決勝のネタもGYAO!でほとんど全組観ました。
今年は和牛が優勝するのかなと。和牛はネタのクオリティが高い上に、準決勝までネタを毎回変えてくるのは、さすがだなと思います。準決勝は和牛以降ハードルが上がったような空気感を感じました。ギャロップはこれまでも賞レースで勝ってる実力派で、準決勝のネタは若い人や漫才に詳しくない人にもウケそう。ネタ自体は準々決勝と同じだったんですけど、アレンジされている部分があって、そこが面白かったです。拡張性があっていいネタだなと。もしかしたら決勝でも変わるのかな?という期待もあります。ジャルジャルは去年わりと「すごい」でしたが今年は「面白い」になっていた。本格的な漫才が多いと逆にジャルジャルが目立つと思います。
爪あとを残しそうなのはトム・ブラウン。1組だけ漫才じゃない(笑)。ネタ順も大切で、これでトム・ブラウンが1番手とかになったら、めちゃめちゃスベる可能性もありますよね(笑)。上沼恵美子さんがもし今年も審査員を務めるのなら、去年のマヂカルラブリーみたいにトム・ブラウンに怒るかどうかにも注目してます(笑)。敗者復活戦も楽しみで、からし蓮根やインディアンスあたりが決勝に来そうかなと。準決勝のからし蓮根のネタにBUMP OF CHICKENやRADWIMPSが出てきたのもツボでした。個人的には音楽がネタに絡んだコンビが決勝に来てくれればいいなと思います。
僕が「M-1」を見始めたのは、笑い飯が「奈良県立歴史民俗博物館」のネタを披露した2003年の第3回大会あたりから。今年は今までで一番、90点台が連発する大会になるんじゃないかなと期待しています。
- 川谷絵音(カワタニエノン)
- indigo la End、ゲスの極み乙女。、ichikoroといったバンドのボーカルおよびギターとして活動中。小籔千豊や野性爆弾くっきーとのバンド・ジェニーハイのメンバーでもある。
- 予想
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- 霜降り明星
- 和牛
- ジャルジャル
- トム・ブラウン
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個人的に今年の推しはネタの面白さと全力感で霜降り明星です。初の決勝で「M-1」の「盛り上がったな、これは!」を作れる、何かが起きてしまう、というのはこの2人かなと。舞台を広く使った立体的な漫才で勢いに乗ってくれるといいですね。オーディエンスが反応すると芸人さんも乗ってきて面白さが増幅するので、せいやさんの動きから増幅力が生まれて、とんでもないイリュージョンを見せてくれると期待しています。
僕は昭和の落語や漫才が大好きで、和牛には昭和の漫才のエッセンスを感じます。設定がいつも面白いし、それをうまく展開させている。ジャルジャルは去年のネタが衝撃的で、めちゃめちゃな感じだけど計算されていて。ああいうものを極めたシュールなネタの完成形が出てきたらすごいなと。野性爆弾くっきーさんもずっとシュールなことをやっていて、それが世に出た今では大変な広まりを見せていますが、コアなファンが多くて決勝の舞台も経験しているジャルジャルにも、ここで開花してほしいです。
異色のトム・ブラウンも面白い。見た目はインパクトが一番あって、すごく変なんです。「なんでこんなに髪長いんだろう?」って(笑)。あと敗者復活戦に出てくるダンビラムーチョの大原さんは、(TRFのモノマネをするユニットの)イージードゥダンサーズのメンバーですよね? ヨシモト∞ホールのライブで今年共演しました。ダンビラムーチョでも漫才をがんばってほしいです。応援しています。
DJ目線からは、芸人さんとフロアとのコールアンドレスポンスの妙に注目しています。ネタ中に流れをどう変えていきながら、お客さんと同調していくんだろうと。4分の中でキーポイントを決めているのかなとも思いますし。DJの選曲のように、漫才で一度ウケても慌てずにオチまでの流れを考えて、ある瞬間に声のボリュームを大きくして、としっかりやっている部分を見たいです。
「M-1」は2001年の第1回から観ていて、中川家の優勝で本気の大会だと伝わったし、漫才師の層の厚さもわかって、その後の「M-1」につながったと思います。敗者復活戦も魅力で本番の流れや勢い、後がない感じがすごく影響するんだなと。サンドウィッチマンやトレンディエンジェルが敗者復活から優勝したのがすごく面白かった。笑い飯を初めて観たときは今までにないパターンで衝撃的でした。ああいう感じの今ままで観たことのないような人が勝ち上がって、できあがった芸を見せてくれるのが毎回楽しみです。
- DJ KOO(ディージェイコー)
- TRFのリーダーでサウンドクリエイター。アーティストとしての活動に留まらず、バラエティ番組にも活躍の場を広げている。2018年9月にYouTubeアカウント「YouTuber DJ KOO」を開設した。
- 予想
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- 和牛
- 霜降り明星
- かまいたち
- ゆにばーす
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決勝に進出するコンビの漫才はGYAO!で観ました。偉そうなことは言えないので個人的に私が好きな順で予想しました。
優勝は今年こそ和牛です! お二人は垢抜けた感じがあるし、「漫才やってます」という芸人さんとしての素晴らしいオーラが出てて、最近すごく乗ってる気がします。「M-1」では決勝の空気をものにできる人が優勝するのかなと思っています。霜降り明星は最近のお笑いと古くからの漫才とのバランスがよくて、どんな人も好きになりやすい。私は「オールザッツ漫才」が好きで、せいやさんが「せっ、せっ、せいや!」ってやってるのが超面白かった。粗品さんの「R-1ぐらんぷり」でのネタも好きです。かまいたちは漫才でもロケでも掛け合いがめちゃくちゃ面白い。「ドキュメンタル」に出ていた山内さんにも笑わせていただきました。
今年の「M-1」に爪あとを残しそうなのは、ゆにばーす。ネタが仕上がってきてる準備万端な感じがあって、掛け合いがテンポいいし、2人とも闇がある(笑)。川瀬名人とは「ゴッドタン」で共演しまして、本人は「M-1で優勝したら芸人やめます」と言ってますけど、もっといっぱい番組に出て「結局やめないやんか!」とツッコまれるところを見てみたいです。ギャロップは関西の番組でよく一緒になって、林さんとは舞台でも共演しました。林さんはめちゃくちゃクールで私に対して全然優しくないんですが、応援はしています(笑)。
松本人志さんのことがちっちゃいときからすごく好きなので、審査員をされているとき、笑うポイントが一緒だったら「よっしゃ」と思います。松本さんの「クスッ」っていう微妙な表情の変化も楽しんでいます。私自身「M-1」には出場したことがあり、2回戦まで行きました。結局プロの人には敵わなかったんですけど、そのときは一生懸命やって、とってもいい経験をさせてもらいました。今年の決勝では、王道で本当に面白い人に優勝してほしいとすごく思っています。
- 野呂佳代(ノロカヨ)
- 第2期AKB48追加メンバーオーディションに合格し、チームKとして活動。SDN48ではキャプテンを務めた。現在はバラエティ番組やドラマ、舞台などに出演しマルチに活躍中。「ON8+1」(bayfm)では月曜メインパーソナリティを務める。
- 予想
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- 和牛
- ジャルジャル
- スーパーマラドーナ
- トム・ブラウン
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私はめちゃめちゃテレビが好きで「M-1」は2001年の第1回から観ています。和牛は水田さんが料理人なのを生かしたネタがいつも面白くて、「料理人あるある」みたいな知らない情報が漫才に入っているのも面白いですよね(笑)。去年は絶対に和牛の優勝だと思って観ていました。
「爆笑レッドシアター」世代なので、ジャルジャルのことは高校のときにジャルジャルの下敷きを使っていたくらい昔から大好きです。基本的にはコントのイメージですけど、漫才をするときに“漫才コント”ではなく、2人が仲良くじゃれあってるうちに漫才として成立しているのが面白くて。“それは果たして漫才なのか問題”もあるんですけど、ジャルジャルにしかできないネタがあると思っています。ジャルジャルに憧れて新しい芸人さんが出てくると楽しい時代が来るだろうし、お二人が優勝したら夢があるなと。去年の「M-1」で、芸人のプライドを感情が超えちゃったときの福徳さんの涙は本当にたまらなかったです。スーツの素材がテカテカしてるのも面白いです(笑)。
スーパーマラドーナも本当に面白くて、田中さんが露骨におかしな人なのに対して武智さんのツッコミは正統派。漫才を観ていると特に「M-1!」という感じがします。トム・ブラウンは2人ともめちゃめちゃヤバい状態で「M-1」に出てくると思うので期待しています。去年マヂカルラブリーさんが面白いのに上沼恵美子さんに叱られちゃったので、今年はトム・ブラウンが叱られてほしい(笑)。ゆにばーすは唯一女性がいる男女コンビなので応援しています。川瀬名人のギラつき方がハンパないですし、はらさんも去年仕事でお会いしたときにお笑いに対して熱い部分を見せていてカッコよかったです。
決勝の生放送では、絶対やるってわかっていても、司会の今田耕司さんと上戸彩さんが「結果は……CMのあとでーす!」をやるのに期待している自分がいます。敗者復活では三四郎に上がってきてほしい。ミキは去年の決勝を観ていて「なんて美しい漫才なんだ」と思いました。ミキや、ピン芸人ではサツマカワRPGさん、サンシャイン池崎さんのように大きい声を出すエネルギッシュな芸人さんがすごく好き。テレビによく出ているのに賞レースへの挑戦を続けている芸人さんにもグッときます。命懸けで「M-1」に臨んでいらっしゃるのは本当にわかるので、みんな面白いからみんな優勝してほしいです! でも優勝があるからこそ「M-1」なんだよなー。
- ぱいぱいでか美(パイパイデカミ)
- 名乗るほどでかくないがそこそこでかい。「有吉反省会」レギュラー出演のほか、自身の楽曲の作詞作曲やライブ活動、楽曲提供、グラビア、コラム執筆などジャンルやメディアにとらわれず活動中。大のハロプロファンとしても知られる。
- 予想
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- 和牛
- かまいたち
- ジャルジャル
- ゆにばーす
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和牛は元々好きというのもあるし、男女の物語を描く漫才に引き込まれます。「ああ、わかるわかる」というリアルなところが描かれていて、たぶんカップルで観ても面白い。予想というよりも「優勝してほしいな」って応援している感じです。
かまいたちも本当に面白くて、ボケとツッコミのペースが好きだなと思っていつも観ています。山内さんはInstagramに猫の写真をいっぱい上げてるんですよ。お子さんが最近生まれて、猫と子供の日記みたいなものを付けていて。イクメンだなっていうのもあるし、頭がいいんだろうなというのも感じています。ジャルジャルは3位の予想ですが、もうちょっと上でもいいかもしれない。コントも漫才も両方できるコンビで、「たい焼きにあんこだけじゃなくてカスタードもあるよ」っていうイメージです。
大会に爪あとを残しそうなのは、ゆにばーす。かわいいはらさんを知っているし、漫才をするはらさんも知っているし、あとやっぱり顔が面白い(笑)。一生懸命で応援したくなるような人柄です。ただ、蓋を開けてみないとわからないですけどね。ネタ順がめっちゃ大事なので。初めに出てくる人はそこが基準になるから優勝するのはなかなか難しいという流れがあるけど、私は初めに出た人でも面白くてめっちゃみんなを惹きつけたら優勝してほしいなって期待しています。
アンタッチャブルが優勝した年あたりから「M-1」を観てきました。トレンディエンジェルが敗者復活からハゲネタで優勝した年が強烈に印象に残っています。ハゲをネタにしていて面白いし、ハゲを好きになるきっかけを与えてくれました。「ただのハゲではないんだな。ハゲもいいんだな」と思わせてくれました(笑)。
「M-1」はサッカーのワールドカップみたいなもので、その瞬間に輝いたり、ゴールを決めたりしないといけない。ああいう場所の雰囲気は実際に立ってみないとわからないこともあるんですけど、アスリートと同じように人生を懸けてやっていると思うので、自分たちがやってきたことを思いっきり全力で出せるように私も応援しています。やってきたことを全部出せたら、みんないい結果になるんじゃないかなと思います。
- 丸山桂里奈(マルヤマカリナ)
- 元サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」の一員。2011年のドイツW杯優勝メンバーで、アテネ、北京、ロンドン五輪にも出場した。現役引退後はバラエティ番組を中心に人気を博している。